PROFILE
2016年3月結成。90年代のUKを思わせる鮮やかなギターポップや、4ADに通ずるドリームポップサウンドを鳴らす、日本では珍しい感覚を持った5人組バンド。全編ロンドンでレコーディングを敢行したデビューアルバム『Luby Sparks』を発売した後、ボーカルのメンバーチェンジを経て、昨年11月に4曲入りのEP『(I’m) Lost in Sadness』をリリース。海外アーティストの来日公演のフロント・アクトも数多く務めている。そして先日、新曲の『Somewhere』を発表したばかり。

(左から)Tamio(Gt.)、Erika(Vo.)、Sunao(Gt.)、Natsuki(Ba. / Vo.)、Shin(Dr.)
ー 結成からどのくらいが経ちましたか?
Natsuki:2016年の夏が結成だから、3年くらいです。ボーカルがErikaになってからも、もう1年半くらいが経ちました。
ー 現役大学生とは思えないサウンドであること、デビューアルバム『Luby Sparks』が全編ロンドンでのレコーディングだったこと、また、海外バンドのオープニングアクトを数多くこなしたことで認知度を上げていきましたが、Erikaさんにボーカルが変わって、バンドの本質自体も変化したように思えます。
Tamio:音楽性も刻々と変わってますが、それよりステージ外のバンドの雰囲気がよくなったんです。
ー 他のメンバーもそう感じたり?
Sunao:ムードメーカー的な存在としていてくれるというか。
Shin:Erikaはモデルとしての活動もしているから、あらゆる発信ができるようになったりしました。色々な面で “広がったな” という印象ですね。

ー Erikaさんは、加入からいままでを振り返ってみていかがですか?
Erika:関西から独りで上京して、前のボーカルと入れ替わるという境遇に悩んだ時期もありました。どうしても加入したばかりのときは、自分の居心地のいい場所をつくって溶け込まなきゃっていう意識があったんです。だから、音楽の部分以外でそう思ってもらっているなら、とっても嬉しいです。
Tamio:周りには悩んでいる姿を見せなかったけど、すでにメンバーとして固まっているこの環境にひとりで飛び込むことは結構勇気が必要だったはずですね。

ー Erikaさんが加入した後のEP『(I’m) Lost in Sadness』のリリースを経てバンドはどう変わったと感じますか?
Natsuki:Cocteau Twinsだったり、80年代〜90年代初期の4ADを意識したサウンドは、批評家のような音楽に造形の深い方たちからいい評価を頂きました。一方で、1stアルバムが爽やかなギターポップだった分、その反動も大きくて。
Erika:動揺したファンもいたかもしれないですね。
ー そして先日新曲『Somewhere』が公開されましたよね。
Natsuki:実はエゴサーチをかなりするんですけど、「もう1曲ガツンとくる代表曲があればな~」みたいな意見をよく目にするんですよ(笑)
Sunao:そうなんだよね(笑)
Natsuki:でもそれはぼくらも思っていたことで。いろんな反響をもらったり、自分たちのことを俯瞰してみたときに、この新曲は過去2作の流れを汲みながらも “キャッチー” な曲にすることを意識しました。
Tamio:それぞれ1stのような鮮やかなサウンドが好きでいてくれる若いひとたちと、EPのようなドリームポップライクなサウンドを好きなひとたちがいることで、Luby Sparks自体のプレゼンスが上がったのでこのタイミングでそういう曲をつくることにしました。





