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【FOCUS IT.】さかのぼること23年。2002年にカルト的な人気を誇ったあの服を管野寿哉がオマージュ。

あの頃、喉から手が出るほど欲しかったけど手に入らなかった服。ファッション好きなら、ひとつやふたつはあるでしょう。そんな当時に思いを馳せて、〈サンドウォーター(SandWaterr)〉、〈THRIFTWEARMARKET & FLEA MARKET TOUrr〉を手がける管野寿哉さんがオマージュしたのは、デザイナー宮下貴裕さんが2002年に生み出したあの一着。当時とはまた違ったムードでデザインされているから、いま着てこそかっこいいのです。今回は、管野さんの念願叶い、ようやく完成したアイテムに込められた想いをお伺いしました。

Photo_Shunsuke Kondo
Edit_Amame Yasuda


PROFILE

管野寿哉
〈サンドウォーター〉「スリフトウェアマーケットアンドフリーマーケットツアー」デザイナー

販売員、企画、デザイン業を経験した後、独立。現在は自身のブランド〈サンドウォーター〉を手がける。古着とフリーマーケットのプロジェクト「スリフトウェアマーケットアンドフリーマーケットツアー」のディレクションも務めている。
Instagram:@kzy_sgn

憧れのアイテムにリスペクトを込めて。

ー今回のアイテムは「スリフトウェアマーケットアンドフリーマーケットツアー」で、デザイナーの宮下貴裕さんがかつてつくられていたアイテムをオマージュしたと伺っています。

管野:そうです。ぼくは〈サンドウォーター〉とは別に、「スリフトウェアマーケットアンドフリーマーケットツアー」というプロジェクトを手がけています。これまで集めていた古着を販売したり、ワークショップなどのイベントやポップアップをディレクションしています。そのプロジェクトの一環で、ブランドとコラボしてデザインを任せてもらうこともあるんですが、今回ご一緒させていただいたのはぼくが敬愛するデザイナーの宮下貴裕さんです。

ーなるほど。今回、管野さんが宮下さんにお声がけした理由を教えてください。

管野:話せば長くなるんですが(笑)。ぼくがデザイナーになろうと思ったのは、宮下さんがきっかけですし、一番影響を受けたデザイナーといっても過言ではありません。この人と何かやりたいって思っていて、それがようやく実現しました。

ーそうだったんですね。影響を受けたというのはいつ頃の話ですか?

管野:20代前半ですね。物心ついたときから服が好きだったので、高校に行きながらすでにファッション業界で働き始めていて。当時は原宿にあるセレクトショップでショップスタッフとして接客業をしていました。今はもうなくなってしまったので若い世代の方は知らないかもしれませんね。そのショップがあった通りは“〇〇通り”なんて呼ばれてますよね。

ー知りませんでした。名が残るような伝説のショップがあったんですね。

管野:丸一日、暇な日もあったけど(笑)。あの頃、やっぱり近くにあった〈ア ベイシング エイプ(A BATHING APE)〉や〈ネイバーフッド(NEIGHBORHOOD)〉の人気がホントにすごくて。でもある日、それ以上に人気があって、宮下貴裕さんが手がけるブランドのランウェイの招待状がお店のポストに届いているのを発見したんです。店長に話したらなんと、宮下さんもその昔に同じショップで働いてたそうで。しかも、ラッキーなことに、ぼくがそのランウェイを観に行かせてもらえることになったんです。

ーすごい偶然ですね。当時のショーはいかがでしたか?

管野:それがもう、めちゃくちゃかっこよくて。かなり影響を受けたのを覚えています。同時に、同じ店で働いていた先輩がこんなかっこいいことできるなら、自分もデザイナーになりたいって思ったのを覚えています。若さゆえの勘違いもいいところですよ(笑)。そのショーには、ファッション業界の第一線で活躍されている方々がたくさん来場していて、その頃、20代前半だったぼくには相当刺激が強かったなと。

ー第一線で働かれている方々を見ると、背筋が伸びる気持ち、すごく分かります。

管野:そうですよね。そのときに影響を受けたのは確かなんだけど、宮下さんと実際に面識を持ったのはぼくが30歳のとき。ぼくがアシスタントデザイナーをしていたときです。

ー憧れの人と初めて話した瞬間は、忘れられないですね。それからどういった流れで今回の制作に至ったんでしょうか?

