




-
よくわからないけど知ってる!
-
映画のせいじゃない
-
祝祭としてのギャル。
-
自主の限界に挑戦。
-
今日ありがとっ。

(左から順に)
名前:大野、桒原、藤井、堀
出身:広島県、宮崎県、島根県、北海道
年齢:24、25、24、27
担当:ピアノ/ヴォーカル、ドラム、ベース/ヴォーカル、ギター/ヴォーカル
よくわからないけど知ってる!
梶: すみません、突然でね。今日はよろしくお願いします!
一同: よろしくお願いします!
梶: これはすごいことに新年一発目のコンテンツなのよ。だからゲスト候補で、いろんなひと挙がったわけよ。2024年のフイナムを占う意味にもなるんだから。日本経済新聞で言うと、どっかの社長とか経団連会長とかが来るわけ。で、いろいろ巡り巡って、スタイリストのシュンサクくんと1ヶ月前にごはんを食べたときに近況を聞いたらみなさんの名前が挙がって、すごく好きそうにしていて。それで今回の打ち合わせで、いろいろ候補があるなかでぽっと出て、スタッフもみんな知っていて。こういう職業をしてるひとたちがたまたま耳にしてて、よくわからないけど知ってる!ってすごいなって感じもあったから、今回オファーさせてもらったっていう。あけましておめでとうございます。
一同: あけましておめでとうございます(笑)
梶: まあ、そろそろそういう時代かなって思ってた?来るかなみたいな感じはあった?
大野: 僕らぐらいの規模で来るかなとは思ってなかったですね(笑)。びっくりしました。


梶:ちなみに俺はいまも実際にスタイリストはやってるんだけど、映画も好きで去年から映画祭をはじめたのよ。3本ぐらい映画を選んでオールナイトで上映するっていう。そこで俺がお客さんに対して映画を選ぶっていう映画占いをはじめたらおもしろいんじゃないかなってはじまったことなの。俺は占いのことはよくわかってなくて、解釈で言うと映画ソムリエ的な。たぶん本当の映画占いはわかってるじゃん、相手を目の前にした段階で、なにも喋んなくても。でもそんなんじゃないから。それぞれに映画を…あ、映画観るよね? 映画観ないひといる?

写真左:藤井
写真右:堀
藤井:そんなに観ないですね
堀:あまり観ないですね。
梶:オッケオッケ。それはよくって、俺の勧める映画がどういう役割なのかは言うわ。ケツを叩くのか、横に添えるのか、それぞれの効能も俺が勝手に最後に決めるというか。そういう意味ではカウンセリングというか、話を聞いて映画を提示する、全然占いではないんだけど。映画占いって言ったほうがキャッチーだなって思って。そういうことを今日やります。どうでした2023は?(笑)

大野
大野:僕はいま大学院に通っていて、さっき論文を書き終わったんですよ。いまから提出って感じで。
梶:俺まだわかってなかったわ、バンドだけでやってるわけじゃないんだもんね。
大野:みんな同級生なんですよ、東京藝大の。それで、僕と藤井くんは1年長く大学院にいて、今年度卒業。昨年度KとHは卒業して。だから僕と藤井くんは卒業に向けた作品づくりとか論文執筆とかに追われながらバンドもやってるというか。
梶:同級生ってことは、入学は一緒だったのか。でも卒業に差がでたってことか。
一同:そうですね(笑)。
大野:だから6年間はみんないっしょに通って、1年間長く僕らふたり(大野と藤井)がいるっていう状態なんですけど。
梶:何年生になるの?7年生?
藤井:7年生ですね。
梶:8年になるってこと?
藤井:7年ですね。
梶:いまみんな何歳だっけ。
大野:24で、25の代。
桒原:僕も同じ代で、25。
藤井:僕も24。
堀:おととい27になりました。
梶:おめでとうございます。桒原くんと堀くんがもう卒業してるってことね。

(モニター左から順に)
大野 24歳、桒原 25歳、藤井 24歳、堀 27歳
梶:かたや就職して、ほかの子はアルバイトかなにかしてると思うけど、バンドが自分たちのメインの活動でしょ?
藤井:そうですね、時間はかけてますね。
堀:ぼくは並行して絵も描いていて。油絵科なんですよ。それぞれ科がちがって、大野がピアノ科で、Fが作曲科で、桒原が音響とか作曲とかをやっていて。
梶:科がちがって、どうやって友達になるの?
藤井:ここ三人(桒原と藤井と堀)が藝大の寮に住んでて、それでだんだん堀の部屋に集うことになって。酒を飲みながら即興演奏するみたいな。それがきっかけで音楽をいっしょにつくるようになって、最初は家にこもって音楽制作をするみたいな形だったんですけど、バンド演奏しようってなったときに、大野も誘って。
梶:この形になって何年目?
大野:5年目だよね。4人になってからは3,4年。僕ちょっと途中まで、メンバーかメンバーじゃないかみたいな時期があって。彼らと住居は違ったんですが、それぞれとはもともと知り合いだったんですよ。コラボみたいな形でいっかい参加して、そこから1年くらいブランクあって、2020年の夏前かな、ちょうどコロナ禍にメンバーとして参加したっていう。
梶:なんとなくおおざっぱに言うとそんな感じか。そのなかで2023年ひとりひとりはどうでした?
藤井:じゃあまあ堀から。
一同:(笑)。

