PROFILE
1981年生まれ、山形県出身。ファッションの専門学校を卒業後、〈ステューシー〉にて販売スタッフを務める。2007年に退社したのち、岡山県児島に本社のあるデニムのOEM会社に入社。その後、パターンや縫製を独学で学び、2014年にショーン・ステューシー率いる〈エスダブル〉のデザインを担当。2021年に〈マジックナンバー〉のデザイナーに、2024年に同ブランドのデザイナー兼ディレクターに就任。
世界が認めたMade in Japan。児島のデニムが選ばれる理由。


タオルは今治、メガネは鯖江、そして、デニムは児島。
今回の舞台である岡山県の児島は、世界に冠たるデニムの生産地です。その歴史は明治時代末期にまで遡り、当時は綿織物の産地として知られ、特に学生服の生産地として発展していきました。1917年に児島で学生服の量産が始まり、その技術と経験が後のデニム産業の基盤となったのです。
第二次世界大戦後はアメリカ軍の駐留に伴い、日本にデニムのカルチャーが流入。1965年、児島の織物業者たちは、学生服生産で培った技術を活かし、国産ジーンズの製造に着手します。それが、いまに続く「デニムの聖地」としての地位を確立する第一歩となりました。


デニムづくりがはじまってから半世紀以上が経ち、児島では、現在でも当時から使われている旧式のシャトル織機を使用している工場が存在します。生産効率は劣るものの、それがセルヴィッチと呼ばれる耳付きの生地を可能にし、デニムに味わい深い風合いを与えてくれます。
ほかにもさまざまな機屋があり、染めや洗いにいたるまで、すべての工程で職人たちが関わり、厳格な品質管理が行われています。その一貫した姿勢が、世界最高峰の品質を支えているのでしょう。


ファストファッション全盛の現代において、児島のデニムは「本物」を求める消費者のニーズに応える存在として、その価値を高めています。職人たちの技術と情熱、そして地域全体での取り組みは、単なる衣料品生産の枠を超え、日本のものづくりの真髄を世界に発信し続けているのです。