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現代美術家・岩井優の眼前に現れたものたち。映像作品をまとめた初の作品集は、アクションを誘発します。

国内外で注目を集める現代美術家、岩井優が今年5月に初の作品集を発売しました。

清掃、洗浄、浄化、クリーニングなどをテーマにした作品が多い岩井氏。本書も彼があらゆる場所に赴き体験した、清掃にまつわる4つの映像作品がおさめられています。

《Galaxy wash(ギャラクシー・ウォッシュ)》, 2008

透明な水槽を真下から、定点で撮影した映像作品。水槽内ではコップや野菜、パン、丸鶏、魚、サングラスなどが次々と洗われます。どれがきれいでどれが汚いか、人や時代によって変化する清潔観念を世に問いかけています。

《The white building washing(ホワイトビル・ウォッシング)》カンボジア、プノンペン , 2012

カンボジア、プノンペンのスラム街に建つ「ホワイトビル」。ゴミ山や共同便所からは、異臭が放たれていました。あるきっかけから、ビルの住人を巻き混んだ、ビル始まって以来の大掃除が実行されることに。今作はその様子をおさめた映像作品です。

《Cosmetology on the street(路上のコスメトロジー)》ベルリン、ドイツ, 2012

岩井氏はドイツ、ベルリンに滞在中、街に落ちている糞に対して、オキシドールやアルコールをかけて除菌したり、表面にペイントを行いました。それは言い換えれば衛生的アプローチ、審美的アプローチであり、最終的には美容にまつわるアプローチをすることで、路上の糞に向き合ったのです。

《100 fish(Or before and after of epicure)100 匹の魚(または愉悦のあとさき)》バトゥミ、ジョージア国, 2012

ジョージア(グルジア)のバトゥミとい う港町。岩井氏は、無計画に魚100匹を食べるパーティを突然スタートさせました。はじめのうちは遠巻きに見学していた現地の人たちも、次第に寄ってきて、食べ、片付けまでしたそう。今作はその一部始終を撮影した映像作品です。

本書のあいだに挟まれている4枚の紙は、作品完成までの過程を可視化するために制作されたもの。テキストの赤字もその延長線上でデザインされた。

後半には4人の著名人による論考も。人類学者の石倉敏明氏やダンス研究者の中島那奈子氏など、それぞれバックグラウンドの異なる視点から作品が論じられている。

作品が多々あるなか、なぜこの4つを選んだのか? その理由を岩井氏は「自分にとってメルクマール(指標)になるもの 」と答えています。また、映像作品を形態の異なる紙で仕上げたのは、本が持つ時間の相対的な特性が好きだからだそう。岩井氏の制作スタイルとも通ずるところがありますね。

現象のなかに飛び込み、その伝道につとめる岩井優氏を、この一冊で感じてください。

INFORMATION

MASARU IWAI WORKS 01
価格:¥3,000 円+TAX
仕様:100 ページ/カラー、モノクロ/350×250mm /無線綴じ/A2サイズポスター4枚
編集:田尾圭一郎
デザイン:大西真平
発行:read only
取扱店舗:on Sundays、代官山 蔦屋書店、NADiff a/p/a/r/t、nostos booksSTANDARD BOOKSTORENorth East他、全国の書店などで販売中

開催中の展覧会
「ヨコハマトリエンナーレ《彗星たち》」
概要:ヨコハマトリエンナーレの「エピソード」の一つとして、一般参加者とオンラインでディスカッションをし、会期中に本展会場内にて清掃にまつわるアクション《彗星たち》を行う。
場所:ヨコハマトリエンナーレ展示会場
主催:横浜美術館、横浜トリエンナーレ組織委員会
ヨコハマトリエンナーレ公式HP

岩井優WEBサイト

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