
What is humor ?
加賀美健が暴く「ユーモア」の正体。
現代アーティストとして世界で活躍する傍ら、代官山の「ストレンジストア」の主人も務める加賀美健 。彼の命題(?)ともいえる「ユーモア」というテーマについて、盟友・平山昌尚と、インスタグラムでおもしろいと話題のゴイチさんを率いて語ります。
- Photo_Motoyuki Daifu
- Text_Yuichiro Tsuji
- Edit_Hiroshi Yamamoto
現代アーティストとして世界で活躍する傍ら、代官山の「ストレンジストア」の主人も務める加賀美健 。彼の命題(?)ともいえる「ユーモア」というテーマについて、盟友・平山昌尚と、インスタグラムでおもしろいと話題のゴイチさんを率いて語ります。
1974年生まれ。東京都出身。ドローイングや彫刻などの作品をリリースし、国内外問わず多数の美術展に出展。アパレルブランドとのコラボレートも積極的に行ない、自身が運営する代官山の「ストレンジストア」では、自作のTシャツなどグッズ類を展開している。
Instagram:@kenkagami、http://kenkagamiart.blogspot.jp/
加賀美:
加賀美:
加賀美:「ユーモア」が気になっているからかな。自分の周りにはおもしろい人がたくさんいるんだけど、その人たちはみんなユーモアがある。それで、ぼくが個人的におもしろいと思っているのが、今回お呼びしたヒマくんとゴイチくんなんだよね。
加賀美:生産管理の仕事をしています。生地を発注したりとか、そういう仕事です。
加賀美:ゴイチくんはルックスがこんな感じで、洋服が好きそうだし一見クールなんだけど、考えていることにすごくユーモアを感じるんだよね。はじめは「ストレンジストア」にお客さんとして遊びにきてくれたんだけど、喋っているうちに「おもしろい子だなぁ」って思うようになって。インスタがすごくユニークだし、髪型とかもおもしろいでしょ(笑)?
加賀美:ちびまる子みたいだもんね(笑)。
加賀美:笑
加賀美:今回はこのふたりと「ユーモア」について考えてみたいなぁ、と。
加賀美:ぼくは、お笑いとアートとユーモアのセンスってあまり違いがないんじゃないかと思うんですよ。
加賀美:たしかに。お笑いは“お笑い”と言っているだけで、“アート”と呼べば芸術になるかもしれない。例えばダウンタウンの松っちゃんのやっていることは、“アート”と呼べると思うし。
加賀美:加賀美さんのツイッターのなかに、おもしろくて印象に残っているのがあるんですよ。春くらいに「じゃんけん ぽん」ってザリガニの画像をアップしてたじゃないですか。あれが個人的にツボでした。ザリガニがじゃんけん仕掛けてくるのがおもしろい。「チョキしかだせねーじゃん!」みたいな(笑)。
加賀美:ヒマくんのツボに入った? それは嬉しいなぁ!
加賀美:ユニークなものを表現するなら、やっぱりシンプルなアプローチがわかりやすくていいですよね。
加賀美:たしかにそうだよね。あと思ったんだけど、俺もヒマくんもゴイチくんも普段からSNSでユニークな画像なりを発信をしているでしょ? でも、普通の人はそういう投稿を見て楽しんでいるだけなんだよね。少なからず共感があるなら、その人もおもしろいものを発信できると思うんだけど、「やらないんですか?」って聞くと「いやいや、あんなにおもしろいこと思い浮かばないです」って返ってくる。“やる・やらない”っていうところが大きな壁なのかな。
加賀美:一般の人からしたら照れとか恥ずかしさを感じるんじゃないですかね。
加賀美:でも、恥じらいとか気にしてたら生きていけないよ、オレ(笑)。
加賀美:加賀美さんはフォロワーに対して、笑わせようって考えながらアップしているんですか?
加賀美:それは考えてないかな。自分のためにアップしている感じ。アイデアとかすぐ忘れちゃうからメモみたいな感覚かなぁ? なにか作品をつくるときも、インスタとかを遡ってネタを探しているし。でも、本当に大切なものは見せてないけど。誰にだって見せたくないものもあるから。実は仮性ホ○ケイです、とかね(笑)。そんなのアップしたら、引くでしょう? 最悪アカウント消される恐れもあるし…。
加賀美:自分がいいなと思うポストには、いいねが付きにくい。一般の人と距離があるなぁと思うんだけど、逆に勉強になったりもするね。逆に意外なものが反応よかったりするから。
加賀美:ぼくも今日はここに呼ばれてきましたけど、まだまだ距離を感じますよ。
加賀美:ゴイチくんはお笑いとか見てたの?
