俳優を目指して岡山から上京するも結果が出ず、オレオレ詐欺に加担して食い扶持を稼ぐ翔大(村上虹郎)。故郷の高齢者介護施設で演劇を教えることになり、そこで働くタカラ(芋生悠)と出会う。父親から暴力を受けるタカラを目撃した翔大は、衝動的にタカラを連れ出して逃げる。警察が捜索するなか、二人は先の見えない逃避行を始めた。
PROFILE
1997年、東京生まれ。2014年に映画『2つ目の窓』(河瀨直美監督)で俳優デビュー。以来、映画、CM、ドラマ、舞台など多数の作品に出演。映画『武曲 MUKOKU』(’17年)では第41回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞した。今年は『燃えよ剣』(原田眞人監督)や『銃2020』(武正晴監督)などの公開も控えている。
PROFILE
1997年、熊本県生まれ。2014年に「ジュノン・ガールズ・コンテスト」にてファイナリストに選ばれる。翌年、女優業をスタート。近年の主な出演作品に『左様なら』、『37セカンズ』、『#ハンド全力』などがある。’21年には『HOKUSAI』の公開を控えている。また、大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」を始め、テレビドラマへの出演も多数。空手は黒帯、書道は師範という一面も。
PROFILE
1980年、福岡県生まれ。日本映画学校演出ゼミ卒業。老老介護の厳しい現実を見つめた短編『此の岸のこと』(’10)がモナコ国際映画祭2011で短編部門・最優秀作品賞など5冠に輝く。長編デビューを飾った『燦燦ーさんさんー』(’13)は全国公開され、モントリオール世界映画祭2014にも出品された。’17年、製作・監督・脚本・宣伝・配給すべてを手がけた『映画監督外山文治短編作品集』を発表。渋谷・ユーロスペースの2週間レイトショー観客動員数歴代1位となる。
他人に触れて、新しい価値観が生まれる。

ー この映画は静かで、どこか哀愁のある雰囲気でしたが、それとは対照的に、今日の撮影ではお三方とも明るく冗談を言い合っていて驚きました。
三人:(笑)
村上:撮影中もこんな感じでしたよね?
外山:シリアスなシーンでは、現場の空気が張りつめたりもしましたけど、そのほかのシーンは基本なごやかでした。二人とも冗談ばっかり言ってたよね。
芋生:すごく楽しかったです。
村上:うん。僕の両親は関西人ですから。
芋生:血が騒いじゃいますよね。
ー ちょっと安心しました(笑)

ー 早速本題ですが、この作品は言葉数は少ないけれど、壮観な景色やお二人の表情から力強さがそこかしこに感じられて、最近の日本映画にはない良さがあると思いました。ラブストーリーのような淡い時間を軸に、「私が生きること」という普遍的なテーマを丁寧に扱われていて、そのあたたかさに感動しました。
外山:ありがたいです。

ー 自分と対峙する他人、つまりタカラにとっての翔大、翔大にとってのタカラという存在を見つめることで自分の生き方を考えることができたんだと思います。お二人のこれまでの出演作品を拝見して、自分というものを確立されている印象を勝手に受けていたのですが、実際のところは監督から見ていかがでしょうか?
外山:お二人のことを若手俳優という目で見たことがなくて、優れた表現者として見ているので、強さを感じています。翔大とタカラは、たしかに自分があやふやでした。でも、普通になりたくないと思っていた男の子と、普通になりたくてもそれとは遠い距離にいた女の子が出会うことで、自分の中に新しい価値観が生まれる。そうして、次第に自分を見つけていくんですよね。
ー それぞれの存在を認めながら自分という存在も認めていくような、そんな美しい時間の流れを感じました。
外山:新しい価値観が生まれるタイミングが、互いに違っているからラストはああなるんですけど、自分を発見するまでを描いた映画になったと思います。