堀
堀:2023の4月に卒業したので、修了制作が大きかったかもですね。普段は絵を描くんですけど、そのとき初めて音楽と絵、即興性をテーマにしたインスタレーション作品をつくって、それで2023年がはじまって。それと並行してバンドのアルバム制作して、引き続き絵の展示をしたりして、っていう感じだったので…
梶:あっという間って感じだ。

藤井
梶:次は藤井くん。
藤井:あんまり考えてなかった…(笑)。思い出せる限りだと、アルバム制作がいちばんですね。2022年の12月にレコーディングをすこしやって、間をあけて5月からまたレコーディングがはじまって8月までっていう。
大野:ここ(アミューズスタジオ)も4回くらい使わせてもらって。
藤井:そうですね、今回のアルバムはそのあとの作業のミックスとかマスタリングを僕がやってるんですけど、9,10,11月はその作業をやりつつ、あとは卒業のための論文制作と、作曲と。一週間前に提出しました。
梶:藤井くん何科だっけ?
藤井:作曲科ですね。
梶:それバンドの曲出して、卒業できなかったらウケるね。
一同:(笑)。
藤井:バンドの曲を?
梶:そうそうそう。だってこっちはこっちで別なわけでしょ? Fさんの個人の名義の制作と、バンドという集合体のクリエイティブは。
藤井:あ、でもそこは切り離さないのが今回の目標で、ある意味バンドの音楽を出したというか、僕らのバンドとロックバンドのための曲みたいなものを書いて、17分ぐらいの長い曲なんですけど、それで落ちたら…
梶:結果はまだわかんないのか、でもそういう意味では、このバンドのニュアンスは含みつつ、全く違うわけではないのか?
藤井:全く違うわけではないんですけど、実験的な精神を開拓するような。
梶:こっちもあってこっちもあって、お互い作用してるってことでしょ? でもさ、このバンドのをまるごと一曲だして、それが…落ちたらおもしろかったね。
一同:(笑)。
梶:大学からは否定された、けれどもこのバンドのゴールがどこにあるかわかんないけど、バンドが商業としては失敗じゃないかもしれないしっていう実験を見たかったの俺は。Kくんは?


桒原
桒原:ぼくも堀といっしょで2023の1月に大学院をでるための作品を出して、映像作品だったりパフォーマンス作品をつくっていて。今年の4月から東京藝術大学で助手をやってます。いままではドラムの練習場所がないっていうのがあったんですけど、大学に勤めることによってある程度解決できたっていう。あと、6月に自分の会社を立ち上げたりとか。いま社長なんですけど…
梶:職員やりながら社長はいいんだ、副業というか。
桒原:全然OKで、自分のベースみたいなものを耕したというか。
梶:正月の記事っぽくなってきたね、1月1日のメディアの最初の記事的に社長が出るなんて。いや、社長来てくれてありがとう。
一同:(笑)。
梶:今年の顔って感じじゃん。このバンドに社長がいたんだ。いたとは思わなかったよ。
大野:俺もそんなに知らなかった。
藤井:忘れてた(笑)。
梶:大野くんは?

大野
大野:ぼくは桒原くんが社長になるときに僕もなりたいと思って、社長になるためにどうしたらいい? っていきなりラインして、そしたら書類一式みたいなのを送ってくれたんですけど、難しくて一行目でやめちゃって、いまなにも定まっていない状態なんですね。卒業もまだ決まってないし、不安に押しつぶされそうになってたり、なぜか世間に怒り狂ってたときもあったし、ちょっとおかしな1年だったんですけど、制作に関しては楽しかったです。
梶:ちなみに俺も社長だから、そういう意味では社長対談だなこれ。あれだよね、みんなの2023、自分の仕事だったりやりたいこととかの話なんだね。彼女とかそういうのじゃないっていうか。
一同:(笑)。
梶:俺が23とかその頃どうだったか覚えてないけど、すげえかわいい子とごはん行けましたとかさ、そういう場合もあるじゃん。いまは会ったばっかりだからみんなちゃんとしなきゃって思ってるかもだけど、実際7人とセックスできたなみたいな。そっちのほうが本当はもっと楽しかったみたいな、いまは言えない状態なのかもしれないんだけど。意外とみんな自分がどうしていきたいかが中心にあるってことだよね。
桒原:やりたいことはたくさんありますね。
梶:あれみんな何歳だっけ。
大野:ぼく24です。
桒原:ぼく25。
藤井:ぼく24です。
堀:27です。

(モニター左から順に)
大野 24歳、桒原 25歳、藤井 24歳、堀 27歳
映画のせいじゃない。
梶:映画はみんな観る? ふたり(藤井と堀)は観ないんだもんね。