加賀美:見てましたよ。「ダウンタウンのごっつええ感じ」をDVDで。もともと父親の影響で落語なども見に行ってました。
加賀美:ゴイチくんには不思議な世界観があるんだよね。インスタでぼくが好きなのは、自転車に竹ぼうきとかチリトリを載せている人のシリーズ。あれ、モッズっぽくてカッコいい。
加賀美:加賀美さんとはまた違うセンスがありますよね。
加賀美:でも、普通の人がそのポストを見ても「なにこれ?」ってなるわけじゃん。だからといって、「これがこうで」って説明することでもないし。雰囲気でユニークさを伝えているというか。
加賀美:そうかもしれない。
加賀美:平山さんは、意識的に作品のなかにユーモアを取り入れてます?
加賀美:加賀美さんとの出会いが分岐点になってるかもしれないなぁ。出会う前はそんなこと考えもしなかったけど、知り合ってから意識するようになったというか、ユーモアって大事だなって気付くことができましたね。
加賀美:ヒマくんの作品はどこかこざっぱりとしていて、そこがおもしろいんだよね。シンプルなんだけど真似できないというか、どこか混沌とした部分がある。それで、ヒマくんと仲良くなったときに「実はぼく建築事務所で働いているんです」って言われて、自分のなかで妙に納得がいったんだよね。ヒマくん自身は意識していないんだろうけど、なにか特筆したものがないとあんなに変態的なのにさっぱりとした絵は描けないと思ったから。
加賀美:インスタもトーンが一定ですよね。
加賀美:見せたいものを真ん中に、という意識はありますけどね。
加賀美:そこがいいんだと思う。それが平山ワールドなんだろうね。ハチャメチャなのにクリーンっていう。
加賀美:下ネタとか不謹慎なネタをユーモアに変換するのってすごくリスクがあるんですけど、笑いに変わったときにすごくインパクトが強くなりますよね。加賀美さんは、そのさじ加減がすごく絶妙でうまいと思うんです。
加賀美:本当はもっとキツいネタを上げたいんだけどね。
加賀美:たぶん、ネタ自体に「ここまでは笑えます」っていう境界線があって、それを越えちゃうと嫌悪感につながるのかなぁ、と思ったり。
加賀美:そこはいちばん気を付けているかもしれないな。アートも一緒だよ。
加賀美:ぼくも一応オトナだからね(笑)。
加賀美:笑
加賀美:アートのときは自分を180パーセント出せるからいいんだけど、依頼を受けた仕事となると売れるという実績が必要になってくるわけだから、少しはそういうテイストを意識しているんですよ、こう見えて(笑)
加賀美:へぇ~! そうなんですね。
加賀美:「仕事だから」って割り切っている部分もあるしね。とはいえ、自分らしさを出せないまま仕事が終わってしまったということはないかな。少しだけでも自分を出せるように悪あがきのようなことはしているつもり(笑)。でも、自分としては「加賀美健 らしさ」みたいなのは、なくてもいいと思ってるんだよね。
加賀美:なんかあれもやって、これもやって、いろんなことにチャレンジしたくて。自分が死んだときに「加賀美健 はこんな人物だった」って思われるんじゃなくて、「最後までよくわからない人だった」と思われるくらいのほうがユーモアがあっておもしろいんじゃん。だからいろんな仕事を率先してやるようにしているんだけど(笑)。
加賀美:でも、やっぱりどれにもユーモアを感じますよ、加賀美さんの仕事は。
加賀美:まぁ、そうだね。なんとなくユーモアを起こすようにはしているかもしれない。でも、ユーモアってやっぱり難しい。個人的に旬な時事ネタを取り扱うのが好きなんだけど、それってすごく刹那的なんだよね。やっぱりベストなのは50年後にも通じるようなユニークさだよね。
加賀美:ドリフはユーモアだよね。子供でも理解できるし。ダウンタウンまでいくとセンスが必要になってくる。
加賀美:ドリフは葬式のコントとかやりますけど、そういうネタはむかしからありますよね。いわゆるブラックジョークですけど。
加賀美:ブラックジョークって難しいですよね。うちの両親が葬式に行ったときの話をしてて、母親が「私が死んだときは、あんな感じで送ってもらいたい」みたいなことを親父に伝えたんですよ。そしたら親父は「オレにそんなこと言ってもしょうがねぇだろ」って返してて(笑)。親父いわく、自分のほうが先に逝くっていうことみたいなんですけど。
加賀美:なんか落語っぽいね。
加賀美:そうなんです。それがちょっとおもしろかった。両親の関係性とかもあっての話なんですけどね。でも、そういうの憧れるじゃないですか。
加賀美:なんかそれってブラックジョークなんだけど、ユーモアがあるし愛もあるよね。お互いを和ますというか。ゴイチくんのお父さんはユーモアがある人なんだね。
加賀美:それに近いものでいえば、ビートたけしが祝辞を述べてる動画みたことあります? 林家三平さんの結婚式で祝辞を述べているんですけど、それがバリバリのブラックユーモアですごくおもしろい。
加賀美:結婚式では言えないようなことを人前で話すの?