ー そういう意図を理解した上で、メンバー全員でレコーディングに臨んだのでしょうか?
Erika:そうですね。
Sunao:これは売れてくれ! って思いながら弾きました(笑)
Natsuki:Sixpence None The Richerの『Kiss Me』とかBlondieの曲とか、ひと昔前の青春映画の予告編で使われていそうなメロディをつくろうと思って。レコーディングの途中までどんな曲になるか不安だった部分も歌を入れるまではあったけど、歌を入れた瞬間にビビっときました。
Sunao:令和のキャッチーさともまた違う、00年代初頭の歌心みたいなのがあるよね。
ー 曲はメインでNatsukiさんがつくってますが、それぞれが『Somewhere』に抱いた感想は?
Shin:久々にわかりやすい曲がきていいなって感じましたね。その反面、初期の頃の曲より複雑になっているので、ドラムの話でいうと技術的に足りないなって実感する部分がありました。アイデアに技術が追いつかないというか。
Natsuki:80’sっぽい曲調にするとドラムに頼る部分が多くなるんですよ。リバーブがかなり効いてて、音量も無駄に大きかったり、手数も多かったり。
Shin:なかなか練習をしなければいけないなと。
Sunao:前作のEPでCocteau Twinsが引き合いよく出されていたんですけど、ついに90年代にCocteau Twinsでギタリスト、エンジニアとして活躍していた日本人のTate Mitsuo (Flat7名義でソロアルバムもリリースしている) さんがレコーディングに参加してくれて。ギターはじめ、当時使われていた機材をレコーディングに使わせてもらったんですよね。いままでのぼくらじゃ出せなかったこととか、思いつかなかったアイデアが出たことで、出したい音への再現性が高まったんですよね。
Natsuki:あと大きかったのは、Erikaの歌い方を今作は意識的に変えたところです。参考にしてほしい歌い方として、Pale Wavesを送ったりしたよね。
Erika:うん。でも極端なことを言えば、自分のルーツになっているAvril Lavigneみたいなストレートな歌い方に戻しただけだから、どちらかというと歌いやすいし感情を入れやすくなりました。
Natsuki:アレンジも自由にやってもらったり、割と感覚的に歌ってもらったけど、それが結果的にいい方向につながったんですよね。『Somewhere』をはじめて聴いた方は、歌が変わったなって印象を受けてもらえたはずです。
ー そして、縁があってなんとCocteau Twinsのメンバーであり創始者でもある、ロビン・ガスリーに『Somewhere』をリミックスしてもらうという夢のような話が実現しましたね!
Natsuki:Cocteau Twinsの話ばっかりしていたら実現しました。ぼくらにとってのヒーローですし、本当に夢のような話ですよね。
ー まずどうやってオファーしたのですか?
Natsuki:ぼくが最近とても好きで音もよく参考にしているオーストラリアのHatchieという女性アーティストがいて、彼女のもう一つのバンドBabaganoujとは過去にLuby Sparksで共演したこともあるんですが、彼女がシングルのBサイドとしてロビン・ガスリーリミックスをやってたんです。それを見てロビンがいまでも音楽の仕事を受けている事を知り、今回のレコーディングに協力していただいたTateさんがいまでもロビンと交流があるので、ダメ元で頼んでみてもらったんです。そしたら曲を聴いて良かったらやる、という返事が来て完成した『Somewhere』を送り、見事に気に入ってくれて話が進みました。
ー ロビンとはどんなやり取りをしましたか?
Natsuki:まずロビンからどんなタイプのリミックスがいいか聞かれました。全く違うものか、より上品で滑らかなもの、もしくはぼくの頭の中から湧き出たものをイメージしてるのかと。なので頭の中から湧き出たもので、ロビンの雰囲気が全面に出るように好きなようにしてくれって即答しましたね。
ー 完成したリミックスを聞いた感想は?
Tamio:初めて聴いたときは全く違う曲かと思ってしまいました。なんというか、自分達がつくった曲の全てを一発のリミックスで変えてくれた気がしますね。1だしたら10返ってきたあの感覚ですね。リミックスの雰囲気はドリーミーかつサイケデリックなんですが、その中にも、曲本来が持っているコード進行、メロディーの良さがその雰囲気のなかで活かされていて、曲がよりアップデートされた気がします。
Natsuki:Hatchieのリミックスバージョンは原曲とあまり差がなくとても地味だったので、実はロビンのリミックスには少し不安もあったんです。でも、送られてきたリミックスを最初に聴いたときは本当に感動して泣きそうになりましたね。ハーフテンポになっていて、極端なブレイクが足されていたり、ブリッジが大胆にカットされてとても上手くサビに繋がっていたり。いわゆるクラブ系の人がやるリミックスという感じとは違って、ドラムパターンを打ち直してベースやピアノをロビンが弾き直して再録してくれていて、たった1曲ですが詰め込まれたメロディがより際立つアレンジには、参考になる部分も沢山ありました。思わずCocteau Twinsのぼくも大好きな名曲『Evangeline』を思い出しました。本当に美しいと思いましたね。
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