写真左:藤井
写真右:堀
大野:ぼくはけっこう観ます。
桒原:人並みには。
藤井:ぼくはおすすめされた映画は観るし、好きな映画はあるけど、日常的には観ない。
堀:ぼくも年2本とか。大好きな映画は一応ある。
大野:ぼく逆に高校生とか大学入りたてのときとかは、3日に1本とか観るぐらい好きだったんですけど、このバンドをしはじめて観ることが減ってきて、今年とかもそんなに観てない。このお話をいただいたときに、映画鑑賞復帰したいなと思いましたね。
梶:慎重になっちゃうんだ。さっきさ、藤井くんはアルバムの最後の作業はひとりって言ってたけど、4人で作業する時間もある程度はあるってことでしょ。それで終わってみんなで映画を観に行こうよってのはないの?
一同:ないっすね。
梶:俺はいまでもあるんだけど、高校生のときになかった? 映画行こうよみたいな。子どもの頃の感覚。ノリみたいな、オールナイト行こうぜみたいな。4人で観に行ったのは一回もない?
大野:ない、っていうか4人で遊びに行ったこともほぼないよね。
藤井:大野はよくそう言うけどそんなことないよね(笑)。
大野:俺が遊びだと思ってないのかもな。認識のずれあるな。「認識のずれ」も今年の一つのテーマだったかもね。
梶:それはいいんじゃん。それぞれ違うわけだから。4人で映画を観るってことがないわけね。もしかしたらこれをきっかけに、来年4人で観ることで整理できるかもしれない。わかんないけど、当初の目的ではひとりひとりに選んでいくのが最善かなと思ったんだけど、この流れだったらみんなでこれ観ようもありかもね。それはそれで何かを生み出すかもしれないし。ちなみに大野くんに関しては、自分のなかで作品はこれだっていうのある? 影響を受けたっていうか。
大野:いや〜なんかね(タメ口風)。
一同:(笑)。
藤井:やばい(笑)。きた。

大野
大野:映画って2時間ぐらいあって、ストーリー性のあるやつが多いじゃないですか、それで内容忘れちゃうんですよ。よく観てた時期は、聞かれたら言えてたんですけど、だんだんだんだん言えなくなってきて。ただ高校生の時に好きだったのはジム・ジャームッシュとかです、『デッドマン』とか。
梶:『デッドマン』ってなんだっけ、犯罪犯しちゃうやつだっけ?
大野:いや、ジョニーデップが指名手配されて森の中放浪して、みたいな。
梶:あれだよね、犯罪犯しちゃうやつじゃない?
大野:喫茶店でいきなりバーンって。
梶:サントラ、ニール・ヤングだよね。
(きれいな音が鳴る)
藤井:絶対俺だ。
大野:アラームだ。
一同:(笑)。

アラームを止めに行く藤井。

梶:あれ、『デッドマンウォーキング』だっけ?
大野:いや、作品名的には『デッドマン』ですね、邦題だと。ぼく地方出身だったので、そういうのに憧れて…
梶:どこ地元?
大野:広島です。
梶:そうしたら出身地と映画を述べよう!そしたら関連性も出てくるかもしんないじゃん。
大野:『仁義なき戦い』も観てます、広島が舞台なので。そこからヤクザ映画も観て、結局(北野)武映画にたどり着いて、一時期すごく観てました。
梶:じゃあ今の時点で映画は?って聞くと『デッドマン』?
大野:そうですね、音楽も含めてけっこう印象深かったので、サントラがグッてくるやつとかは強烈に残ってたりして。
梶:結局暗い音だよね、ニール・ヤングだし。
大野:そうですね、デデデンデン…みたいな。そこから映画と音楽の関係みたいなものは注目して見ていたかもしれないですね。
梶:必然的に意識してないけど意識してるってことだよね。いいと思うそれで。Kくんは?

桒原
桒原:ぼく、宮崎の出身で…
梶:あー、ちゃんと偉いね、俺が忘れてたわ(笑)。
桒原:宮崎自体も映画館の数がないので、でかいイオンと、あと20人ぐらいしか入らないミニシアターと、それが1個ずつって感じで、僕の家がそんなに映画を観ないというか、漫画ばっかり読んでて、父親もそうで。ただ地元の高校にいるときに、いちばん覚えているのが『君の名は』を観て号泣したことで。
梶:アニメのやつか。あれって何歳ぐらいのとき?
桒原:15,16歳ぐらいの時期で、純粋培養の田舎っ子だったので泣いて。でも東京来て、情報に揉まれて、改めて観たらあんまり泣けなかったっていう。あと印象的に残っている映画だとヒッチコックの『鳥』『サイコ』、あのへんの名作たちと、『ユージュアル・サスペクツ』、王道系が好きでした。最近観たのは『アフリカンカンフーナチス』。
梶:なんなのそれ。なんだこれってタイトルだね。
桒原:ガーナの街に、東條英機とナチスが復活して戦うっていう。ガーナとドイツと日本の合作の映画で、ひたすら戦時中の独裁者たちがバーって出てきて、カンフーでバトルさせるっていう。
梶:それは訳されてるの?
桒原:ですです。2021年に日本でも上映されて、僕もYouTubeで予告を観て最近知ったんですけど、本当に意味がわからなすぎて、おもしろそうって観てみたらあんまりおもしろくなかった。配信で観ましたね。サムネがおもしろすぎたので、予告だけでもぜひ観てほしいです。
梶:逆にいま占われたね(笑)。
桒原:「ナチスってやつが攻めてきとんねん」ってなぜか関西弁なんです。
梶:訳は戸田奈津子?
桒原:違うと思います。
梶:じゃあ藤井くんは?

