スタイリストとしてのみならず、写真に映像制作、はたまたブランドディレクションまで、肩書きにとらわれることなく自由に表現活動を繰り広げる梶雄太。そんな彼が自ら綴った〈サンセ サンセ〉の商品説明を、ランダムに紹介していく連載企画。今回はオーセンティックなスウェットパーカが「QT」と名付けらた理由を、自身を投影したかのような文章で綴っていきます。
当時18歳だった1人の青年は、特にやることもなく毎日を過ごしていた。
90年代特有のサブカルチャーという言葉の響きが、こだまのように反復しながら大きくなった時代である。
クエンティン・タランティーノの台頭もちょうどそのタイミングであった。『レザボア・ドッグス』、『パルプ・フィクション』、『トゥルー・ロマンス』、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』。
特にやることのなかった青年もそれを全て見ていた。時間だけは山ほどあったのだから。
そしてタランティーノの若かりし日と同じく、レンタルビデオ店でアルバイトをすることになる。
青年のファッションはいつもスウェットパーカーにスウェットパンツ。
特に家着という訳ではなかったのだが、当時の社会においては寝間着以外の何ものでもなかった。
アルバイトを始めて3日目のこと、オーナーに呼ばれたその青年は、突然の解雇を告げられる。
理由はもちろんスウェットのセットアップだ。
それから28年が過ぎ、青年はスタイリストとなり、少しずつではあるが、以前から興味のあった映像の制作に取り組み始めている。
今では街を行く多くの者がスウェットのセットアップをファッションとして取り入れている。