柄使いやデザインがいまっぽい。
新井さんがセルジオ・タッキーニのブランドを知ったのはいつ頃ですか?
新井元々は小さい頃からテニスをやっていたので、僕の場合はファッションの視点からではなく、当時はスポーツギアとして認識していたんです。それこそ僕にとってのヒーローでもあるピート・サンプラスが全身着用していたこともあり、憧れのブランドでした。その頃は彼以外にもジョン・マッケンローやマルチナ・ヒンギスなどが愛用していたり、テニスに精通しているひとであれば、みんなブランドの名前くらいは知っていたはずです。
錚々たるレジェンドが愛用していたんですね。その当時にリリースされていたアイテムの印象などはありますか?
新井やっぱり色使いですよね。当時の一般的なテニスウエアにしては奇抜な配色のアイテムが多かったんですが、それだけでなくどこかイタリアブランドらしい気品もあって。その頃ってカジュアルなファッションだとアメリカンカルチャーが全盛で、僕自身もブランドの魅力に気付けていない部分もあったんですが、今になって柄使いのギミックや切り返しのデザインなど、現代のトレンドに通じるところもあって、改めて良いブランドだなって再認識している感じですね。
そこから新井さんがファッションとしてセルジオ・タッキーニを認知するようになったきっかけはなんだったのですか?
新井2年前にリリースされた〈ゴーシャラブチンスキー〉とのカプセルコレクションを見たときですかね。あのプロダクトを見たときに「先越された!」っていう思いと、「ファッションでも通用するブランドなんだな」って確信が湧いたんです。とはいえ僕自身は昔から普段のファッションに自然とテニスウエアやギアを取り入れていたので、無意識にテニスウエアのブランドもファッションと並列に見ていたのかもしれないです。
別注でこだわった、あるひとつのこと。
新井さんといえば、〈ビームス〉が誇るスニーカーのアイコンという側面も印象深いのですが、やはりスニーカーのカルチャーにも幼い頃から傾倒していたのでしょうか?
新井そうですね。ファッションに目覚めた時期からスニーカーは常に自分の生活の近くにありました。今も家には1,000足近く所有しており、スニーカーカルチャーへの想いは人一倍強いです。
そうした背景があってこそ、昨年〈ビームス〉と〈セルジオ・タッキーニ〉のエクスクルーシブな取り組みが生まれたわけですよね。
新井はい。僕も2年前にバイヤーに就任して、様々な別注企画に携わるようになって、昨年スポーツとファッションの関係性が密接になり始めた頃、本当に良い時期に声をかけてもらったなと思います。ただそのときに僕からもひとつ条件を提示したんです。それは国内での協業は〈ビームス〉が最初の取り組みであること。会社にとっても、昔から〈セルジオ・タッキーニ〉を知っている僕にとってもそれは一番大切なことでした。ファッションにおける協業ってパイオニアバリューが最も大切だと思っているので。
そこからどんなディスカッションが行われていったのですか?
新井それこそ昔から〈セルジオ・タッキーニ〉の存在は知っていたからこそ、いろんなアイデアが降りてきました。昨年の別注は「PRIME SHOT」というメンズモデルのカラー別注を行なったのですが、これが社内外で好評だったので、今年も別注させてもらうことになったのですが、前回よりもサプライズ要素のある別注にしたいと考えていたんです。それで思いついたのが、ガブリエラ・サバティーニという女性テニスプレイヤーのシグネチャーモデルである「GS TOP」をメンズ用にアレンジすることだったんです。通常であればどのスポーツブランドも型から別注することはハードルが高いのですが、何度も僕の熱い気持ちを伝えることで、今までにないまったく新しいモデルを作ることができたんです。
まさにバイヤー冥利に尽きるお話ですね。具体的にはどんな部分がアレンジされているのでしょうか?
