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立ち位置の異なる3人が見た、グローブスペックスの現在地。
3 MEN TALK ABOUT “GLOBE SPECS”

立ち位置の異なる3人が見た、グローブスペックスの現在地。

1998年、東京に一号店をオープン以来、ヴィンテージの一点ものから最先端のデザインのものまで、代表・岡田哲哉さんの審美眼にかなったアイウェアを揃える「グローブスペックス(GLOBE SPECS)」。2017年には代官山店が、18年には渋谷店が世界一の眼鏡店に輝いたことでも話題になりました。このショップの次なる一手は京都のニュースポット「新風館」の一角。和と洋を融合したモダンなつくりは今年6月のオープン以来、早くも関西の眼鏡好きから熱い視線を浴びています。そんな京都店の秘密を解き明かすため、岡田さんをはじめ、「グローブスペックス」とものづくりを行う〈オールドジョー(OLD JOE)〉のデザイナー髙木雄介さん、京都店に関わったサインペインター「NUTS ART WORKS」に集まってもらいました。この鼎談から世界でも名を馳せる稀有な眼鏡店の現在地を探っていきます。

京都に出した20年ぶりの新店。

ー 渋谷店が1998年、代官山店が2000年。そして京都店が今年。20年ぶりに店を出した背景にはどのようなきっかけがあったのでしょうか。

岡田:京都は昔から大好きな街で、食べ物がすごく美味しくて。それこそ食ベる目的で毎年必ず行っていました。さらに、たくさんの美しい建築や世界に誇る歴史的な彫像やアートもたくさんあったり、風情のある町屋もそう。その一方、新しいチャレンジをしている店をはじめ、アートやクラフトなど、センスの良い店もあり、カルチャーの先端的な一面も垣間見えます。そして何度も訪れる度に、いつか京都にお店を出したいという思いが強くなっていきました。

ー 関西エリア初の出店。不安な部分はありましたか?

岡田:もちろんありました。東京の店で京都に出しているところを見ると、「パス ザ バトン」や「アーツ&サイエンス」など、京都ならではの町屋っぽい建物が多くて。ただ、似たような物件はなかなか難しいなと思ったのと、京都は店が一箇所に固まっておらず、いろんな場所に分散しているんですね。だから出したいと思っても、物件やエリアを定めるのが難しい。それに、これまでいろいろなメディアで紹介してもらってはいるものの「グローブスペックス」の関西での知名度が分かりませんでした。加えて、他のファッションの店も京都進出は最初かなり苦戦した、と言う話も聞いていたのでしばらくは大変かもしれないと…。それでも決意したのは、東京の渋谷と代官山の店には少なからず関西やもっと遠い地域から来られるお客様がいたからです。

ー 結果、「新風館」に出店されたわけですが、この場所に決めた経緯というのは?

岡田:2018年の暮れに出店しませんか? とお誘いがありました。京都に店を出すとしたら、やはり歴史や文化を感じる建物に出したいと考えていたので、1920年代に建てられた「新風館」はまさに理想通り。まわりも「1LDK」や「ピルグリム サーフ+サプライ」など、うちと同様大きな商業施設に出店しておらず、相性がいい店とご近所になることも決断した理由ですね。

ー 先日、京都店にお邪魔しましたが、とても趣のある建物でした。

岡田:いろいろ調べてみると、もともと1920年代の「京都中央電話局」という「NTT」の前身の会社の建物で、そこに一目惚れしたというのもありますね。

ー 内装を進める上で、意識した部分は何ですか?

岡田:「グローブスペックス」は商品も世界中からセレクトしていますが、店の空間づくり自体もニューヨークやパリなど特定の雰囲気に傾倒するのではなく、日本を含めた世界中の素晴らしい感覚、かっこよさをミックスした空間を目指しています。なので、ピカピカにつくり込むというよりは、ヴィンテージやアンティークのものを集めて構成しています。京都は伝統や歴史はもちろん、その一方で新しいものが生まれる先端的な部分もある。その両方の要素を上手くいかした店づくりを目指しました。建物と同じ年代の家具を置いた、昔に戻ったような店ではなく、古いパーツを組み合わせた見たことない様な全く新しい店舗です。

ー 具体的にはどういったことを?

岡田:すべてアンティークの家具、照明、建材で構成しました。ヴィンテージの床材や鋳物の支柱をロンドン、フランス、ニューヨーク、ポートランドなど世界中から取り寄せたり、日本の古い蔵の扉や大正ロマンを感じさせる家具も使っています。

京都店の入り口と内観。一枚目と二枚目に写っているサイネージは「NUTS ART WORKS」によるもの。

ー サイネージはNUTSさんが手がけられているそうですね。

岡田:〈オールドジョー〉の店のサイネージを見ていて、いつか書いていただきたいと思っていたのですが、この本を見てその気持ちがより強くなりました。

ー これはいつの本ですか?

岡田:数年前のものだと思うのですが、NUTSさんの作品の世界観がとにかく素晴らしくて。これを見て京都店のイメージが湧いてきたんです。

NUTS:2016年に原宿の「VACANT」(昨年末で閉店)で開催したエキシビションをまとめたものですね。

ー 岡田さんからはどのようなオーダーだったんですか?

NUTS:店の雰囲気とか、キーになるような什器や装飾の写真を送ってもらって、あと自由に描かせてもらいました。

岡田:そうですね。家具をはじめとした、京都店を構成する要素をまとめて見ていただいて、あとはサイズだけ事前にお伝えして。もう想像以上の出来で、とても感謝しています。

ー ちなみにNUTSさんが仕事を受ける場合、どのような流れで進めていくのでしょうか?

NUTS:作品と仕事は完全に分けているので、こちらから “これがいいですよ!” というように押し付けることはないですね。お店のイメージはオーナーさんが一番理解されているので、目立たせるのか調和させるのか、話を聞いていると分かってきます。それを基に描いていくことが多いですね。もちろん何度も仕事していると好みや世界観も分かってくるので、完全にお任せのときもありますが。

ー オープンから2ヵ月。いまだから言える裏話はありますか?

岡田:床から什器までアンティークで揃えたので、思いのほかお金がかかってしまいました。壁や天井をそのまま生かすことも考えたのですが、それをするにはちょっと汚れが酷くて。でも予算がないからどうしたものかと。結果、うまく什器を配置して隠しています(笑)。あと、京都店のオープンに合わせて、NUTSさんのサイネージと、アメリカ・ポートランドで活躍されているアーティスト、タカサキショウヘイさんの作品をプリントした眼鏡拭きをつくりました。こちらは購入されたお客様に差し上げています。

INFORMATION

グローブスペックス渋谷店

住所:東京都渋谷区神南1-7-9 1F
時間:11:30〜20:00
電話:03-5459-8377

グローブスペックス代官山店

住所:東京都渋谷区猿楽町14-12A
時間:11:00〜20:00
電話:03-5459-3645

グローブスペックス京都店

住所:京都府京都市中京区場之町586-2 新風館1階
時間:11:00〜20:00
電話:075-241-0876

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