2024年の春、ファッションジュエリーに新たなコレクションが登場した。その名を、「エルメス・シュル・メール」という。
ファンならご存じのとおり、ベースは「シェーヌ・ダンクル」を思わせる。「シェーヌ・ダンクル」はシルクスカーフ「カレ」に情熱を注いだことでも知られる4代目のロベール・デュマが1938年に発表した〈エルメス(HERMÈS)〉初の金属だけでつくられたジュエリーである。ノルマンディの海岸で目にした、一艘の船をつなぎとめていた錨にインスパイアされたという。シェーヌ・ダンクル (Chaine d’Ancre)はフランス語で文字どおり “錨の鎖” の意となる。
「エルメス・シュル・メール」シリーズのブレスレット「シェーヌ・マイヨン」は、メゾンにとって重要なシンボルのひとつであるそのリンクをポリッシュ仕上げのステンレススティールとセラミックで生まれ変わらせた。つなぎ合わせる工程は、すべて手作業だ。
シルバーとブラウンがもたらすコントラストはモダンのひと言。伝統のブラッシュアップというお題に対するもっとも優秀な回答例だろう。
シュル・メール(SUR MER)は “海の上で” の意。オリジンを想起させるネーミングもいい。
ブレスレット「シェーヌ・マイヨン」 ¥369,600
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa