
過酷な天候のなか、約13万人が音楽に酔いしれた4日間。
もはや日本の夏の風物詩ともいえる「フジロック・フェスティバル」。今年は7月26日(金)~28日(日)に渡って開催され、25日(木)の前夜祭も含めるとその来場者はなんと延べ13万人に達したのだそう。
ただ、今年はとにかく雨で大変でして…。とくに27日(土)なんて本当に土砂降りで、もはやポンチョを着ていても意味ないんじゃないかというレベル。しかも場所によっては膝下浸水。それでも存分に満喫できたのは、THE CHEMICAL BROTHERSにSIA、THE CUREというヘッドライナー陣、また、30代の邦楽ロックファンは胸熱であろうELLEGARDENやASIAN KING-FU GENERATION、そしてDANIEL CAESAR、HYUKOH、SHAMEといった注目の若手アーティストが揃った例年以上にバラエティに富んだラインナップだったからに違いありません!

ベストアクトはSIA!
2日目の激しい雨のなかで始まったSIAのステージは、ライブというよりもはやコンテンポラリーアート。冒頭の写真で彼女が着ているドレスのスカート部分が散り散りになってダンサーが現れたオープニング、そしてそのなかから“SIAの分身”として知られるマディー・ジーグラーが登場した瞬間はまさに鳥肌もの。SIAがセンターで歌ったのは一曲目のこの『Alive』だけで、以降はまるで観客に自身の存在を忘れさせるかのごとくステージの端で直立不動で歌い続け、中心はダンサーたちによるパフォーマンスという演出でした。また、ほかのアーティストのライブと同じく、両サイドのモニターには常時ステージ上の映像が流れているのですが、そこに映るものと目に映るものがなんだか微妙に違う。これ実は、事前に別のスタジオで、全く同じセット、同じ曲順、同じ振り付けで撮影した映像を流していたのです。しかも、すべての曲を歌い終わったSIAがステージから退場したあともその映像には続きがあって、マディーがスタッフと挨拶を交わしながら舞台裏を移動し、最終的には控え室にいるSIAとライブの成功をハイタッチで祝うというおまけ付き。1時間半もの間音源と遜色ないクオリティで歌うSIAの歌唱力にも圧倒されましたが(多分キーが外れたのは『Chandelier』のサビくらい)、完璧に計算され尽くしたあの日のステージは、これまで観てきたどんなライブとも異なる、全く新しい音楽体験だったといっても決していい過ぎではないでしょう。