1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
この連載も15シーズン目に突入! 新たにショップが全て入れ替わって1巡目のトリとなります第116回目。シーズン9以来、本連載3度目の登場となる「ダンジル(danjil)」のコージさんの登場です。さて、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
コージ / danjil 店長
Vol.116_ジャップ工房のシルバーリング
ーお久しぶりです。これまでシーズン2(2021年)、シーズン9(2023年)とご登場いただき、今回がなんと3回目。
こうしてまた呼んでもらえて、嬉しいです!
ーこれまで〈エルメス(HERMES)〉の「ターボ」、〈キックウェア(KIK WEAR)〉のニットポロシャツ、〈オークリー(OAKLEY)〉の「アイコンバックパック」、〈ナイキ(NIKE)〉の「ナイキ ズーム エア ユーアールエル(NIKE ZOOM AIR URL)」といった“らしさ満点”のアイテムを紹介いただきましたが、今回紹介いただくニュー・ヴィンテージとは?
過去記事を改めてチェックさせてもらったところ、アクセサリーってこれまで登場していなかったなと。ウェアやバッグ、キャップ、シューズなんかに比べるとコーデにおける比重は軽いアイテムなのかもしれませんが、ウチならではの視点で面白いと思うモノをご用意しました。それがこの〈ジャップ工房(JAP工房)〉のリングです。
ー1990年代にアメリカンTOYファンだった筆者的には非常に懐かしい! たしかに「ダンジル」を訪れるたびに気になっていました。
当時の古着屋って「アメリカ物なら何でも好き!」っていうオーナーのもと、古着だけでなくインポートのオモチャや雑貨を置いている店も多かったですよね。なので古着とその辺のカルチャーをワンセットで刷り込まれたという人も多いと思います。
ーそもそも〈ジャップ工房〉ってどんなブランドなのか教えていてだけますか?
ぼくも改めて調べてみましたが、少々長くなりますよ(笑)。ブランド自体は1981年スタート。当初は鋲を打ったリストバンドなどの革小物、ベルトやアクセサリーの製作・卸しを、原宿中心に展開していたとか。
ー結構歴史の長いブランドなんですね。
ですね。その流れからミュージシャンのツアー衣装も手掛けるように。公式サイトに載っている同ブランドのヒストリーによると、あのデーモン小暮閣下率いる聖飢魔II、戸川純、スターリン、LUNA SEAなんかもそうみたいですね。これらと並行して、ロックファッションブランドもスタートし、アクセサリー制作も行うようになったようです。
ーへぇ〜。「1992年頃から造形的な特殊衣装・美術小物の製作にも力を入れるようになり、お立ち台ギャルのセクシー衣装にも暗躍」と記載されています。これは知りませんでした(笑)。
ブランドに歴史あり、ですね(笑)。1995年からは映画やゲームCMの衣装もやっていて、翌1996年に『スパイダーマン』などマーベルコミックスのキャラクターのシルバージュエリーを発表。ぼくらが雑誌で見ていた〈ジャップ工房〉はこの辺からみたいですね。
ー「ダンジル」では、いつ頃から扱い出したんですか?
コロナ禍くらいかなぁ。日本の文化やハードコア、パンクといったさまざまなカルチャーがひとつにミックスされて詰まっている、そこに改めて面白みを感じて。オリジナリティもそうですが、何よりクオリティが凄まじい。あの細かな造形と薄さを両立させるって、並大抵の腕前ではできませんからね。
ーこれは期待値も高まります! そして、今回用意いただいたのが…。
ジャップ工房のR2-D2 リング ¥43,780(ダンジル)
まずは、1997年に映画『スター・ウォーズ』の20周年を記念してリリースされたコレクションから「R2-D2 リング(R2-D2 RING)」を。頭部とアーム部が可動するのがポイントで、原型師は川上登さん。
ジャップ工房のチューバッカ リング ¥32,780(ダンジル)
「チューバッカ リング(CHEWBACCA RING)」は、チューバッカらしい体毛の流れが見事に表現されています。こちらと「ボバ・フェット リングBOBA FETT RING」の原型師は南坂達徳さん。ボバは当時、〈バウンティーハンター(BOUNTY HUNTER)〉のHIKARUさんも「チョーヤバイ!!」と吠えまくって愛用していたことでもお馴染みです。
ジャップ工房のボバ・フェット リング ¥54,780(ダンジル)
ーくぅ〜、どれもシリーズ屈指の人気キャラですね。あとは地味にスゴイのがコレ!