新井一番の別注ポイントは、レディースモデルの「GS TOP」にメンズ用の「PRIME SHOT」のソールをドッキングさせている点。正直ここが一番大変でした。機能部分は繊細なディテールでもあるので、ソールのみの転換が可能かどうかというのは、ブランド側も慎重になっていました。しかし、互いに新モデルを開発するくらいの気持ちで取り組めたことで、なんとかその障害もクリアし、念願でもあった一足が完成しました。「PRIME SHOT」のソールを使っていることで、いわゆるコートシューズのような感覚でテニスもストレスなくできる仕上がりになっているので、テニスをする人にとってもオススメできるスニーカーになっていると思いますね。
新井この色も実は90年代のテニスウエアでは、よく見られたトレンドのカラーなんですよね。それこそとある有名なテニスプレイヤーが履いていたシグネチャーモデルのカラーがインスピレーションになっています。公言はできないですけど、知っている人が見れば、「懐かしい」とか「あのモデルのインスパイアかな?」って気付いてもらえると思います。あとこのスプレーで吹き付けたような質感っていうのは一番こだわった部分でもあるんです。細かいですけどね(笑)。
質感まで!新井さんのテニス愛がひとつのストーリーとしてこの一足には現れているんですね。
新井パイオニアバリューも大事なんですけど、コラボレーションにはその背景となるストーリーも大切ですよね。ではないとただの話題作りになってしまいますから。
テニスの着こなしをファッションへ。
そのとおりですね。あとは今回セルフスタイリングを頂いた着こなしについても少し触れていきたいのですが、まずインラインのモデルでは、ホワイトのカラーを選んでいますが、それについてはなにか理由はありますか?
新井単純に白のスニーカーが好きっていうのもありますけど、あとはテニスをやっていた頃ってあまりに派手な色のシューズだと怒られるんですよね(笑)。紳士のスポーツということもあって、試合の時は過剰なデザインやカラー部分にはガムテープを貼ってました。そんな名残もあって、今でもテニスシュースを選ぶ時は白のスニーカーが僕の中では基本なんです。そして真っ白なスニーカーは常にフレッシュな状態で履き続けるというスニーカーならではのマナーも大切していますね。
なるほど。またセットアップで合わせているのも少し新鮮でした。
新井これもテニスをしていた頃からの名残なんですよね。学生時代にテニスで海外などに遠征に行く時は必ず制服を着ていましたし、ウィンブルドンなどを見ても皆ブレザースタイルなどで必ず正装しているんです。だから僕の中ではしっくりくるというか。テニスのカルチャーをファッションに落とし込むってこういうことなのかなって。
SERGIO TACCHINIのスニーカー、SERGIO TACCHINI × BEAMSのキャップ、BEAMSのジャケット、パンツ、Tシャツ
一方でビームスとの今季の別注モデルを着用した着こなしはいかがでしょうか?
新井昔、主に練習してたときですが、大体いつもこんなスタイルでテニスをやっていたので、その時のスタイリングをイメージしました。スニーカーと洋服のカラーを合わせることは僕の中で絶対的なポリシーでもあって、そのペアリングにこそセンスが現れると思うんです。この着こなしを見てもらえると、他のメジャースポーツに比べてもテニスのアイテムって日常着としても取り入れやすいことが分かると思います。
SERGIO TACCHINI × BEAMSのスニーカー、キャップ、ショーツ、paper boy × BEAMSのパーカ
実際にこの着こなしを見て、さらに新井さんが別注したモデルの魅力が伝わってくるような気がしますね。
新井そうですね。スニーカーってファッションのアイテムの一つである以上、単体でその魅力を語るよりも、やっぱり着こなしありきでその人のスタイルを伝えていくべきだと思うんです。そういった意味では、〈セルジオ・タッキーニ〉はアパレルも人気のあるブランドなので、トータルのパッケージで伝えていきたいという想いはありました。こうした別注モデルを機に、より多くの人が〈セルジオ・タッキーニ〉の存在を知ってくれたら嬉しいですね。
セルジオ・タッキーニをどう履くか?
