ちょっと煽るような文章になってしまいましたが、それほどの作品と言っておきましょう。
59歳というあまりにも若すぎる年齢でこの世を去った名匠エドワード・ヤン監督。1991年に発表した、伝説の傑作『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』が4Kレストア・デジタルリマスタ ー、3時間56分版として、3月11日(土)より角川シネマ有楽町にて、また3月18日(土)より新宿武蔵野館ほか、全国順次公開します。
25年前の作品ですが、これまでDVDはリリースされておらず、この上映機会に観ないと今後どうなるかわかりません。
〜STORY〜
1960年代初頭の台北。建国高校昼間部の受験に失敗して夜間部に通う小四(シャオスー)は不良グループ“小公園”に属する王茂(ワンマオ)や飛機(フェイジー)らといつもつるんでいた。小四はある日、怪我をした小明(シャオミン)という少女と保健室で知り合う。彼女は小公園のボス、ハニーの女で、ハニーは対立するグループ“217”のボスと、小明を奪いあい、相手を殺して姿を消していた。ハニーの不在で統制力を失った小公園は、今では中山堂を管理する父親の権力を笠に着た滑頭(ホアトウ)が幅を利かせている。
小明への淡い恋心を抱く小四だったが、ハニーが突然戻ってきたことをきっかけにグループ同士の対立は激しさを増し、小四たちを巻き込んでいく。
エドワード・ヤン監督に見出され、本作で主人公の小四(シャオ・スー)を演じて鮮烈なデビューを飾ったアジアを代表するスター、チャン・チェンが来日し、かれの視点から見たエドワード・ヤン監督の姿、当時の思い出などについて聞かせてもらいました。
チャン・チェン
ー初演技となったこの作品に出演した経緯は?
チャン:プロデューサーのユー・ウェイエンとぼくの家族みんなが仲が良かったんです(作品には、チャンさんの父、兄が主人公の兄役、父役として出演している)。この作品に出るまでは、ぼくはバスケットボールが好きなだけの少年で、いまに比べたらおろかというか、あまり深くは考えてなかったと思います。
ー出演されたことで思い出すことはありますか?
チャン:同世代がたくさん出ている作品なので、撮影後には友だちができて、なかにはかなり親しくなったひともいますね。
ーエドワード・ヤン監督について覚えていることはありますか?
チャン:メガネをかけていた姿かな、かれは近視でしたから。あとは、撮影以外で見せた子どものような笑顔です。ただし撮影中は、ものづくり特有の緊張感が現場には張り詰めていました。監督はとても映画づくりに情熱をもっていて、好き嫌いのはっきりしたひとだったと思います。
ーこの作品で、好きなシーンはどこでしょうか?
チャン:そうですね、ビリヤードのところから◯◯◯しにいくシーンでしょうか。凄惨なことが行われているのに、暗闇だから見えないんです、そんな演出も好きです。
ーチャンさんはこれまでに、ハリウッドや中国などの大作にご出演されていますが、各国での現場は大きくちがいますか?
チャン:国というよりは各現場ごと、ですね。監督によってちがいます。映画というのは共同制作ではありますが、個性的な監督というのはやはり監督が唯一無二の中心になります。ヤン監督もそうですが、ウォン・カーウァイ監督とかもまさにそうですね。
ー改めて、チャンさんにとって、この『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』はどんな作品でしょう?
チャン:映画づくりのおもしろさを教えてもらいました。やはり大人が情熱をもってものづくりに打ち込む姿勢をみるのは刺激的ですし、いいものですよ。
ーありがとうございました。
1960年代の台湾を舞台に、実際に起きた事件に着想を得た本作は、少年少女の青春のきらめきと残酷さ、そして「時代のうねり」を鮮烈な映像と秀逸な脚本で映し出し、BBCが1995年に選出した「21世紀に残したい映画100本」に台湾映画として唯一選出されるなど、映画史上に燦然と輝く傑作として、評価され、これまで世界中のクリエイターや多くの映画ファンたちに熱狂的に支持されてきました。
日本でいえば辛口でしられる菊池成孔をはじめ、蓮實重彦、濱口竜介、永瀬正敏、阿部和重、山戸結希など多くの映画人から文化人まで、海外でもマーティン・スコセッシ、ウォン・カーウォイなどの巨匠が賛辞を送っています。
確かに現代の映画のようなわかりやすい派手さはありません。しかし、カメラワーク、陰影、出演者の衣装、場所や景色、心情、音楽などすべてが渾然一体となって、観るものを引き込む映像を構成しています。平均的な映画の倍である4時間という長さだけど、かけがえのない至福の映画体験をもたらしてくれる4時間になるでしょう!
Text_Shinri Kobayashi
『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』
3月11日(土)より角川シネマ有楽町、
3月18日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
監督エドワード・ヤン
出演:チャン・チェン、リサ・ヤン、ワン・チーザン、クー・ユールン、エレイン・ジン
1991年/台湾/3時間56分/PG-12
配給:ビターズ・エンド
©1991Kailidoscope
※上映は、4Kレストア・デジタルリマスター原版から変換した2K上映となります。
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/abrightersummerday/
Facebook:https://www.facebook.com/EdwardYang2017/
Twitter:@Edward_Yang2017