育てる服、マーガレット・ハウエル。
ー お二人の共通点は、昨年12月に公開された映画『PERFECT DAYS』ですね。
時生: そうですね。ただ、共演シーンはなかったので、現場ではお会いしていないんです。今日の撮影を振り返ると、中野さんはカメラが向けられた瞬間の深度というか、スッと深く入り込むみたいな感じがして、そのニュートラルさがおもしろいなと。あとは、すごく服が似合っていて、素敵! と思って眺めてました(笑)。
中野: ありがとうございます! 久しぶりにお会いしてちょっと緊張してしまったんですけど(笑)、気さくに話しかけていただいて、過ごしやすい雰囲気をつくってくださってすごいありがたかったです。
ー 今回はファッションの撮影でしたが、お二人は服選びの際の決まりごとはありますか?
時生: ブランド名や流行にまったく詳しくないし、服を買うこと自体もすごく少ないんです。でも、ひとつのものを買ったら、そればっかりをずっと着続けるタイプです。
ー聞いた話では、マーガレット・ハウエルご本人も「服は育てるものだ」とよくおっしゃっているそうです。そんなところは共通するのかもしれないですね。
時生: そういう部分が同じ感覚だとしたら、うれしいですね。
中野: 私は普段からシンプルなお洋服を着ることが多いです。たとえば、なんとなく自分本来の色や雰囲気を活かせるような着こなしができたらいいなと心がけていて。着心地を含めた素材を大事にしている一方で、この服を着るとなんとなくワクワクするとか、大人びた気持ちのときにはこれを着たいなとか、その服を着たときの自分を想像して、フィーリングで選ぶこともあります。
ー今日着たものの中で気になるアイテムはありましたか?
中野: ピンクのシャツは、袖を通した瞬間に横になってそのまま眠りに落ちたいと思うくらい、肌馴染みがよかったです。色もニュアンスのあるピンクがかわいいのに、シックな表情もあっていいなと。
ーマーガレット・ハウエルご本人は、肌と服の間にはらむ空気をすごく大切にしているそうで、肌当たりのよさはそんなところとも関係がありそうです。中野さんが、そもそも着心地のよさに目覚めたきっかけはあるんですか?
中野: モデルというお仕事ですね。服ってなんだろう? と考えると、自分の一部を表現するものでもあり、生きていくのに必要なものだなと。人間と服が一体化していることが理想で、快適で肌に優しい服が、一緒に暮らしていく上ですごく大切だと思うようになりました。
ーそんな視点から、他に気になったアイテムがあれば教えてください。
中野: 〈ミズノ〉とコラボレーションしたフリースも大好きです。秋冬の服はごわつくこともありますけど、この上にジャケットを重ねても滑りがいいし、自然体のままで着られた感覚です。元々〈マーガレット・ハウエル〉はシンプルで、洗練されたブランドという認識でしたが、機能的な一面もあるということを知って、着るひとに寄り添ったお洋服というイメージが浮かびました。
ー時生さんは、気になったアイテムはありますか?
時生: (ダウンベストの下に着た)セットアップですね。ジャケットのボタンの間隔がぼくの好みで、感覚的に「これは着たいな」と思いました。渋くて秋っぽい色もいいですよね。
ー本来スーツを仕立てるようなテーラードの生地が使われています。それを日常着に落とし込むために、ワークジャケットとスエットの要素を合わせて形にしていると。テーラードをもっと日常のなかで使ってほしいというマーガレット・ハウエルさんの想いがあるそうです。
時生: ぼくはセットアップを日常で着るので、これは長く使いたい服だと思いました。あとは、緑のセーターも色合いが珍しくて好きです。
ー〈マーガレット・ハウエル〉の服をプライベートで着るとしたら、お二人はどんなシチュエーションをイメージしますか?
中野: たとえば、シャツにネクタイを合わせたスタイルは、美術館にいくときに着たいですね。普段から美術館や映画館に行くのが好きで、そういう場所では自分の意識も大切な要素だと感じているので、お洋服から自分の気持ちをつくって足を運ぶことで、アートなどから感じ取れるものがあるんじゃないかと思いました。
ー時生さんはどうですか?
時生: 日常着として着ます。服を選ぶときは普段通りの過ごし方ができるかを考えますが、〈マーガレット・ハウエル〉の服はぼくにとって、いつも通りの毎日を過ごせる服です。
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