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立ち位置の異なる3人が見た、グローブスペックスの現在地。
3 MEN TALK ABOUT “GLOBE SPECS”

立ち位置の異なる3人が見た、グローブスペックスの現在地。

1998年、東京に一号店をオープン以来、ヴィンテージの一点ものから最先端のデザインのものまで、代表・岡田哲哉さんの審美眼にかなったアイウェアを揃える「グローブスペックス(GLOBE SPECS)」。2017年には代官山店が、18年には渋谷店が世界一の眼鏡店に輝いたことでも話題になりました。このショップの次なる一手は京都のニュースポット「新風館」の一角。和と洋を融合したモダンなつくりは今年6月のオープン以来、早くも関西の眼鏡好きから熱い視線を浴びています。そんな京都店の秘密を解き明かすため、岡田さんをはじめ、「グローブスペックス」とものづくりを行う〈オールドジョー(OLD JOE)〉のデザイナー髙木雄介さん、京都店に関わったサインペインター「NUTS ART WORKS」に集まってもらいました。この鼎談から世界でも名を馳せる稀有な眼鏡店の現在地を探っていきます。

“こんなビンテージアイウェアがあったらいいよね!” を具現化した
O.J. GLOBE SPECS OPTICAL Co.。

ー 初めてのコラボレーションだそうですが、どのような経緯で?

髙木:(オールドジョーの)展示会での話がきっかけですかね。お互い〈スティーブン アラン(Steven Alan)〉のディレクターの伊東(正彦)さんと繋がっていて、「最近よく岡田さんと会うんです」なんて話をしていたら、「二人でものづくりしたら絶対面白いと思うよ!」って言われて、確かにそうかもって。

岡田:確かにそうですね。「グローブスペックス」は、2002年、03年くらいから「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」とコラボレーションしていました。その時の担当が伊東さんで。それからことあるごとに相談を受けていました。

ー 〈オールドジョー〉ではこれまで眼鏡はつくられていたんですか?

髙木:いわゆるコラボレーションではなく、自分たちで生産背景を探して好きな年代のクラシックなデザインにこだわって、オリジナルでつくっていました。

ー 〈O.J. GLOBE SPECS OPTICAL Co.〉のアイウェアは全部で5型あるそうですね。

岡田:髙木さんもぼくもヴィンテージやアンティークが好きなので、ただの焼き増しではなくて、ディテールは踏襲しつつ、普通にはなかったものを組み合わせていく。こんなヴィンテージがあったらいいよね! と思えるものを一つひとつ丁寧に形にしていきました。ブランド名の〈オールドジョー グローブスペックス オプティカル コー(O.J. GLOBE SPECS OPTICAL Co.)〉も、そんなヴィンテージアイウェアを取り扱っていたであろう架空の会社名になっています。

ー 髙木さんからの要望というのは?

髙木:ガイドラインは岡田さんにお任せして、細かなディテールは所々でお伝えしました。眼鏡のスペシャリストだと思っていますから、あまり多くはリクエストしていません。

岡田:最終的に詰めていく段階で意見をいただくというような流れでしたね。

上から1950~60年代くらいのフレンチヴィンテージに見られるようなアーチ型ハイブリッジと、アメリカ製で30~40年代の眼鏡に見られるP-3のレンズシェイプを組み合わせた「DAVID」(¥32,000+TAX)。50年代後半、新橋駅前の群衆を捉えた写真に写っていた人の眼鏡に着想を得て製作したブロウタイプ「HENRY」(¥37,000+TAX)。20年代のアメリカのメタル眼鏡に見られるアーチ型のブリッジを採用した異形スクエアタイプ「CHRIS」(¥36,000+TAX)。同じく、アーチ型のブリッジを用いたラウンドタイプ「STEVE」(¥36,000+TAX)。フレンチヴィンテージに見られるようなアーチ型ハイブリッジと、昔のアメリカの眼鏡に見られる五角形のレンズシェイプを組み合わせたハイブリッドモデル「MIKE」(¥32,000+TAX)。

ー ケースや眼鏡拭きもオリジナルでつくられているそうですね。

岡田:ヴィンテージをイメージしたケースで、中は意外性のある色を組み合わせています。眼鏡拭きは、〈オールドジョー〉のシャツに使われているグラフィックを落とし込んだものになります。実際に販売する際は、お客様に合わせてサイズ調整やレンズ交換を行ってお渡ししていますので、可能であればぜひご来店いただきたいですね。

それぞれの現在地。

ー 京都店オープンから間もないですが、今後もし誘いがあったり、違う場所で新しい店舗を出す機会があったらどうしますか?

岡田:そもそも出店が20年ぶりとなったのは、私自身あまり店を増やしたいと思っていないからです。「グローブスペックス」をはじめる前は大手の眼鏡会社で働いていて、規模が大きくたくさんの店舗があるからできることと、同時に大きくなると難しくなることが出てくることを理解しました。店舗を増やさないのは、その分検眼やメンテナンスのクオリティコントロールが難しいのも理由のひとつです。規模が小さく、店舗数が少ないからこそ守れること、可能なことを、21年間「グローブスペックス」をやってみて実感したので、日本だけでなく海外でもやってみたら? と言われたりもしますが、いまのところ考えてないですね。

ー 〈オールドジョー〉はいかがですか?

