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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.113 時代の空気感によく馴染むナイキ 。“なんか気になるテニスとゴルフ”。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

この連載も15シーズン目に突入! 新たにショップがすべて入れ替わったトップバッターの第113回目は、古着屋急増中の三軒茶屋エリアの新店「クリップ(KLIPP)」。シーズン8では「ヒムセルフ(HIMSELF)」として登場したディレクターのYUKIさんと、店舗統括のKOHEIさんは、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


YUKI & KOHEI / KLIPP ディレクター & 店舗統括
Vol.113_ナイキのナイロンジップジャケット、ハイネックジップブルゾン、フーデッドベスト

―本連載は“トゥルー・ヴィンテージのように記録や記憶に残っていくようなグッドレギュラーをいまの内に探す”のがテーマです。では、「クリップ(KLIPP)」にとってのニュー・ヴィンテージの定義とは?

“日本だけでなく世界のファッション・ムーブメントの中で、トップトレンドと次にきそうなネクストトレンドの交わる辺り。そういったポジションのアイテム”をニュー・ヴィンテージとして提案できればと考えています。なので、ウチの店としては歴史的にも価値を見出すことができて、かつその文脈にも紐付くモノを取り挙げていければなと。

ーなると、1巡目ではどんなニュー・ヴィンテージを?

改めて、いま〈ナイキ(NIKE)〉がイイと思っているんですが、狙うのはゴルフとテニス。数年前から、テックやギアなどのユーロ発のムーブメントが続いていて、日本でも認知が上がってきてはいるけど、こと〈ナイキ〉のそれに関してはまだ浸透していない状況。ですが、アラウンドY2Kらしいデザインでクールなモノも多いですし、ファッション的にはかなり有能ということでピックアップしました。まずは〈シュプリーム(SUPREME)〉や〈キース NYC(KITH NYC)〉も注目しているテニス。その近年ものから。

ー1着目は、テックというよりもスポーティー感が際立つナイロンジャケットですね。

ナイキのナイロンジップジャケット ¥13,200(クリップ)

やはり時代ごとの変化といった背景を踏まえて、文脈で追えるというのも古着カルチャーの楽しみ方としてすごくイイなって思っていて、そこで面白いのがテニスラインというワケです。注目すべきポイントは左胸に付いたチューンドエアのロゴ。

ーチューンドエアといえば「エア マックス プラス」に搭載されているクッショニングシステムですが、このロゴが付いたウェアもあるんですね。

オシャレですよね。2000年初頭かな。この年代のスポーツウェアって、デザイン的な魅力も当然ありますが、実際に着た際により魅力が増すと言いますか。モノとしての価値とファッションとして取り入れた際の価値、その両方を持っているという意味では、ぼくらの考えるニュー・ヴィンテージの基準に当てはまるのかなって。ホワイト×ピンクという配色からなんとなく察することができるようにユースモデルで、サイズはXL。最近はコンパクトなシルエットを好む方も多いですし、こういったユースやウィメンズを選択肢に加えると、スタイルの幅も広がるかと。

ーまたテニスカテゴリーということで、動きやすさを重視した袖のダーツやパターニングが効いています。

素材はナイロンリップストップ。フロントジップの引き手にラバーを使っているのも当時の空気感があってオシャレ。古着業界的にナイキのテニスというと、1980~1990年代の“チャレンジコート”シリーズのイメージが強いかとは思いますが、デザインにしろシルエットにしろ、圧倒的に着やすいのが00年代のアイテム。そこも推したい理由の1つです。

ー〈ナイキ〉の「エア マックス プラス」はユーロ圏で人気ですし、同地の不良的なゴープコアとも相性が良さそうですし。

というワケで、どれだけ変わったのかという比較対象として“チャレンジコート”シリーズのアイテムをご覧いただきます。まずは短丈&ワイドな身頃にぶっといアームホールが特徴的な、デニム素材のハイネックジップブルゾン。ヒジ部分にパッチが当てられていて、パッカブル加減もイイ感じ。ロゴは同色でさりげなく。

ナイキのハイネックジップブルゾン ¥39,600(クリップ)

カラーも色々とあって、ケミカルウォッシュ、アイスウォッシュのインディゴ、ブラックは結構見かけますが、この濃いめのインディゴになると一気に値段が上がります。高騰化の要因としては、状態のイイものを探すとなるとサイズが小さくなってしまうため普通に着用できるモノが少ないというのもそのひとつ。派手さこそありませんが、令和的感覚では「これ、本当にテニスウェアなの?」と思う方も多いのでは?

ーもう1つの方は、かなり派手ですね。

ナイキのナイロンジャケット ¥22,000(クリップ)

チャレンジコートの特徴といえば、派手で奇抜な柄使いと配色。基本的に白を基調に蛍光色を挿し色とあしらったものが多いので、この黒を基調としたデザインはやや異質。背面のアブストラクトすぎる柄もユニークですし、火を吹くテニスボールをモチーフにしていると思わしき胸のラバーワッペンも最高。内側にも大きなワッペンがあしらわれていたりと、かなり手の込んだ仕様となっています。

ー見応え抜群で、アートピース的価値もありそうです。そして締めはゴルフライン。〈ナイキ〉のゴルフラインというと、90年代にB-BOYがよく取り入れていたチェック柄ショーツやニットベスト、ハンチングなんかのイメージがあります

その当時のモノに比べると、かなりモダンでテックなフーデッドベストをご紹介します。時代的には、1着目と同じく2000年代前半くらい。ノリでいえば〈オークリー(OAKLEY)〉のゴルフラインや〈アークテリクス(ARC’TERYX)〉的な。それをあえて〈ナイキ〉でいくっていうのがポイントでしょうか。ゴルフというスポーツは悪天候でもプレーしたりするため、そういった事態を想定したデザインが、ちょうどいまの空気感にもハマるのではないかなと。

ナイキのフーデッドベスト ¥11,000(クリップ)

ーたしかに。このフードの形状なんかもクールです。

首元から広めにカバーしつつガボッと被れる大きめタイプ。ラウンドしている時は被っていて、ボールを打つ際にフードを脱ぐ。そんな光景が想像できます。素材は、若干ストレッチが効いていてピーチスキンのような表情のある質感。スウッシュは同色で目立たない位置に刺繍してあります。このアノニマスな感じにもユーロの匂いがすると思いません?

ークリーンかつアーバン、非常に使い勝手も良さそうです。

想像がつきますよね、これにワイドデニムと〈オークリー〉のサングラスなんかを合わせて…っていうスタイリングが。先ほどのお話にもありましたが、90年代のHIP HOP文脈“ではない”00年代の〈ナイキ〉のテニス&ゴルフは、いまの時代にこそフィットすると思うので、ぜひチャレンジしていただければと思います。

YUKI & KOHEI / KLIPP ディレクター & 店舗統括
2025年4月19日に、飲食店と古着屋ひしめく三軒茶屋・茶沢通り沿いにオープンした「クリップ(KLIPP)」。国内外のデザイナーズやメゾンブランドのレギュラーとヴィンテージが、高感度セレクトショップを思わせるクリーンで洗練された空間に並ぶ。姉妹店に高円寺「ヒムセルフ(HIMSELF)」、下北沢「ベイブ ストア(BABE Store)」がある。
インスタグラム:@klipp_sangenjaya

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