藤井
藤井:ぼくは島根出身で、映画にはまることはなかったんですけど、車がすごく好きで、B級の車映画とかはめっちゃ観てて、『ミニミニ大作戦』とか。いまいちばん好きなのは、ハーモニー・コリンの『ガンモ』ですかね。
堀:それはいっしょに観たよね。
大野:これは全員観てますね。おすすめされて僕も。
梶:これは意外と珍しいけど、共通点なんだね。『ガンモ』はだれが出どころ?
藤井:そうですね。
大野:ぼくは藤井くんにおすすめされて。たまたま友達の家に遊びに行ったときにDVDがあって観ました。去年とか。
梶:みんなのなかでちょっとだけ感じるものがあったっていうか。なんとなくいま輪郭がでてきたね。Hくんは?

堀
堀:札幌出身です。『ガンモ』は衝撃的な映画のひとつだったんですけど、僕的にはずっと好きなのは『ブレードランナー』が大好きで。旧作のいちばん有名なやつが好きなんですけど、わりと興味が人間とはみたいなところで、観た本数は少ないですけど、ほぼSFかもしれないです。
梶:おもしろいね、人間とはでたどり着くところがハートウォーミングなものじゃなくてSFになるっていう。それもそれぞれの人間の解釈だからね。
堀:攻殻機動隊の『GHOST IN THE SHELL』も人間ってなんだろうっていう話だと思うし、あと『2001年宇宙の旅』とか、その3本が観た本数少ないなかでも好きでした。
梶:ちゃんとしたものを3つ観てるから、それ以外は観なくてもいいっていうのもあるね。洋服で言うと、これ着ておけばOKみたいなのをすでに持っているわけだから、それをそのときにどう味わうかも映画の醍醐味だよね。年齢に応じて、20,25,30のときそれぞれどう思うかも違うだろうし。

梶:それぞれ最終的に発信するのは音楽だと思うんだけど、映画が作用しない場合もあるよね? 音楽が入ってきて音楽で出すひともいるし、俺はたとえばスタイリストだけど、パリのコレクションがそのひとつだし、どうでもよく観た映画も若干影響を加えるのかもしれないし、意外と俺は、洋服以上に映画にそういう影響を受けている可能性があるの。だから映画というものが、それぞれに果たす役割ってなんなんだろうなって気になって。
大野:ミュージックビデオとかは、映画を意識していたかもしれないです。ただ僕の場合は、一時期かなり観てたんですよ。その当時(受験時期)って、缶詰状態でピアノを練習していたので、映画ってものが僕にとってリアルになってて。上京してから周りの環境も変わって、それこそ恋愛においても映画的な展開になればうまくいくと思っていた自分がいたんですよ。
一同:(笑)。
大野:こういうセリフを言ったら女の子がこういう表情になるんだって、勉強してたんですよ。ここでこれ言ったらうまくいくなっていうのが、自分の中にあったんですよ、映画を観すぎて。大学一年のときまでほとんどひとと付き合ったことがなかったので、ぜんぶそれが失敗したんです。あと当時映画デートによく誘っていて、19時ぐらいに映画終わって、そこから飯行く?みたいな流れをつくれるように。
梶:映画が軸だよね。
大野:そういうのでことごとく失敗して、結局映画でリアルを勉強できない部分もあって、現実と区別がつかなくなっていたときがあったので。でも東京来てから一人暮らししはじめてから、リアルが充実してきたっていう。あれ、何の話だっけ。
梶:映画とどういう作用をするかって話なんだけど、でもごめん、映画でうまくいかなかったって映画のせいじゃないんだよね、デートも。
大野:そうなんですか。
梶:うん、顔なんだよね。

一同:(爆笑)。
梶:映画のせいじゃなく、顔。
大野:映画のせいじゃなく、顔なんすね。顔ですよね。
梶:そう、顔。それを東京来てわかればいいのかなって。
大野:なんかわかりました…それが前提としてあるんですね。
梶:結局顔だから!


写真左から順に、大野、桒原、藤井、堀
藤井:(大野が)すごい傷ついてる…(笑)。
大野:いやいや。
梶:大丈夫、俺もわかるから。結局顔なんだよ。
大野:クリエイションにあれがどうなのかって話ですよね。
梶:そうそう、ごめん。
大野:だから、要するに、インプットしてアウトプットするっていう感覚じゃなくて、アウトプットしてそれをインプットするみたいな感覚だったていうか。
梶:試合ね、試合。
大野:勉強してノートに書いて、それを発揮するとかじゃなくて、自分でやりはじめてから逆転したっていうところがあって。
梶:書を捨てて街に出よ、だね、まさに。
一同:(笑)。
梶:なるほどね、そうだよね、そうなんだよね。すごいね、たどりついちゃったね。
桒原:それ地で行ってるのすごいな。

