蔵と新築のミックス。温故知新を体現した空間づくり。

半蔵門線 水天宮前駅から約5分、都営新宿線 浜町駅から8分ほど歩くと辿りつく、真っ白な建物。いわゆる“スニーカーショップ”をイメージしていると素通りしてしまいそうなこのホワイトキューブが、今回の舞台「T-HOUSE New Balance」です。
看板はもちろん、〈ニューバランス〉を連想させる何かが店前に置かれたわけでもない。まずは本ショップを知る上でスルーできない店舗デザインについて、店長の加藤さんに話を伺いました。

加藤知大 / T-HOUSE New Balance 店長
建築関係の会社に勤めたのち、ファッションへの熱意からアパレル企業へ転職。
ドメスティックやインポートブランドの販売を経験し、2020年、日本橋浜町に「T-HOUSE New Balance」がオープンするタイミングで同店に参画。
「お客さまからも、『一回通り過ぎちゃいました』とよく言われます(苦笑)。実はこの建物、川越にあった築122年の蔵をベースに使っていて、古い蔵の軸組を解体し、それを鉄筋造の新築のなかに移築しているんです。一般的な古民家リノベーションとは異なるコンセプトで、外観は看板もない記号的なデザインになっています」
新築のなかに蔵を移築する…? この説明でピンと来ない方も、内装を見ればイメージが湧くはず。


コンクリートを打ちっぱなしにした店内は剥き出しの木柱が設置され、吹き抜けになった天井には日本の伝統工法である木組を採用。什器にも蔵の要素が残されており、“貫(ぬき)”と呼ばれる水平材を貫通させるための穴に、支持材として成型板を入れることで、ラックや照明を取り付けるための設備として活用させています。
「ただ伝統的な造りを保存するだけでなく、それらを現代的な機能として使い、常に変化させながら新しい価値を創造する。それが、この建物のコンセプトです。意匠監修・内装設計は建築家の長坂常さん(スキーマ建築計画)にお願いしました。クラシックな要素を大切にしながら、それをモダンな方法で表現するという視点は、〈ニューバランス〉のプロダクトと通ずる部分がありますよね」

店内のBGM「T-HOUSE Sounds」を協同運営する「ランブリングレコーズ」全面協力の下で開催中のレコードショップ型インスタレーション「T-HOUSE invites Global Record Labels “Vinyl Tour”」。店内には100枚近くのレコードが展開され、ボリュームゾーンは¥3,000前後、高くても¥6,000前後とフレンドリーなプライスレンジだ。
「さらに言うと、この貫穴は、用途に合わせていろんな什器を設置できる“インフィル”という役割も果たしています。ここでは定期的にさまざまなジャンルのポップアップを開催していて、いまやっているのは、世界8ヵ国からインディペンデントなレコードレーベルを迎えたインスタレーション『T-HOUSE invites Global Record Labels “Vinyl Tour”』。それに併せて、ラックを外しレコード用の棚を取り付けました。ほかにも、アートや写真を飾ったりとか、柔軟にディスプレイが変えられるのもこの構造の魅力です。イベントは1〜1.5ヶ月単位で開催しているので、その周期で来店していただければ〈ニューバランス〉ライフスタイルが発信する最新の表現を体験していただけると思います」