王道ブランドの定番品はやっぱりいい。定番と言われるだけあって歴史があるし、信頼できるスペックもあって、何歳になっても飽きない。でもこれはちょっと天邪鬼なひとに向けた連載企画。あのブランドの、実は知られていない、けどグッとくるものを紹介します。第6回目は〈モンベル〉のマイナーグッド。
Photo_Arata Suzuki
Styling_So Matsukawa
Text&Edit_Yuri Sudo
2001年から〈モンベル〉が「野点(のだて)セット」なるものを販売しているのをご存知でしょうか。アウトドアで茶の湯を楽しめる商品で、創業者である辰野勇氏が純粋に欲しかったからつくったのだそう。
売れるかどうかだけではなく、自ら欲しいものをつくる。辰野氏の信念が垣間見えるエピソードですし、いまのものづくりにもしっかりと受け継がれています。
そして、その道のプロ=マニアが生み出したものには、マニアなユーザーがついてくる。例えばこんなものとか。
アリュートオーシャン アノラック
¥20,240
一見普通のシェルかと思いきや、カヤックツーリングのためのアウターシェル。日本シーカヤック界の第一人者である内田正洋氏のアイデアを吸い上げて落とし込んだ一着です。
シルエットやサイズは、すべてカヤックの上での動きに寄与しています。ライフジャケット(膨張式ライフジャケットを除く)の上から着用できるゆったりとしたサイズ感にすることで、天候や気温の変化があっても脱ぎ着が楽ちん。また、パドリングの動きを妨げない立体裁断パターンや水の浸入を防ぐ袖口など、カヤックに適したつくりになっています。
そして何と言っても、〈モンベル〉は素材が命。独自の防水透湿性素材「ドライテック®️ 3レイヤー」を使用しています。すべての縫い目にシームテープ処理を施すことで、雨粒や水しぶきから身を守りつつ、汗の水蒸気をスムーズに外に逃します。
ここまで機能を求めているとデザインが蔑ろになりそうですが、ご安心を。ブランドが掲げる「Function is Beauty」の通り、むしろ機能を求めるからこそ美しさがあとからついてくる。機能のためにつけられた反射テープやウエストの絞り、ハツラツとしたカラーリングはむしろファッションとしての魅力につながっているのです。
ドライメッセンジャーバッグ M
¥14,300
最近では古着でメッセンジャーバッグを手に入れるひとも増えましたが、ここまでスペックが高いのであれば、新品を、しかも〈モンベル〉の新品を選ばない手はないはず。
防水性と耐久性に優れたタフな生地を採用しつつ、接合部分にはウェルダー加工をしたり、ジッパー部分にも止水を施しているので、浸水を防ぐことができます。さらに多少濡れても、蒸れを解消するパットが背面にあるから安心。
もちろんメッセンジャー視点なギミックがたくさん。まず右利き左利きどちらにも対応できるよう、ショルダーストラップは付け替え可能になっています。また、荷重を分散して肩を包み込むショルダーパッドを兼備。それ以外にも、走行中の揺れを防止する補助ストラップや、バックライトを装着できるホルダーなど、プロ仕込みの配慮が行き届いています。
あらゆる可能性に備えて機能が揃えられているから、いつなんどきも最高のパフォーマンスをできる。これはメッセンジャーを職業にしていなくてもありがたいものです。
クラッシャブル アンブレロ
¥6,300
〈モンベル〉がその道を極めたひとに教えを請うとき、時代は問いません。
古来、田んぼや畑で働くひとびとの日除けのために生まれた「笠」。その構造をもとにつくられたのがこのハットです。
折りたたむことができるうえに、瞬時に本来の形状に広がるポップアップ仕様と便利。それでいて、4本の芯材を入れているから、風を受けてもひるがえりにくいのがうれしい。笠と同様、頭部に空間があるので汗をかいても蒸れにくく、ハイキングや水遊びに適しています。
モンタベア 30cm ¥5,500、バンダナ 山の日 ¥1,210
どうしてもビジネスをしていると数字やトレンドばかりを追いかけてしまいますが、〈モンベル〉はご覧の通り専門性を高めることに余念がなく、極めて誠実。
それは、第一にブランドを運営しているひとたちの経験と願望に正直であるから、そして機能は嘘をつかないということを知っているからでしょう。
このモンタベアの真っ直ぐな目も、まるでブランドを物語っているようで愛おしいですね。
ロケ地メモ:映像業界で働く夫婦の作業部屋。ワインセラーのように機材が保管されている。