管野:お会いした時から一緒に洋服をつくりたいって思っていました。以前働いていた会社でもブランドのデザインはしていましたが、ぼくが未熟だったのでその時は叶わず。独立して何年か経ちましたが、やっぱり宮下さんと何かやらせていただきたいと思う気持ちは変わらなくて。

ーついに宮下さんは承諾してくれたんですか?

管野:自分なりにドキドキしながらご相談させていただいて、「いいよ、任せます」みたいな感じで言っていただいて。それで、宮下さんが昔デザインしていたリメイクの服がすごく印象的だったんです。当時めちゃくちゃ欲しかったけど手に入らなかったから、もうつくるしかないと思って。ぼく自身古着も大好きですし、「スリフトウェアマーケットアンドフリーマーケットツアー」ではリメイクの案件が多かったってのもあって、今回のアイテムが完成しました。

ータグにあるブランドネームが、「Designed by」ではなく「Music by」というのが音楽好きの宮下さんらしいですね。

管野:そうなんです。「THRIFTWEARMARKET & FLEA MARKET TOUrr music by TAKAHIRO MIYASHITA」っていうのは、この企画のためにつくった特別なブランドネームなんです。

ー宮下さんが音楽好きであることは、デザインされている服からも感じられますよね。

管野:そうですね。今回、ぼくはそれをアレンジさせていただいた感覚ですね。当時のオリジナルは程よいフィット感なのですが、パターンは引き直し、ぼく自身が好きなゆとりのあるバギーシルエットにしています。


ーこれが元ネタになった当時のアイテムですか?

管野:はい。企業のロゴとか普通に入ってるし、いまだとつくれないですよね。だから、今回リメイクで使ってるTシャツはアメリカをメインに海外のライブやイベントのものをピックアップしました。

ーいまは厳しくなっていますよね。今回のアイテムでこだわった点はというと?

管野:古着のフェード感が注目されていることに伴い、製品をデザインする上でオーバーダイやヴィンテージ加工などが主流になってきてると思うんです。だから、フェード感は必ず取り入れたくて。それを強く表現するために、あえて生地はすべて黒いヴィンテージTシャツを使っています。生地をつなぐ刺繍は、チャコールに黒のラメが入っているものを選んでいて、深みのあるグラデーションを大事にしています。カジュアルだけどちょっとした大人の色気も表現しました。

ーたしかに、どこか品を感じます。

管野:もうひとつ大きなこだわりポイントなんですが、当時、オリジナルをつくっていた工場とまったく同じところに制作をお願いしました。刺繍のデータも再現してもらっていて、生地を裁断してくれた方と当時を振り返りながらつくることができたんです。再現度でいうとかなり高いんじゃないかな。

ーなるほど。ここまで手作業だと、お値段は張りますよね…?

管野:プライスは¥99,999で9着販売します。「9」って数字にこだわった理由は、分かるひとには分かると思いますが。ぼくにとってはこれこそ、宮下さんへのリスペクトの気持ちを込めたところでもあるんですよね。

ーこのプライス、着数で売ること自体も、こだわりのひとつなんですね。手に取ったひとが、どんな風に着こなすのかとても楽しみです。

管野:そうですね。もちろん自由に着てもらいたいけど、ぼくだったらスラックスを合わせるかな。足元はサンダルとかで。そういったバランスを楽しみながら着こなすのがいいと思います。

INFORMATION

THRIFTWEARMARKET & FLEA MARKET TOUrr

発売:7月5日(土)
場所:吾亦紅
住所:東京都渋谷区神南1-17-4 B1F
電話:03-6455-3651
時間:11:30〜20:00
公式インスタグラム

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