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連載【MONTHLY CCC SESSION】 VOL.09 トビー・フェルトウェル(C.E) 「ぼくらはそのやり方しか知らない」

デザインチームを公表しないアノニマスなブランドでありながら、着実にその存在感を高めている〈シティー カントリー シティー(City Country City)〉。そんなブランドの実態を探るべく、設立当初から親交の深いクリエイターたちへのインタビューを行う連載企画。謎のブランドの気になる中身を、あらゆる角度から迫っていきます。

今回登場するのは、デザインチームと旧知の仲という〈C.E〉のトビー・フェルトウェルさん。独自の視点でファッションを眺める彼の目に、〈シティー カントリー シティー〉というブランドはどのように映っているのか。その視線の先にあるものを追いかけます。


やりたいことがあれば自分たちでやればいい。

ー〈シティー カントリー シティー〉のことは、ブランドがはじまる前から、その構想をご存知だったようですね。

トビー:そうですね。彼らが前職の頃から知り合いで、〈C.E〉をスタートして間もない頃から、独立してなにかやりたい、と相談を受けていたんです。

ーそれに対してトビーさんはどんなことを伝えていたんですか?

トビー:ぼくは「絶対にやったほうがいい」と伝えていました。だって、自分たちがやりたいことをやったほうがいいでしょう? 彼らが在籍していたブランドは安定していましたし、全く別のことをしたらどうだろう? とアドバイスをした記憶があります。

ーなるほど。〈C.E〉がスタートしたのは2011年で、もう10年以上前から相談を受けていたんですね。

トビー:本業とは別のプロジェクトとしてやるので、全然いいとは思っていましたね。プレッシャーが少ないですから。〈C.E〉に関していうと、ブランドがうまくいくかどうかは全然未知数でしたし、いい反応を得られるかどうか分からない状況でスタートしたので、やりたいことがあれば自分たちでやればいい、あとは自然にオーディエンスが広げばいいんじゃないかと思っていました。そのために私たちができることは、服をつくる以外はそんなにないんですよね。

責任がまったくないから楽しい。

ー実際に〈シティー カントリー シティー〉がスタートしたあと、クリエイションをどうご覧になっていましたか?

トビー:こういうブランドになると思ってましたよ。とても彼らっぽい(笑)。型数が少なくても、どういうブランドなのかは洋服を見れば分かる。それはすごくプロフェッショナルだなって思いますよね。

ーこのブランドはデザインチームを公表しない、匿名性を貫く姿勢をキープしていますが、そうしたアプローチに関してはどんなことを思いますか?

トビー:いいと思います。それがいちばん楽ですから。フロントマンをやりたがる人もいるけど、ぼくも含めそういうタイプの人間じゃないですしね。売却前の〈ビリオネアボーイズクラブ〉にしても、ぼくがデザインしてるって誰も思ってないからこそ、好きなことをできてましたし。責任がまったくないから楽しいんですよ。

でも、フロントマンがいるほうがお客さんにとっては分かりやすい。ラグジュアリーブランドにしてもクリエイティブ・ディレクターがいますよね。だけど、その人は責任者であって全てのデザインを手がけているわけではなくて、裏方としてデザイナーが別にいる。ファッションにはその2つのタイプが必要だと思ってます。

友達と一緒にブランドをやろうっていうところがスタート。

ーいまの日本のファッションシーンについては、どんなことを思っていますか。

トビー:大きなブランドが出資をして、世界中のブランドをフックアップしているでしょう。日本のブランドもそれで持ち上げられたりしましたが、見ていてあまりいい気持ちはしないですね。

ーどうしてですか?

トビー:ぼくの若いときは裏原がおもしろかった、と言うと、おじさんみたいな話になってイヤなんですが、実際90年代やそれ以前のDCブランドの時代は、自分たちの力で環境をつくりあげていた。大手の資本に頼らずにいかに面白いことができるか、それが日本のファッションの持ち味だと思うんです。

有名なブランドに認められて、サポートを受けたいという気持ちは分からなくもないんですが、それは結局グローバルなファッションシステムの歯車のひとつとして取り込まれるだけですよね。そうやって欧米の著名なセレクトショップに扱われるようになるのが、いいことなのか? とは思っていますね。

トビー:ファッションはアートとは違って、洋服をデザインして、それを誰かに購入して着てもらうのが面白いところですし、そこにリアルがありますよね。

ーブランドとファンの関係性の中で生まれるものが重要であると。

トビー:街で自分の関わった服を目にするのが楽しい。そうやって少しでも街の景色を変えられるところに楽しさがあるんです。偉い人たちに反応してもらうよりも、自分たちが予想しない、全然関係ない人たちが反応してくれることが嬉しい。

ーそういう意味では〈シティー カントリー シティー〉も、〈C.E〉もインディペンデントを貫いていますよね。

トビー:それしか考えられないですね。だって、それが私たちのルーツですから。友達と一緒にブランドをやろうっていうところからスタートしているわけじゃないですか。Tシャツをつくって、それが売れたら「次はどうする?」って。

ーある種、バンドをはじめるのと似たような感覚がありますよね。

トビー:なにかを始める時に、バンドをやるか、Tシャツをつくるか、ZINEをつくるか、ダンスが上手くなるか、そういうことがスタートになりますよね。ぼくらはそれを昔に目の当たりにしているし、そのやり方しか知らないんです。

トビー・フェルトウェル
イギリス出身。1996年よりMo’WaxにてA&Rを担当。2003年より、〈BAPE〉や〈Billionaire Boys Club〉のアドバイザーとしてブランドに携わる。2011年にスケートシング、菱山豊とともに〈C.E〉を設立し、同ブランドのディレクターを務める。
www.cavempt.com
Instagram:@cavempt

Photo_Yuta Okuyama
Text_Yuichiro Tsuji

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