梶:流れ的に言うと、じゃあもうみんなで映画に行こうってのがいいね、5人で。今日の映画占い的には、ここで喋ってないで映画観に行こうっていうのが言いたくなったんだけど。俺もそれはわからなくはないっていう。じゃあ(映画が)行動に紐づくなにかにはなっているかもしれないってことね。
大野:テーマに沿った話をすると、影響を受けやすいんですよ作品に。エンディングソングとかに影響受けて、そればっかりレコードとかで聴いたりして。たとえばウォンカーワイの『天使の涙』っていう映画は、タラララン〜チャラララン、チャラララン、チャッチャチャラララン*っていうアカペラグループの曲が最後に流れる作品で、映画も全体的に感動したし、エンディングでガーッと回収されて。そういうふうな影響の受け方をけっこうしますね。
*「タラララン〜チャラララン、チャラララン、チャッチャチャラララン」のメロディー(大野さんによる再現音声)
大野:この映画はこの音楽流れたなとか、ドランの『マティアス&マキシム』とかもペット・ショップ・ボーイズが流れて、そういう曲とかは残りますね。
梶:じゃあなんとなく良い作用の映画を選びたいよね。無駄な映画は観たくないよね?
大野:いやいやいや、そんなことはないです。でも “逆” にもたどり着きたいっていうのはあるので…もう逆か横か縦かわからないですけど。
梶:横から飛び蹴りみたいなのも喰らいたいってことだよね。
大野:そうですね。
一同:(笑)。
梶:オッケー。じゃあ桒原くんはある?映画というものがどう作用するか。
桒原:きれいな映像を観る体験として映画を観たり、ポエトリーな気持ちで観るときが多くて、なので脈略のないいろんな映画のシーンがバッと浮かぶことがあって、自分で勝手につなげたときに出てくる言葉とかアイデアみたいなものを自分個人のクリエイティブな作品のほうにいれたりとか、日常のなかに薄く浸透している感じ。
梶:根本的に内容そのものに漠然とやる気をもらったとか、そういうことはないってことだよね。
桒原:ほとんどないですね。ヒッチコックが好きなのはそのへんになるのかな。
梶:オッケオッケ、藤井くんは?
藤井:話の流れ的にインプットとアウトプットというところから言うと、そもそも曲を作るってことにインプットっていうのは感覚的にない。強いて言うなら、その瞬間に出した声を自分で聞く、さっき大野が言ってたアウトプットしたものをインプットするみたいな、自分が書いた音とかをとりあえず並べてみたものとかから瞬間的な連続が作品を生んでいるみたいな、究極的に言えば。音楽は映画よりかは触れるほうなんすけど、なにかインプットしようっていう感じはないですね。
梶:なにか対価を求めて映画を観ないってことかな。多くのひとによくあるのが、泣きたい映画観たいとか、楽しい映画を観たいっていうのもあるわけじゃん。目的があって、映画という手段を使ってるわけじゃん。
藤井:そういうのはまったくないです。
梶:それぞれ違うのがおもしろいね。堀くんは?
堀:…どうなんだろう、ぼくは元々絵も音楽も趣味程度にしか考えてなかったですね。それこそもっとテクノロジーとか、SF的な世界観にずっと憧れがあって、自分自身もそういうなにかこの世に存在しない新しい概念とか、いまAIとかが主流になってきてますけど、できた当時AIがどうやったらつくれるのかを調べたりとか、そのためにプログラミングとかを独学で調べ始めたりとか、中学校のときくらいからはじめて、自分はこの世に存在しないものをつくる人間なんだって…それで精神的におかしくなっちゃったんですけど…
一同:(笑)。
大野:いまも?
堀:いまは正気。
梶:そっか、みんなも初めて知る話があるんだ。
堀:『攻殻機動隊』とか『ブレードランナー』で描かれているのって、人間と機械の境界線がなくなった世界だと思うんですけど、人間っていうものをつくれないかっていうことまで考えてて、自分の手で。
梶:ってなったら、映画どころじゃないよね(笑)。
堀:そこにものすごくハマったし、それを後押ししてくれたのがさっき言った映画たち。本当にこうなるかもっていう感動があったし、そこでそういうことへの想像力が掻き立てられたんで、そういう意味では観た本数少ないんですけど、影響はかなりあったのかも。
梶:それがあって、その先を見れたってことだもんね。おまけにそういうものが形としてインディペンデントじゃなくて大作として成立してるっていうのも意外と重要かもね。社会のみんなが認識してるってことは、自分の自信につながってるっていうか。
祝祭としてのギャル。

梶
梶:ごめんね、なんか勝手にいま、それぞれ皆さん違うじゃん。この短時間で、はじめましてからおおよそ、ぜんぜんわかってないけどわかった部分もあって、自分のなかでは前半終わったくらい。サッカーでいうと、それなりにフィジカル当たってみたいな、途中経過なんだけど、もしかしてこれを読んでくれてるひとがいて、いるかわかんないけど、いたとしたら、なんとなくわかるひともわかんないひとも、一回わかりやすくするとしたら、いろんな話を経て途中経過ね……好みのタイプ教えてよ。
一同:(笑)。
梶:それも出身地と同様に、なにかひとりひとり好みのタイプ。
一同:(目を見合わせて笑う)
桒原・藤井:(大野を指さして)じゃあ…

