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『クレイジージャーニー』『奇界遺産』の佐藤健寿にインタビュー。新刊『THE ISLAND 軍艦島』で描いたものとは?

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『奇界遺産』『奇界遺産2』といった世界中の奇天烈なものを紹介し、テレビ番組『クレイジージャーニー』『タモリクラブ』に出演するなど、世界中の奇妙なものをネタ的に紹介するのではなく、博物学的、美学的視点から取り上げるという新しいジャンルを開拓した、佐藤健寿さん。

つい先日、軍艦島をテーマにした『THE ISLAND 軍艦島』をしたばかり。1974年に閉山し、2015年に世界文化遺産に登録され、日本の廃墟マニアの間で必ず口の端に上がる、この島。世界中で数多くの廃墟を見てきた佐藤さんが語る、軍艦島の本当の姿とは? ご本人に、お話を聞いてきました(本記事の写真は未公開のアザーカットも一部含みます)。

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佐藤健寿
写真家。武蔵野美術大学卒。世界各地の“奇妙なもの”を対象に、博物学的・美学的視点から撮影・執筆。著書に『奇界遺産』『奇界遺産2』(エクスナレッジ)、『世界の廃墟』(飛鳥新社)、『世界不思議地図』『SATELLITE』(共に朝日新聞出版)、『奇界紀行』(角川学芸出版)、『TRANSIT 特別編集号~美しき不思議な世界~』(講談社)、『ヒマラヤに雪男を探す』『空飛ぶ円盤が墜落した町へ』『諸星大二郎 マッドメンの世界』(すべて河出書房新社)など。テレビ朝日「タモリ倶楽部」、TBS「クレイジージャーニー」、NHK「ニッポンのジレンマ」、NHKラジオ第一「ラジオアドベンチャー奇界遺産」ほか出演歴多数。

ーまず佐藤さんにとって、軍艦島とはどういった存在でしょうか?

佐藤健寿(以下、佐藤):いちファンみたいなものです。今回、長崎市の後援をいただいてたまたま本を出させてもらいましたが、もう世界中の多くの人がこの島に魅了されているわけで、完全に僕もその一人です。帯にも「廃墟の王」とありますが、これは別にぼくが考案した言葉じゃありません。廃墟好きのひとならばまず異論はないと思いますし、海外を含めても、多分そうなんじゃないですかね。今まで結構多くの世界の廃墟を巡ってきた方だとは思うんですけど、それでもやはり上陸するたびに、結局、世界最高の廃墟はここなんじゃないかと思わせられるだけの迫力があります。

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ー写真集にもありますが、当時のグラビア雑誌などが生々しく残っていますよね。

佐藤:もちろん軍艦島は誰もが知ってますよね。で、イメージもなんとなくは知っている。でもその歴史や実情はあまり知られていません。多分みんなその壮絶なビジュアルからなんとなく哀しい島、みたいなイメージを漠然と持ってる人が多いと思うんですが、実はそうでもない。1974年に閉山するまでは、そこで働いている人たちはけっこう潤っていた。炭坑はお金になるので、部屋にはテレビや洗濯機もあるし、建物自体も日本初の鉄骨マンションが建てられたりと、当時の日本の最先端だったんです。

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ー閉山した炭坑ということから、てっきり貧しい炭坑夫の生活というイメージを持っていました。

佐藤:真逆だと思いますね。むしろすごくお金を生み出す島だった。世界の廃墟でわかりやすくいうと、東の横綱がこの軍艦島とすれば、西の横綱はチェルノブイリ原発によるプリピャチ市の廃墟だと思います。あっちはあっちでいろいろとモノが残っているんですが、その理由は、原発が爆発したときに政府は住民がパニックにならないよう「火事だから一時的に避難してください、また戻って来れます」とアナウンスしたんです。でも本当は戻って来れなかったから、モノが残っている。一方軍艦島は、景気がよいまま閉山して、住民はいろいろなものをそのまま置きっぱなしで島を去って行った。だから結果的にこの二つは景色としては似ているんですが、プリピャチ市は悲劇で、軍艦島はそんな悲劇的なものではない。そういう歴史と景色の相関性は廃墟の面白いところかなとは思います。

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ー確かに表紙を拝見しても、おどろおどろしい、または物悲しい廃墟ではないというのがおもしろいですよね。きれいなオーシャンビューになっていて(笑)。

佐藤:そうなんです。一見すると廃墟っぽくすらない景色なんですけど、よくよく見るとすごい廃墟ビルで、しかもそのすぐ先に海、という、この景色は世界中探してもないと思いますね。

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ーいま、このタイミングで軍艦島を撮影したのはなぜでしょう?

佐藤:二つ理由があります。軍艦島は崩壊がすでに始まっていて、この数十年で徐々に朽ちてきています。長崎市では景観の保存活動を始めていて、その活動は意義がある素晴らしいものなのですが、てこ入れされる前の原風景としての軍艦島を撮りたいという気持ちもあるんです。たとえば、軍艦島にはツアーに参加すれば上陸できますが、廃墟が広がるエリアは安全確保の都合上、ツアーでは入れないエリアなんですよね(写真集では長崎市協力のもと禁止エリアに入って撮影しています)。原風景と人工保存という難しい問題ではありますが、もしかしたら今が撮る最後の機会だったのかなとも思います。もうひとつの理由は、ここ1、2年でドローンのカメラが高性能になり、写真集に使っても大丈夫なレベルにまで成熟したということです。この本にまつわるイベントなどでも何か軍艦島の保存活動のサポートにできないかと長崎市の人とも話しています。

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ー軍艦島は、これまでにも数多くの書籍が出版されています。佐藤さんは、なぜあえて軍艦島を選んだのでしょうか?

佐藤:あとがきで触れているのですが、軍艦島にまつわるある詩と出合ったことが今回のプロジェクトの契機になっています。簡単にいえば、その詩のメッセージと、自分が軍艦島に感じたものが似ていたからです。軍艦島は廃墟ではあるけれど、いまぼくらの住んでいる街と地続きというか、断絶したものだとは思えないんです。タイトルに「THE ISLNADS」、つまり“とある島”、とつけたのも軍艦島を特殊な場所、ではなくて、あくまで普遍的な光景のひとつとして見せたい、という考えからです。あとは日本列島も島だから、日本という島そのものの縮図的な話でもあるという意味もありますね。この島は、どこにでもありそうでどこにもない島、でも日本列島そのものでもある、という矛盾したような両義的なニュアンスというか。言語化すると理屈っぽいけど、実は軍艦島を目の前にすると、みんな漠然と感じることなんじゃないかと思うんです。

ーこれほど軍艦島が多くのひとを惹きつけるのはなぜでしょう?

佐藤:日本では廃墟というか、特に産業遺産は、どこかのタイミングで撤去されたり、修繕して文化遺産になることが多いので、変な言い方ですけど、きれいな廃墟が多い。でも、これだけの規模で、しばらく手つかずで、島という立地で、さらにビルが乱立して、というのは世界的にみてもおそらくない。手垢はついてないけど、ひとの痕跡はめちゃくちゃ残っているというのはすごく不思議な景色です。廃墟的な文脈でも聖地とされていて、一方では世界遺産にも認定されている。いわば、公式と非公式の両面から認められている(笑)。そういう特殊な魅力があるんですよね。

Text_Shinri Kobayashi


『THE ISLAND 軍艦島』
著者:佐藤健寿
価格:¥2,376 in TAX
出版社:朝日新聞出版
発売:1月19日
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