小木:日本で数年前に、おもにアメリカのヘリテージの流れがすごく流行ったじゃないですか。そのときにみんなそういうものをやりだしたんですが、それでも50年代までが多いと思うんですよね。それよりも前になってくると、アメリカも元々はイギリスからの移民で成り立っている国なので、イギリスの、しかもテーラーの文化になってくるんですよね。今野くんは50年代以前も相当勉強してると思うんですが、彼の好きなミリタリーって、さかのぼっていくとテーラーの要素が入ってくるんです。ですが、たいていのブランドはそこにぶつかると、いいものを作りたいけど作る術がないということになるんです。具体的にいうと、いいパターンナーに出会えないんですね。そこが今回のスーツは、うまく合わさった感じがすごく伝わってきますね。
今野:今、小木くんが話してくれた通りで、独自の背景があるというのはすごく大きくて、さらに安島さんは職人さんも抱えられているので、安島さんと職人さんとのやりとりだけで製品まで完結できるんです。どうしても間に人が入ることによって、伝言ゲームになっていってしまい、製品に対する想いも薄まっていってしまうので、それを持たれているという事は大きな強みでもあります。あと安島さんご自身が洋服を作られているというのも大きいと思います。
ー細かいところにまで気が行き届く、ということなんでしょうか。
今野:そうですね。あとは何よりも圧倒的にクオリティが高いですね。職人さんと長年しっかりとリレーションを築かれているので、変なものがあがってこないんですよね。これ、言い方が合っているかわからないんですが。
安島:ふふふ。
今野:安心感が全然違うんです。上がってきたサンプルのダンボールをあけて、吊るすまでの変なドキドキ感がないんですよね。
安島:僕も長年、技術者兼ものづくりをしていますが、やっぱり失敗はあります。でも、そうやって認めてくれるのは嬉しいですね。
ー安島さんから見て、今野さんのものづくりの姿勢はどのように写りますか?