大野
大野:ぼくそんなこと言われたらs%G8Reって言いますけど…
梶:なになに?
大野:白ギャルです。ギャルです。でも最近もしかしたら黒ギャルなんじゃないかなって。
梶:白ギャルと黒ギャルなにがちがうの?
大野:黒ギャルはこんがり焼いた…2010年ぐらいの…あの質感が好きで…
梶:今も憧れとして抱いてるんだ…
大野:抱いてるんですけど、実際いたらどうなんだっていうのを考えていて、白ギャルとか黒ギャルとか実際あんまり仲良く接したこともなくて…
梶:(爆笑)。
桒原:童貞すぎるでしょ…
梶:…童貞じゃないよね…?
大野:童貞じゃないです(笑)。で、最近タイプが実はちげえんじゃないかって思ってるんですよ。初めて彼女ができる19のときまでは映画で好きなタイプがいたんです、あと小説とか。いちばん最初に好きになったのは、『ライラの冒険』っていう小説のライラ、っていう勇敢な少女。勇敢系少女が好きで、ミラ・ジョヴォヴィッチとか、『フィフス・エレメント』の。戦う女性みたいなのがタイプ。最終的にウィノナ・ライダーとか、『ナイト・オン・ザ・プラネット』のときのあのダラッとした感じがタイプになって、そこからそういう女性を追い求めてたんですけど…さっき言ってた顔のせいで…
梶:(爆笑)。大丈夫大丈夫、顔関係ないから、いつかは。俺もなんとかなってるから大丈夫。じゃあ今時点で具体的にはいないの?
大野:そうですね、ギャルを公言していいのか、自問自答中というか。いま表参道がバイト先でめちゃくちゃブティック街を歩くんですけど、目につくのがギャルとは真逆のひとで…
梶:きれい系ってこと?
大野:あんまり言葉喋らなさそうな感じが意外と好きなのかもしれない。
梶:ごめん、いま彼女はいるの?
大野:彼女は…そのへん(みんなにも)話してないですね…
梶:わかったわかった(笑)。ギャルだったけどわからなくなってきたと。
大野:ギャルとお付き合いしたことはないんですよ。憧れですね。新年一発目に黒ギャルと白ギャルの話…
梶:いやでも、新年っぽいよ。
大野:(メンバーに向かって)黒ギャルって新年のためにあるからな。新年のために焼いてるからな。祝祭的な感じなんだよ。
梶:本当にそうだよそうだよ。大晦日暴走とかも昔あったじゃん、あれも晴れやかな感じだから、ギャルは新年だと俺も思うから。次桒原くんは?

桒原
桒原:ぼくはいまいっしょに住んでいる彼女がいて、彼女がタイプのマジど真ん中すぎて、かわいすぎてびっくりする。
梶:超いいじゃん、長いの?付き合って。
桒原:もう5,6年。
梶:え、ずっとかわいいと思ってんの?
桒原:びっくりするぐらい。久しぶりに会ったりすると、かわいい!ってびっくりする。
梶:それってなに、もともとあったタイプのところに彼女がはまった感じ?
桒原:大学に入って、東京に揉まれて、きれいなひともたくさんいて、俺ってなんなんだろうって思ってて、当時いっしょにバンドやってたベースの子と付き合ったんですけど。電話で告白してOKもらったんだけど、帝国ホテルにぼくいて、OKもらった瞬間に緊張が抜けてロビーで倒れちゃって、フロントのひとがめっちゃ駆けつけてくれて、心配してくれたんですけど…あれ何の話だっけ。
梶:好みのタイプね。タイプなところにはまったってことね。
桒原:だし、自分のタイプがそっちに寄っていったっていう。
梶:彼女によって、彼女の方に傾いていったんだ。誰に似てるの?
桒原:似てるひとがいるかどうかはわからないんですけど、好きなタイプの女性はいて、上白石萌歌さんと、ガッキー。
梶:けっこう贅沢だね。じゃあガッキーの映画観るかって言われたらちがうんだ。
桒原:それでは選ばないですね。
梶:ビジュアルのタイプで言うと彼女と、そのふたりみたいな。外人でもなく。オッケオッケ。じゃあ堀さんは?

藤井
藤井:僕も付き合って長い彼女がいるので…
梶:いいねいいね、だんだん彼女がいるかいないかになってきたね。
藤井:…5年くらいは女性のタイプとか考えてないかな。いま映画のことを考えながら思い出すのは、車大好きだった時期に観ていたワイスピに出てたひとは全員…
大野:ギャルじゃん。
梶:ワイスピって何なの?
大野:『ワイルド・スピード』。
梶:それってなに、外人?
大野:すごくチャラい…筋肉ムキムキのマッチョがギャルを従えて、とにかく暴走するっていう。
藤井:カーレースの、スターターの女の子が自分のブラジャーを放り投げるシーンは、印象に残ってる。あと、YouTubeで流れてくるあゆ(浜崎あゆみ)とかも。
梶:来るときのタクシーの画面にあゆ出てたわ。
大野:ヌードのあゆのジャケットがいちばん好きで、「LOVEppears」っていう。
梶:世代がぜんぜん違うけど、意外と年増が好きというか。やっぱあれだね、ギャルってテーマだよねひとつ。潜在的にあるのかな、2人だけかな。堀さんは?