ここからは〈セルジオ・タッキーニ〉のインラインの2型を使用したスタイリングをスナップ形式で紹介していきます。
PRIME SHOT II
創業間もない70年代の当時からブランドを象徴するモデルとして君臨する「PRIME SHOT」の後継。タフなフォルムに加え、テニスシューズとして快適な着用感やフィット感を与える機能は申し分なし。側面に配されたアイコニックなブランドロゴが映えるデザインに。イタリアの国旗を模したホワイトやレッド、グリーンのカラーラインナップを揃える。¥13,000+TAX
TOP PLAY
定番の「PRIME SHOT」シリーズよりも若干シャープな顔立ちで、同モデルと人気を二分する一足。その最大の特徴はレトロテイストな配色。ブランドの真骨頂とも言える独特な色使いとバランスがスタイリングに新たな可能性を与えてくれる。カラーバリエーションは2パターン。レディースではホワイトベースなモデルもご用意。¥14,000+TAX
男成公平さん(31歳)
「TOXGO」スタッフ
Better™のパーカ、STONE ISLANDのパンツ
スニーカーをこよなく愛する男成さんにとって〈セルジオ・タッキーニ〉はどんなブランドですか?
学生時代にテニス部だったこともあって馴染みの深いブランドです。テニスシューズのいなたいイメージを変えてくれた存在でもあるし、その当時イケてる先輩たちがみんな着ていましたね。今なら尊敬しているスニーカーフリークの方たちがいち早く目をつけている印象です。
そのスニーカーを織り交ぜた、この日の着こなしのポイントはどこですか?
最近、カジュアルズ(サッチャー時代の労働者階級)カルチャーが気になっていたので、カジュアルズ御用達のイタリアンブランドで合わせることを意識しました。〈セルジオ・タッキーニ〉はストーン・アイランドとの相性も抜群なんです。
普段は昨年リリースされたセレクトショップとの別注モデルを履いていて、そちらも履き心地はもちろん良いのですが、今回のモデルはそれ以上にホールド感があって、ストレスのない一足ですね。
尾崎龍蔵さん(27歳)
「Styles」ストアマネージャー、バイヤー
Stylesのジャケット、パンツ、Stone Islandのナイロンパーカ、ハット、pineのメガネ
幼少期に親父の海外出張のお土産が毎回スニーカーだったんです。それで物心ついた頃からスニーカーは身近な存在で、今でも好きです。なので自然とスニーカーをテーマにしたお店で働きたいなと思って入社しました。それに「Styles」はスニーカーだけではなく、アパレルや雑貨などのアイテムも洗練されていて、ファッションの感度が高いお客さんも多いところも魅力です。
なるほど、生粋のスニーカー好きですね。ちなみに今狙っている一足などありますか?
今はネオンカラーを使った、90年代の雰囲気を匂わせてくれるようなスニーカーが気分ですね。この日の着こなしもネオンカラーを取り入れたスニーカーに、今季らしいスーチングスタイルにナイロンパーカやハットを取り入れたことで、レイブっぽいムードをアクセントに加えてみました。
普段スニーカーを履く際に意識しているマイルールはありますか?
着こなしとのカラーペアリングをすること。普段からスニーカーを選ぶ際は、色を一番重要視しているんです。スニーカー愛好家としては、マストなマナーだと思ってます。
半田亮さん(33歳)
「LINKS」ディレクター
toneのジャケット、パンツ、USEDのニットキャップ、AiEのシャツ、kearnyのサングラス
これまで多くのスニーカーを見てきた半田さんにとって、〈セルジオ・タッキーニ〉のスニーカーはいかがでしたか?
今はハイテクスニーカーが全盛ななか、絶妙なローテク具合がいいですね。さらにデザインやカラーのバランスも好みでした。メジャーなブランドではないかもしれないですが、今なら履いているひとを見たら、「おっ」てなります。トレンドよりも一歩先を行きたいひとはトライする価値ありかなと。
〈セルジオ・タッキーニ〉のようなテニスシューズは今後主流となっていくイメージはありますか?
