PROFILE

1961年生まれ。靴職人として活躍後、90年代に自身のブランドである〈ジェネラルリサーチ〉をスタート。2006年以降は〈….リサーチ〉として、山暮らしに向けた〈マウンテンリサーチ〉などさまざまなレーベルを手がける。
PROFILE

1977年生まれ。2001年に「Multiple Maniax & Technix」をコンセプトに〈ネクサスセブン〉をスタート。ヴィンテージへの造詣が深く、生地や縫製など生産背景にこだわり、細かなディテールに至るまで完成度を高めたものづくりをおこなっている。
今野くんが来るというのを聞いて「なんの話だろう」と思った。
ー まずは今回のコラボレートが生まれた経緯を教えてください。
今野:この拘束衣がはじまりでした。2pacが拘束衣を着ている写真がでてきて、そういえば自分も同様の仕様の拘束衣を持っていたことを思い出したんです。そこで倉庫へ行ってピックアップをしたんですけど、これをモチーフにコートをつくりたいという気持ちが湧いてきました。
でも、考えてみたらそのアイデアと似たことを小林さんが先にやられているんですよね。ベルトのコートをつくられていて。ぼくも高校生のときに〈ジェネラルリサーチ〉のアイテムを着ていた思い出があるし、おなじ業界にいるのできちんと承認を取らないと失礼にあたるかなと思って小林さんにご挨拶に伺ったんです。

ー 拘束衣のベルトと、〈ジェネラルリサーチ〉のベルトのコートが繋がったわけですね。おふたりはもともと面識はあったんですか?
今野:むかし一度、〈ステューシー〉の沖嶋さんに展示会へ連れていっていただいたことがあって、その際にご挨拶だけさせていただきました。でも、今回こういうお願いをするにあたってもう一度改めてご紹介いただけないかというのを沖嶋さんに相談したんです。
小林:普通わざわざそんなことしないよね(笑)。沖嶋くんから今野くんを連れてくるっていう話を聞いたときに、「いったいなんの話だろう」と思ったんですよ。いざ会って話を聞いてみたら、すごいちゃんとした人だな、と。自分の流儀と真逆!(笑)。
でもこうやってネタを与えてくれると、すごく燃えるんですよ。それは自分のブランドの核でもあるから。本当は今野くんのプロジェクトなんだけど、許諾をもらいに来てくれたことをいいことに、ぼくも細かいことをいろいろとやらさせてもらったんです。

ー 再会されたのはいつ頃のことなんですか?
今野:昨年の冬に差し掛かる頃でした。2020年の秋冬の企画をどうしようかと考えていた時期で、その早い段階で考えていたプロダクトですね。
小林:なによりこの拘束衣を持っているというのがすごい。しかもやたらと程度がいい。
今野:10年以上前に囚人服であったりとか、いわゆる“シリアル・キラー”と呼ばれる人たちが描いていた絵などを集めている時期があって、その流れで拘束衣も一緒に購入したんです。


ー 何年代くらいのものなのでしょうか?
小林:たぶんこれは60年代よりも前のものだと思いますね。
今野:このベルトがついているほうが後ろ身頃で、前で腕を交差させて拘束するんです。
小林:だから自分じゃ絶対に脱げない(苦笑)。
ー 調べてみると、もともとは医療用に開発されたものみたいですね。そこからだんだんと凶悪犯罪者が着るものというイメージに変わっていったようです。

小林:生地やベルトの革の厚みを見ると、腕力がすごい人に着せてたんだと思います。
でも、今回こうしてできあがったもののディテールを見ると、やっぱりいいですね。拘束衣っていうソフィスティケートされてないところからアイデアを直接持ってきているし、時間が経って表情がでてくるとすごくよくなるんじゃないかな。
ー 2pacの写真がきっかけだったということですが、それはどんな写真なんですか?
今野:2pacが白い拘束衣を着せられていて、その後ろ姿を撮っているショットにベルトが写っていて、それがすごくインパクトがあったんです。
ー そのベルトを見て、〈ジェネラルリサーチ〉のコートを思い出したんですね。あのコートはどのようにして生まれたものなんですか?

小林:小さな白黒の写真で牧場のランチウェアを見たことがあって、いちばん上がそうなってたんです。羽織っていちばん上をキュッと留めるやつだったと思うんですけど、小さい写真だから細かなディテールはわからない。でもランチウェアなら、革にそれなりの厚みがあるだろうし、こんな金具を使っているんだろうなっていうのが連想しやすかった。ぼくはあの当時靴屋だったんで、革はすぐ手に入ったし、バックルもすぐに買えたんです。牧場で使ってるバックルならきっと鋳物だろうなと思って買ってきて、ダッフルとピーコートも買ってきてボタンや紐をはずして、ベルトをつけるいちばんベストな場所を探るみたいなことをやってたんです。
ー 小林さんの場合はランチウェアだったんですね。
小林:もちろん拘束衣のことは知っていたし、繋がるものはありました。今回はストレイトジャケットと聞くにあたり、自分で持っていた画像を今野くんに見てもらいました。
今野:ぼくも初見のものがほとんどで、そこから派生しているアイテムとか、こんなのもあるよって教えてもらったんです。
小林:リソース中のリソースだよね、拘束衣は。素材感がガチッとしてて、みんなが大好きで。かといって簡単にカジュアルな方向に流されるものじゃなかった。だから誰かが果敢に挑まないとなかなかファッションにできないものだと思います。