堀
堀:聞きながら考えてたんですけど…いま恋愛とかに興味がない状態で…。でもやっぱり絵とか描くとこういう顔が好きだなっていうのは確実にあって、それがタイプなのかな。
梶:自分が生み出してるんだ。でもよく見たら…綾瀬はるかだったとか、ない?
堀:(笑)。でも似てるひとはいるかもですね。言葉で説明できないですけど…ひとつあるのは何人(なにじん)かわからないひとって言うと伝わるかな。アジアっぽいというか、ヨーロッパっぽいというか。
梶:なるほどねなるほどね
堀:観た映画の、『ブレードランナー』のヒロインとか、あと『攻殻機動隊』のヒロインは、どっちも女性が大きな役割があるんですけど、物語の展開もあって、憧れだなあ。片方はアンドロイドだし、もう片方はほぼ全身サイボーグ化していて、どっちも人間離れしていて、どこ出身かわからないし、人間かどうかもわからないっていう。
大野:すごい恋愛観だね(笑)。
梶:じゃあいま自分の時代になりつつあるのかもね、現代は。もしかしたら人間なのかわからないひとも出てくるかもしれないわけだから。
堀:そういうのが出てきたら…もしかしたら好きになるかもしれない。
梶:なるほどね。そっかそっか、楽しみだね。ぜんぶつながったね。そっかそっか。
自主の限界に挑戦。


梶:2024になったじゃん。意識的にやってみたいことってある?
桒原:ぼくはシンプルにライブがしたいです。直近で言うと4月なので。アルバムの制作でやってなかったので、人前でやりたい気持ちが高まってる。僕自身は。
梶:やろうと思えば、できるの? やろうと思えばできるじゃん。
桒原:大切にしたい気持ちもあるので、チャンスと言うかタイミングをこれからみんなで相談しようかなって。
梶:4月はどこでやったの?
桒原:下北の「SPREAD」っていう箱と、幡ヶ谷の「FORESTLIMIT」。バンド演奏ではなくて、完全な即興のスタイルで。
梶:どういう風にやりたいとかは浮かんだりしてるの?
藤井:いい話が来るのを待ってます。あとじぶんたちが企画する形でやれたらいいなと。
梶:大野くんは?
大野:音楽でやりたいことはたくさんあるんですけど、ちゃんと生活をしたいですね。昔部屋をわざと汚くしていて、部屋にいろいろフライヤー貼ったりとか。でもいっかいMVで僕の部屋を使ったときにぜんぶ一掃して、そこから生活が崩れちゃって。きれいな部屋が最近苦痛で。なのでリセットして引っ越して、新しい循環をつくりたいっていうのが最近あります。そこのスタートダッシュを気合い入れてやりたいなって。
梶:立て直しと同時に、スタートダッシュもね。あ、年生まれじゃなくて、あれ年男いないの?次何年?

大野:俺うさぎ年だ
桒原:来年辰年だから…
梶:今年の年男はいないんだ。それで藤井くんはなに?
藤井:あれ、何でしたっけ?
梶:2024。
藤井:卒業するし、なにも決まってないんですけど、とりあえず4月末までは。今の生活のことを考えなきゃ。なんにも決まってなくて。
梶:目の前の壁は論文か。その先を考えるどころではないってことか。今日は大丈夫?来てくれてありがとうね。
藤井:いえいえ! でも音楽で仕事したい気持ちはあるので、そこをどうしようかなって…はい(笑)。
梶:ちょっとまって、ごめんね。売れようとは思ってるの?
藤井:難しいですけど、つづけたいので売れようとは思ってます。
桒原:単純に聴くひとが増えるといいですね。
藤井:それが完全に対応しているわけではないけども、まず作品を知ってくれるひとが増えてほしいっていう気持ちと、活動として持続できるように…
大野:ぼくは、音楽で売れたいってなったらレーベルに入るとかいくつか選択肢があると思うんですけど、いろいろ考えて、この作品を自主で出すってなったじゃん。来年は自主の限界に挑戦するっていうことがテーマになっています。
ぼくはこの1年で、自主でどういう波及力でどういう感覚で音楽の広がりを見れるかみたいなところを作品を通して見れて、それが喜びだったし、メジャーデビューしたらどういう仕事が入るのかとか、でも結局大型フェスとか自主のひとはなかなか参加できなかったり、業界のつながりみたいなところはある気がしていて。そこと切り離された状態で俺らが一生懸命やってるっていうのは貴重な時期なのかなと。来年の一年間はその挑戦みたいなところはあるかもしれないです。長い目で見て、来年こういう年にしようっていうのは考えてますね。
梶:おっけ。さっきの補足ってことね。
堀:ぼくは来年もCGとか展示もやりたいとか、自分のソロのアルバムもつくってみたいなとか、あとはペインターの同居人と手作りのアイテムをつくりたいという話もしてて。あと、とにかく家を整えたいというのがあります。環境が整えば、いろんなことやっても成立するのかなって。
梶:いいね、背筋が伸びるね。2024。
今日ありがとっ。
梶:(スタッフに向かって)ごめん、あと何分で出なきゃなんだっけ。
スタッフ:できたら3分とか、5分で収まると…
梶:すげえ4人ばらばらだからさ、時間もあれだからさ、タフだよ。超むずかしい。まずね、堀くんがねちょっとまってね…女優さんが浮かんでて、それがなんだったか…ごめんね慌ただしくて。出てこないのよ、どうしても勧めたいのがあるんだけど。