最近だとアウトドアやトレイルシューズの台頭が目立ちますが、その陰でスポーツのムードも強まっている印象です。特にテニスシューズは普遍的で、街履きにも最適なタイプなので、取り入れやすいと思います。
スニーカーを引き立てるために、ブラックをベースにしたカラーでまとめてみました。それと年相応な雰囲気を出したかったので、あえてセットアップとシャツの組み合わせで品良く合わせながら、程よく着崩しているのがポイントです。
川阪正茂(38歳)
「PASSOVER」オーナー
COZYHOUSETOKYOのスウェット、パンツ、”P”のキャップ、ヴィンテージのメガネ
レアなモデル含めて、スニーカーが充実している今のお店を始めた理由はなんですか?
90年代に巻き起こったスニーカーブームに大きな影響を受けて、どっぷりスニーカーカルチャーにハマったのですが、ユーザー側では飽き足らず、いつかは自分でお店も出したいなって思っていたところに、ちょうど知り合いから今のお店を継がないかと話をもらったのがきっかけです。
長年スニーカーショップを営む川阪さんの抱く〈セルジオ・タッキーニ〉のブランドイメージを教えてください。
ブランドが持つ本来の背景であるテニスウエアとしてのイメージよりも、ヒップホップカルチャーやストリートファッションとリンクしている印象が強いですね。特にテニスシューズをベースにしたスニーカーのラインナップは、玄人目線のスニーカーファンにも刺さると思います。
今回履いたモデルのデザインや履き心地はいかがでしたか?
程よいボリューム感とクリーンな配色がとてもいいですね。テニスシューズらしく足首周りがしっかりとホールドされているので、安心感があります。次は親交も深い〈ビームス〉バイヤーの新井さんが企画した別注モデルも履いてみたいですね。
塩田朗子さん(25歳)
「BILLY'S ENT 渋谷店」スタッフ
USEDのジャケット、Robert P.millerのインナー、F/CEのパンツ
潮田さんがスニーカーにハマったきっかけはなんですか?
学生の頃、ちょうどスニーカーブーム真っ只中で、たまたま好きなアーティストの着こなしを見た時にめちゃくちゃクールなスニーカーを履いていて、それを真似したのがきっかけです。気がついたら自然と今のお店で働き始めていて、今年で3年目になりました。
春らしいカラーを取り入れつつ、スニーカーと相性の良いパンツを選んで、上品なスタイルで合わせました。普段からパンツとスニーカーのバランスは強く意識していて、トレンドのカラーを必ず一点は取り入れるようにしています。
今回着用したモデルを潮田さんなりにアレンジするとしたらどんなデザインや機能を搭載しますか?
スポーツブランドのスニーカーは、どうしてもスポーティすぎたり、メンズライクなイメージになってしまうことが多いので、女性でも気軽に履けるようなレディース向けのデザインをアレンジで加えたいです。さらにこれからの季節に向けたメッシュ素材で、通気性と軽量化を図りつつ、より足に馴染むような機能を搭載したいですね。そんなワガママな一足、待ってます!(笑)
笹岡莉紗(31歳)
「ROSE BUD」プレス
CREOLMEのジャケット、SupremeのTシャツ、ZARAのワンピース
笹岡さんが抱く、〈セルジオ・タッキーニ〉のブランドイメージを教えてください。
テニスカルチャーと密接な繋がりを持ちながらも、イタリアらしい雰囲気や高級感が感じられるブランドだなと思いますね。アイテムのラインナップを見ても、アパレルもスニーカーも、男の子はもちろん若い女の子でも合わせやすそうだなって感じました。
程よく艶のあるサテンのドレスにヴィンテージ風のマウンテンパーカとスニーカーを合わせて、普段の私らしくコーディネイトしました。一見ガーリーに見える着こなしに、スポーティなスニーカーはアクセントとしても抜群で、私自身今年はこんな着こなしが増えそうだなって思います。
今季気になっているスニーカーのスタイルはありますか?
昨年以上にカラフルなスタイルが気になりますね。多色使いを活用した着こなしは、今季も主流になっていくのかなと思います。あとは90年代ではなく、あえて2000年代前半のリバイバルもいいなと。私たち世代だからこそ体現できる年代でもあると思うので。