ジャップ工房のジャバ・ザ・ハット リング ¥54,780(ダンジル)
「ジャバ・ザ・ハット リング(JABBA THE HUTT RING)」ですね。原型師は竹谷隆之さんで、ジャバの巨体をコンパクトにまとめてリングに仕上げるセンスが、マジでヤバイ! こういうのって通常はメインキャラだけって場合が多い中、マニアックなキャラもラインアップしているところが、マニアックで日本のブランドらしいなって。あと、原型師の名前をしっかり立たせている点にも造形に対する強いプライドが垣間見えて非常に良きです。
ーこちらも同じコレクションですか?
ジャップ工房のダース・モール リング ¥54,780(ダンジル)
こっちは、2000年夏公開の映画『スター・ウォーズ エピソード1(STAR WARS EPISODE I)』に合わせてリリースされたコレクションから、新キャラの「ダース・モール リング(DARTH MAUL RING)」です。当時、ファッション誌でバウンティーのHIKARUさんもリコメンドしていました。この辺は持っている人も少なく、個人的にもオススメ。
ー古着業界でも「スター・ウォーズ」シリーズの人気は鉄板ですもんね。他に注目している〈ジャップ工房〉のアイテムがあれば教えてください。
ジャップ工房のエイリアン3 リング ¥43,780(ダンジル)
1998年に映画『エイリアン(ALIEN)』の3作品を立体化したコレクションでしょうか。中でもこの「エイリアン3 リング(ALIEN-III RING)」はベーシックで着けやすいと思います。原型氏は知見有二さん。で、もうひとつはさらにスゴイですよ。
ーオ〜! ボックス&専用ケース付き!
ジャップ工房のチェストバスター リング ¥65,780(ダンジル)
劇中でも印象深かったエイリアンの幼体、チェストバスターをモチーフにした「チェストバスター リング(CHEST BUSTER RING)」です。原型師は日高直紀さん。こちらは原型製作までを〈ジャップ工房〉で行い、フィギュアメーカーの〈メディコム・トイ(MEDICOM TOY)〉にエイリアンの卵(エッグポット)型のソフビケースの製作を依頼したとか。
ー最強コンビじゃないですか。どれも「ヤバイ!!」としか言えない出来ですが、こういったゴリゴリ&濃いめのシルバーアクセって最近の若い世代の反応ってどうなんですか?
それが、意外に20代の若い世代からの反応が良いんです。なので、懐かしがってくれる40代オーバーのぼくら世代と、初めて知る若い世代の両方で売れています。そもそもが日本のブランドなので仕入れる際も見つかるは見つかるんですが、取り扱い始めた頃に比べると、納得いく価格でお出しするのが、なかなか難しくなっているようには感じます。
ー着用せず飾るだけでも絵になるので、アート作品として注目するのも良さそう。ちなみに〈ジャップ工房〉というブランドは今、どんな感じですか?
それこそ公式サイトをチェックしてみると、おもしろいですよ。ブランドヒストリーには「え、これもそうなの?」と驚くようなクライアントの名前がたくさんありますし、特に2000年〜2003年の項目には裏原宿のトップブランドの名前も並んでいて必見。それらを参考にディグしてみては?
コージ / danjil 店長
2003年、東京・西南エリアにおける古着のメッカとして知られていた町田に、1980年代〜2000年代のアメリカンカルチャーにまつわるアイテムをラインアップする古着屋「danjil」をオープン。22周年目を迎えた同店では、ストリートカルチャーやアメリカンスポーツにまつわるアイテムがところ狭しと並び、訪れる“好き者”たちを悶絶させる。また、ブランド〈コットンパン(COTTON PAN)〉のディレクターでもある。
インスタグラム:@danjil2