PROFILE

2006年頃から福岡を拠点として活動をスタートしたアーティスト。1980年代のポップカルチャーに色濃く影響を感じさせる作風が、幅広い世代から支持をえる。作品展開催のほか、デザインやCDジャケットのイラストも精力的に展開。2019年には地元福岡に続き、新しい仲間を迎えて東京・代田橋にクリエイティブスタジオ兼ショップ「ON AIR」をオープンしたばかり。
「いまは普通の渋谷の景色だけど、これが10年後どういう風に感じるのかいまから楽しみ」


「より作品とじっくり向かい合う時間が作れるようになった」
ー まずは最近の近況についてお伺いできたらと思います。
KYNE: 大きな出来事としては、昨年から「ON AIR」を東京の代田橋にオープンしました。元々は地元の福岡で始めたんですけど、いまのメインメンバーは東京と半々ぐらいです。当初はその東京メンバーの作業場としての物件を探していたのですが、理解あるオーナーさんと物販できそうな間取りの物件に巡り会えて、ショップスペースも兼ねた状態でオープンすることになりました。福岡とは違って中心地から少し離れるので、お客さんがたくさん来るというより身内が集まる感じですね。
ー それでは今回の展示に関して。まずは改めて、個展開催おめでとうございます。前回の 「KYNE TOKYO」 展から3年経ちましたが、作品作りに対して環境の変化はありましたか?
KYNE: 前はどうしても制作以外の雑務などに時間を多く取られることがありましたが、ここ最近は連絡やスケジュール管理などギャラリーを通じて行えるようになってきたので、より自分自身が作品制作だけに入り込んで集中できるようになりました。それは自分の中でも大きな変化のひとつですね。また前に比べて予算的な制限が減ってきたので、以前だったらやってみたいことを途中で諦めることもあったけど、いまは最後まで形にしていけることが増えてきました。
ー ご自身の心境はいかがでしょう?
KYNE: 身近な人との価値観の違いが出てきたり、関わる人が変わってきたりして少し寂しい部分もありますが、何より自分の意思を大事にできるようになりました。


「いまの渋谷が好きな人もいれば、昔の宮下公園に思いを馳せる人も当然いる」
ー 今回のメインアートに出てくる女の子の表情がとても印象的だったんですけど、そこには何か意味が込められていたり?
KYNE: 渋谷の街って本当にどんどん変化していくじゃないですか。その変わっていく、ということに対して人によっては喜ぶこともあるだろうし、逆に少し悲しいというか、切ない気持ちになる人もいると思うんです。そういう部分を、どれかひとつの感情に傾倒することなく表現できたらなと思って、最終的にああいう表情になりました。
ー 以前から受け手には自由に作品を解釈して欲しい、と言ってましたね。
KYNE: その気持ちはいまでも変わらないですね。今回であれば、はじめての試みとして人物の背景に新しく完成した「RAYARD MIYASHITA PARK」がある渋谷の街並みを取り入れたんですけど、どんどん新しくなっていく渋谷の街に対してワクワクしている人もいれば、昔の宮下公園という場所に思いを馳せてセンチメンタルな気分になっている人も当然いると思うんです。もちろん同じ人でも、その時々の心境によって感じることも変わりますよね。なので、出来るだけこちらからはそういう受け手側の様々な気持ちを邪魔したくないというか、その瞬間瞬間で自由に作品を捉えてもらえたらと思っているんです。




ー いままでコマ割りで街の景色を取り入れてる作品は目にしたことがありましたが、人物と一体化した作品はとても新鮮でした。
KYNE: 以前からこういうことをやってみたいとは思っていたのですが、なかなか機会に恵まれなかったんです。でも今回は、渋谷に新しくできるアイコン的な場所でのオープニングエキシビジョンということもあり、”場所”というキーワードが最初からあったので、周囲の人にも相談しながらギャラリー側にアイデアを出していまの形に決めていきました。

ー でも制作段階では、まだ「RAYARD MIYASHITA PARK」の建物も未完成でしたよね?
KYNE: そうなんです…。なので東京の知り合いに現場の写真を撮って送ってもらったり、完成予想図を見たりしながらある程度想像で描かなくてはいけなかったので、そこはかなり苦労しましたね。あとは、ぼくの中で渋谷といったらどちらかというと昼間よりも夜の印象や思い出が強かったので、夜の街のネオンや車のライトなども取り入れながら「RAYARD MIYASHITA PARK」が完成したあとの夜の渋谷を、自分の中でイメージを膨らましながら作品に落とし込んでいきました。



- 1
- 2