加賀美:そうなんです。松っちゃんもユーモアあるけど、ビートたけしもやっぱりすごいですよね。
加賀美:いっぱいいすぎて挙げられないな。
加賀美:ぼくは、むかし加賀美さんがツイッターで画像をアップしてた人が気になります。人を飛ばしている写真のやつ。
加賀美:あー! マーティン・カーセル! 人を投げ飛ばして、その瞬間を写真に撮ってるやつでしょ? あの人の作品はすごくユーモアがあるし、写真自体もカッコいい。日本人にはつくれない作風だよね。なんというか、日本はちょっとかた苦しいところがあるから。
加賀美:吹っ切れられないところがありますよね、日本人は。
加賀美:日本人は視野が狭いよね。それじゃあユーモアに繋がらないと思う。雑誌にも似たようなことを感じるんだけど、海外の雑誌はクリエーターに対するリスペクトがあるから、若手であってもセンスやユーモアがあればたくさんチャンスがある。でも、日本の雑誌は枠を飛び越えようとしないんだよね。想像したものをつくろうとするから、結局それ以下のものができあがってしまう。
加賀美:ぼくも某誌にイラストを依頼されたことがあったんですが、頼まれて描いたのに結局ボツになってしまったことがあります。結局そのときはイラストではなくて、写真が使われてた。
加賀美:逆に描き直してって言われてもテンション下がっちゃうよね。
加賀美:そうですね、おもしろいものがつくれなくなっちゃう。
加賀美:だからやっぱり制作側にユーモアとセンスがないんだと思うよ。その2つさえあればわかってくれるはずだもん。ぼくは海外で仕事をするとテンションがあがるんだけど、それはおもしろいモノをつくってやろうという意志がスタッフみんなにあるから。制作サイドにそういう気持ちがあるのが分かっているから、お客さんもそれをしっかり受け止めようとするでしょう。でも、日本でそれをやると「やり過ぎ」って言われちゃうんだよね。
加賀美:「そうゆうのを求めて依頼したわけじゃないんですけど」ってなるんですよね。
加賀美:まぁ数字を取らないといけないっていう気持ちは理解できるんだけど、日本の雑誌も、もうすこし勝負して欲しいなって思うよね。
加賀美:次の号で終わってもいいや、くらいの気持ち欲しいですよね(笑)。
加賀美:笑
加賀美:要するに、人に対して余白を残しておくことがユーモアに繋がるんじゃないかと思いますね。こうしてくれって枠を決めるんじゃなくて、この人に頼んだらどんなものができあがるんだろう? っていうイマジネーションを働かせることが大事なんじゃないかと。
加賀美:ゴイチくん、いいこと言うねぇ!
加賀美:いいこと言おうと思って今日ここに来たんです(笑)。
加賀美:ユーモアって、人と人を繋げるなにかがあるんじゃないでしょうか? 単なる一般人であるぼくがいまここにいるのも、ユーモアがきっかけで加賀美さんに呼んでいただけたわけですし。
加賀美:ユーモアがある同士でどんどん繋がりができていくと。本当にセンスのある人たちと繋がっていけるからね。
加賀美:インスタとかで海外の人からいいねがくるのも、やっぱりユーモアを共有しているからなんでしょうね。感覚が通じているのかなって。
加賀美:でも、あたり前だけど誰もがおなじように繋がれるわけじゃない。限られた人にしかわからないユーモアもあるとおもうんだけど、それはそれで濃密な感じがするし素晴らしいことだよね。ただ、その狭い世界で留まるんじゃなくて、そこをどんどん拡げていって欲しいですね。
加賀美:今回はやけに真面目な話になりましたね。
加賀美:とはいえ、ここに載せられない話もたくさんあったけどね? ヒマくんの性癖の話とか(笑)。本当は載せて欲しいけど。
加賀美:それは絶対に載せちゃダメっ!
加賀美:でも、記事用に録音はしてるからね。今日はずっと長いこと喋ってたけど、これで全部録れてないってなったら、それはそれでユーモアだよね(笑)。まぁ、最悪録れてなかったらヒマくんの話を載せよう! それはみんな覚えているから。
加賀美:勘弁してください…(苦笑)。