梶:ジュリエット・ルイスが出てて、未来の映画なんだよね。俺も降りてきてるからさ。自分でなんだったか覚えてなくてさ、電波入んねえ。ジュリエット・ルイスで『ストレンジ・デイズ』ってでる?画像だれかでる?
(4人がスマホで調べる)
梶:そうそうこれ、これ、うん! いっかいこれで受け止めて。この4人のすごいよ。藤井くんはね、藤井くんは好きだった映画は『ガンモ』だっけ。『ガンモ』はなんで?
藤井:ストーリーがない感じとか、だけどドラマがあるっていう。
梶:洋画と日本画…あ、洋画と邦画はどっちが好き?
藤井:ん〜でも邦画が好きです。
梶:オッケオッケ、ガンモね。…『コミック雑誌なんていらない!』っていう映画。いっぱい意味がありげだけどないみたいなところなのかなって。俺も好きなの、意味がなんなのってものが好きだから、意味があるのにないってことになんのかなって。意味があることをやってそうなんだけど、みたいな、いまとりあえずそんな感じ。じゃあ桒原くん。
大野:ちょっと占いっぽくなってきた(笑)。
梶:(桒原を見つめて)桒原くん…。『こわれゆく女』。カサヴェテス。
桒原:おお…!
梶:女性の生活に満足していそうだから、壊れゆく女というものを見てほしいな。インディペンデントの巨匠が撮ってる名作ね。
一同:(笑)。

梶:大野くん。これちょっと大野くんは、いちばん喋ってくれたっていう、それがいちばんみんなを体現しているかどうかは別として、窓口になってくれた気がしていて、ちゃんとつないでくれた意味では、大野くんを介してこのバンドを俺なりに解釈して、『メーヌ・オセアン』っていう音楽の映画。音楽じゃないんだけど、音楽的な映画だと思ってて俺の中では。ジャック・ロジェっていうすごい巨匠なんだけど変わったひとで、映画自体が音楽的だなと思ってて。
大野:酒場オセアンが出てきた…
梶:俺すごい好きな映画なんだけど。音楽が俺好きで、でも話も音楽的。答えもない。俺の中では音楽ぜんぶにつながるというか、俺の中ではこのバンド感って、すごい理想だけどメーヌ・オセアン的であってほしいなって思ってて。映画もぜんぶ音楽もそのなかで即興で完成するみたいなことで。おもしろいから。
大野:みんなで観たい…
梶:もしかしたら俺はこれを介してみんなにお返しみたいな、今日ありがとっみたいな感じもあるかもしれないから。うん、ちょっとそんな感じです。またゆっくり、ほんとにありがとう。すみません慌ただしくて。すっげえ、いままでのなかでいちばん大変だった!頭いいからみんな。


バンドKは「カブトムシ」でした!
(左から順に)大野志門さん、藤井登生さん、桒原幹治さん、堀聖史さん。
Instagram:@alotofbeetles
それぞれ映画を鑑賞して…
for 大野さん
『メーヌ・オセアン』ジャック・ロジエ,1985
人物たちがとあるきっかけ毎に登場し、集い、のちに離散する。そこでの交流は、暖かさではなくシニカルな人間情緒を感じさせた。皆で奏でられる音楽はたゆたい、中心には何もない。この揺らぎが絵のようだった。
for 桒原さん
『こわれゆく女』ジョン・カサヴェテス,1975
一組の夫婦がいる。終始気まずい雰囲気で、見ていてイライラした。しかしラストシーンであまりにも唐突に訪れる平和にぎょっとし、考え込んでしまった。なぜ僕はビールを飲みながら他人の家を覗いているのかと。気狂いの妻と強迫的な夫はただ自分たちの日常の中にいるだけだった。
for 藤井さん
『コミック雑誌なんかいらない!』滝田洋二郎,1986
しょうもないゴシップと非道な殺人事件がコンテンツとして同居する、情緒の狂った世界をそのまま見せつけられた。で、それが映画として形になっているのが面白い。世界に対しては常々「狂ってる」と思っていたが、「狂ってる」のが世界の本質だと気付かされた。
for 掘さん
『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』キャスリン・ビグロー, 1995
2000年を迎える狂騒を描いた、1995年作。黒人指導者の処刑と、主人公レニーの未練が絡み合い、最終的に世界を変えることになる。ヒロイン?フェイスの行動は理解に苦しんだ。彼女との決別は、世紀末と、幻そのものとの決別だったのだろう。