髙木:ぼくらも増やす予定はないですね。やっぱり自分の目の届く範囲でものづくりがしたいので。ただ洋服屋として、コロナ禍における店の在り方、接客やサービスの仕方は状況を見ながら変えていこうと思っています。

ー 具体的にはどういったことを?

髙木:自分も接客したいなって思っています。自分でつくって自分で売る。初心に戻る感覚ですかね。先日も地方のディーラーさんでスーツのパターンオーダーのイベントをやってきたんですが、実際にお店に立ってお客様と話してると、やはり伝わるし、楽しかったのでこれはいいなと。なのでお店を新しくつくり変えても良いかなって思ってます、もちろん蜜にならない範囲で(笑)。

ー 岡田さんも何か変えていこうと思っていることはありますか?

岡田:ぼくも一社目のときはずっと現場にいて、こうした方がいい、こういうものがあった方がいいんじゃないかと日々考えながら過ごしてきましたが、二社目は本社勤務。海外事業の折衝や経営企画の担当で現場から離れてしまって。すると段々現場のニーズが分からなくなってくる。その点、いまは現場にも立っているので、お客様の反応をブランドにフィードバックできている。安心、安全、信頼をベースに現場に立ち続けることが大切ですね。

ー 今日お話を聞いていて、髙木さんとNUTSさんは、岡田さんとひと回り以上も年齢が違うにもかかわらず、まったく温度差がないと感じました。みなさんがお互いに感じる印象を教えて下さい。

岡田:髙木さんは、とにかく物事に対する追求の仕方が半端じゃないですね。自分も似ている部分があって、興味があるとどこまででも調べるタイプなのですが、髙木さんの場合は、蓄積してきた知識と感覚がとても素晴らしいなと思います。

NUTSさんは、文字であったり絵であったり、どうやったらこんなものが出来上がるのか、その感覚は信じがたいくらい素晴らしいですね(笑)。昔のものをさらにかっこよく仕上げる技術というのは、決して真似できるものではないと思いますし、頭の中がどうなっているのか覗いてみたくなります。

髙木:まず二人に共通して言えるのは、パイオニア的存在であること。サインペインティングを日本に流行らせたのは確実に画伯ですし、まだクラシックなタイプとか看板を誰も見てなかった時代に、それをデザインとして目をつけて掘り下げて、それこそいまは〈シュプリーム(Supreme)〉をはじめ、いろんな有名ブランドに提供する存在になっています。他に代わる人はいないですよね。あと、まだ言っていいのか分かりませんが、今後「NUTS ART WORKS」とは別名義で個展をやるんですよね?

NUTS:看板は「NUTS ART WORKS」名義ですが、それとは違う提案を本名(比内直人)でやろうかなと思っています。

髙木:つい先日、その作品が出来上がったと聞いて見に行ったんですけど、もうとんでもないことになってて(笑)。開催が楽しみでしょうがない!

ー クライアントワークではなく、個人の作品ということですね。

NUTS:広告美術として看板を何十年もやってきましたが、それって現代アートに見られる風刺とかくすっと笑わせるとか、そういうアプローチではないんですよ。いま個展用に2つ作品ができたんですけど、今後も作品づくりに専念します。開催時期とか場所に関しては、正直誰かに投げたいですね(笑)。アートってなると、これまでとまったく違う業界というか、繋がりがとても重要な世界ですし、変な影響を受けてしまいそうなので、あまり自分で調べたりしたくないんです。

髙木:ファッション業界でも看板業界でもないですから、アプローチの仕方がまったく違う。

ー 確かにそうですね。個展の開催が決まったらぜひ取材させて下さい! 話を戻して、髙木さんは岡田さんをどのように見ていますか。

髙木:いまでこそ、アンティークやヴィンテージ眼鏡の世界って日本でも定着していきていると思うんですが、それをまだ誰も目をつけていない20年以上前から扱っていることを考えるとすごいですよね。それでいて、マニアックなこともポップなこともやりつつ、検眼をはじめとした眼鏡屋としてのサービスもしっかりしている。やっぱり代わりのいない人に惹かれますね。

ー NUTSさんはいかがでしょうか?

NUTS:雄介は、好きなものへの追求がすごすぎて、正直ついていけないですね(笑)。でも、割と知識としてヒントをもらうことも多いですよ。信頼しています。

岡田さんは、年上で自分の好きなことでメシ食ってて、下もちゃんと育っているっていうのは、本当にかっこいいなと思います。パッと見は華やかですけど、それって全体の数パーセントで、見えてない部分の苦労があって成功している人。同世代もそうですが、年上で岡田さんのような方と知り合いになれるのは純粋に嬉しいですよね。

岡田:そう言ってもらえて嬉しいです。ぼくもまだまだ負けてられないですね(笑)。

INFORMATION

グローブスペックス渋谷店

住所:東京都渋谷区神南1-7-9 1F
時間:11:30〜20:00
電話:03-5459-8377

グローブスペックス代官山店

住所:東京都渋谷区猿楽町14-12A
時間:11:00〜20:00
電話:03-5459-3645

グローブスペックス京都店

住所:京都府京都市中京区場之町586-2 新風館1階
時間:11:00〜20:00
電話:075-241-0876

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