CLOSE
FEATURE | TIE UP
マウンテンスミスのデザインを通して考える、機能服のこれからについて。
Thinking of Post Functional Wears

マウンテンスミスのデザインを通して考える、機能服のこれからについて。

いまからおよそ40年前の1979年、アメリカのコロラド州ゴールデンで産声をあげたバッグブランド〈マウンテンスミス(Mountainsmith)〉。アイコニックなデザインの「ランバーパック」は、90年代に日本国内で見かけた人も多いと思います。現在でもアウトドアをメインフィールドに置いたプロダクトをつくり続ける同ブランドですが、2019年秋冬よりアパレルラインを始動したのをご存知でしょうか? ディレクターを務めるのは〈エフシーイー(F/CE.®)〉の山根敏史さん。今回はブランドのPRを務める久世直輝さんと共に、彼がこのブランドに関わることになった経緯からデザインの理念に至るまで幅広く語ってもらいました。

  • Photo_Shinji Serizawa
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Yosuke Ishii

ただデザインするだけでは意味がない。きちんとしたストーリーが必要。

ー デザインはどんなところからスタートしたんですか?

山根:先ほども話した通り、〈マウンテンスミス〉といえば「ランバーパック」のイメージがありました。なのでそのバッグのディテールを踏襲しつつ、あとは黒、青、赤という色のコンビネーションも印象に残っていたので、それを服に反映させていきました。それと、初期のロゴからも着想を得ましたね。

ー こちらのロゴですね。

山根:ちょっとヒッピーっぽいというか、70年代に創業したブランドだからこそ生まれたロゴだと思うんです。おそらく当時働いていた人たちもウッドストックとか好きだったんだろうなぁ、と勝手に解釈してイメージを膨らませていきました(笑)。

久世:ぼくはこの服を見て、70年代のカルチャーを感じると同時に山根さんらしいデザインだなぁとも思いました。機能的なディテールと、ファッションとしてのモードさも加わっているというか。

山根:単純にそういうアイテムが好きなんです。70~80年代のミリタリーやアウトドアの服を集めていて。当時はアナログ素材と開発したてのハイテク素材を融合させた服が出てきていて、いわゆる全部ハイテクノロジーを駆使した服ってあまりなかった。マウンテンパーカなどに使われている60/40クロスも、どこかアナログな感覚があるじゃないですか。

ー コットンを60%、ナイロンを40%で組み合わせた混紡地ですね。摩擦に強く、コットンが湿気を吸い込むことで糸が膨張し防水性を高めます。

山根:そうゆう感覚ってどこか〈マウンテンスミス〉と通づる感覚がありますよね。いきなり背伸びをしてハイテクな打ち出しをするんじゃなくて、古き良きものをちょっとづつ進化させていくというか。

ー 山根さんらしいデザインがあった上で、〈マウンテンスミス〉らしさはどんなところに表現されていますか?

山根:先ほど話したことと重複しますが、色合わせとバッグのディテールから生まれるデザインですね。たとえば、バッグの付属パーツを服にも使っていたりとか。もともと〈マウンテンスミス〉のバッグを使っていた人が「なるほどね」と思うような着地点に仕上げてます。

久世:たしかにディテールを見ていると、〈マウンテンスミス〉らしさみたいなのは随所に感じますよね。

ー ブランドサイドからの要望などはあったんですか?

山根:まったくありません(笑)。ですが、ただデザインするだけでは意味がない。やはりきちんとしたストーリーが必要で、それはコロラドで見てきたことであったり、バッグと紐付けたディテールだったりします。生地は化繊でもリサイクルできるものを、一からつくって、こういうデザインでやりたいというのを日本のスタッフと話し合ったりしました。だからといって、リサイクルを全面に打ち出しているわけでもなく、買ってくれた人が後から「あっ、これってリサイクルできる生地だったんだ」って気づく程度でいいと思うんです。本国でも全面的にそれを押し出しているわけではなかったので、そこらへんの空気感も自分なりに拾ってデザインしました。

お客さんの手に渡った後のことも考えたデザイン。

ー 昨今のファッションの流れを眺めていると、こうした機能的なアイテムを多くのショップで見かけるようになりました。こうした潮流を山根さんはどう眺めていますか?

山根:たしかに増えましたよね。だからこそ、次のフェーズに進まないといけないとぼくは思ってます。機能を追求すると必ず環境問題に直面するんですよ。化学繊維は石油を使うので。だから、いかにその問題を解決していくかというのを考えないといけない。

ー そういう意味で〈マウンテンスミス〉は、環境に配慮した姿勢を持っています。

山根:そうですね。あくまで機能やデザイン、ファッションの楽しさというのが前提にありながらも、お客さんの手に渡った後のことも考えて設計してます。そういうブランドはまだ国内においては少ないと思いますね。

ー 環境問題とは別ですが、現在新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るっています。そんな中で、人々の買い物の思考というのも、よりシビアな方向へ変化していくように思います。

山根:そうですね。でも、こうしたプラスアルファのデザインはそうした消費活動の在り方に対して効果的であるように思います。伝え方が大事ですよね。押し付けるのはよくないと思うし。だから自然に気づきを与えるくらいがいまはいいのかなと思います。

久世:そうしたブランドの魅力をもっとたくさん発信したいですね。毎シーズン制作しているヴィジュアルにしても、もっともっとアップグレードさせていきたいです。

ー 今後、〈マウンテンスミス〉でやっていきたいことなどはありますか?

山根:環境を意識したプロセスという部分では、工場の生産プロセスを見直したり、まだまだできることはたくさんあるので、時間や労力はかかるだろうけど、今後はそれをひとつづつクリアしていきたいですね。

あとは今後、このアパレルラインから派生したバッグもつくる予定があるんです。そうなるとブランドの世界観にもっと奥行きがでてくるので、期待していてほしいですね。

INFORMATION

スタンレーインターナショナル

電話:03-3760-6088
Instagram:@MOUNTAINSMITH_WEARS
www.stanleyintl.co.jp

このエントリーをはてなブックマークに追加