先日、アメリカロードトリップの模様をフイナムにて公開した、写真家の山谷佑介。ヒリつくような荒々しくも繊細な感触の作品群は、見る人の印象に深い余韻を残します。

これまで、ミラノのスクワット、東南アジアのパンクスなど、国内外の様々なアンダーグラウンド・コミュニティに自身を溶け込ませ、生活をともにし、 遊びながらそこにある日常を彼自身が現代に生きるアウトサイダーの一員としての繊細な視点で撮影しつづけています。

今回の新作展「Use before」は2008年に生産を終了したポラロイド社のポラロイドフィルムで撮影された作品です。

有効期限を何年も過ぎたポラロイドフィルムで、 山谷自身がドラムを務めるパンクバンド、「NEIGHBORS」のライブ会場に集うバンドマンや友人たちのポートレートを撮影しています。それぞれのポラロイドには被写体となった人々の誕生日がスタンプされています。

有効期限の切れたポラロイドフィルムは、経年劣化により現像ムラや端欠け、感度の低下や上昇、カラーバランスの崩れを起こします。今回の作品も、顔がほぼ認識出来ないほどにフィルムが劣化しています。

山谷自身が十代の頃から音楽や様々な文化を通して抱いていたという、自身の嗜好と時代とのズレ。自分がいつの時代に生きているのかがわからない、という浮遊感。そうした虚ろな感覚と、有効期限が切れたフィルムとが結びつくことで生まれた今回の作品群。

見えるものだけが全てじゃない。見えないからこそ浮かび上がる、輪郭のおぼろげな何か。東京・大阪2都市での開催です。詳しくは以下にて。