1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
新たにショップがすべて入れ替わり、遂に連載は13シーズン目に! トップバッターの第97回目は、注目エリアである世田谷線沿線は上町にある「Young」の石橋誠也さん & YOSUKEさん! 今回は、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
石橋誠也 & YOSUKE / Youngオーナー、スタッフ
Vol.97_カーハートのワークジャケット、ニューヨーク・ヤンキース&ニューヨーク・メッツのペインターキャップ
―そもそも「ヤング」はどういったコンセプトの古着屋でしょうか?
パーティー会場でいちばんイケている人たちが着ている服装がいちばん格好良く、そういったスタイルを提案するというのがコンセプトです。
―なるほど。90’sのTシャツに強いというイメージもあります。
そうですね。たしかに毎年、春夏はTシャツにすごく力入れています。それと同時にスポーツものも好きなので、秋冬シーズンはスポーツやアウトドアのアイテムに注力していて、ぼくら2人が好きで得意としているものを集めている感じです。
―では、「ヤング」らしさを言語化するとしたら?
ファッションの流行自体には敏感でいるようにはしつつ、その1歩先を行くというか「早いよね」って思ってもらえるようなアイテムを提案しています。
―そんな「ヤング」の考えるニュー・ヴィンテージの定義を教えてください。
いまはまだシーンの中心にあるような存在ではないけれど、手に入れて着込んでいく内にアジが出てきて良さが増していき、5年後10年後とずっと着続けていける。そういった古着が、ぼくらの考えるニュー・ヴィンテージです。
―で、今回紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテム。ひとつ目はワークジャケットですね。
カーハートのワークジャケット 2万5300円(ヤング)
胸に“365 SHIELD”と記されたオーバル型パッチが付いているので、ぼくらはそのものズバリ「365シールドジャケット」と呼んでいます。「365日守り抜く」という意味が込められていると思われる、まさに“ザ・ワークジャケット”然としたネーミングも最高ですね。
―ロゴなどは見当たりませんが、ノーブランドですか?
実はこれ〈カーハート(Carhartt)〉なんです。といっても表側にはロゴの類が一切なく、内側のタグにのみ表記されているのでパッと見は分からない。〈カーハート〉にも「シールドジャケット」というモデル名のアウターがありますが、それとはデザインも仕様も全くの別物。で、どこが“365シールド”なのかといえば…胸ポケットをご覧ください。
―あ、ゴアテックス®︎のピスネームが!
1998年製なので旧ロゴですね。さらに堅牢なコーデュラナイロン素材を使っており、着用者をダブルで守ってくれるタフな1着になります。ちなみに東海岸の冬は寒いってことで防寒面でもタフな仕様になっており、キルティングライナーは取り外し自在。
―そもそも、どんな用途を想定したアイテムなのかが気になります。
色々と調べてはみたんですが、分類的には「365シールド」というシリーズ(?)に属するジャケットという感じでよろしいかと。〈カーハート〉自体がそもそも日本でいうところの〈寅壱〉的な作業着ブランドですが、こちらはさらに輪をかけて質実剛健のワークウェアって感じで、防御力に特化した作業用として作られたモノだと思います。
―ディテールのひとつひとつが興味深いですね。
内側には所有者が自分の所属部署や名前を記入するネームパッチも付いていたりします。またネック部分にはフードが収納されているんですが、これがまんまゴアテックスのメンブレンそのままの質感で、そんなところも飾りっ気がなくて質実剛健。なんとなくですが、企業がユニフォームとして使っていた可能性もありそう。
―なるほど。とりあえず“渋い”ということは断言出来そう。こういった90‘sムードのアウターをどう取り入れるのがオススメですか?
そうですね。セオリー通りにワイドなデニムパンツとかに合わせるとコスプレっぽくなっちゃうので、そこからちょっとズラした方が面白いかなって思っています。例えば、ナイロンパンツでスポーティーなムードを取り入れてもイイし、原色系のカラーパンツに合わせるのも新鮮で面白いかもしれません。
―ふたつめはキャップ。
ニューヨーク・ヤンキースのペインターキャップ、ニューヨーク・メッツのペインターキャップ ともに参考商品(ヤング)
ペインターキャップです。その名の通りペインター(塗装職人)が被っているようなツバがあって頭頂部がフラットなデザインが特徴で、今回は“アメリカ東海岸”がテーマということで、ニューヨーク・ヤンキースとニューヨーク・メッツというMLBのチームモノを用意しました。
―スポーツモノが多いんですか?
ジャンルとしてはワークウェアがベースにあるので、実際にユニフォームとして使われていた企業モノが多いと思います。あとはアニメキャラや〈バドワイザー(Budweiser)〉などのビール系もよく見かけますね。アメリカでスポーツモノのキャップといえば、王道は〈ニューエラ(New Era®︎)〉ですが、そこから一歩ズラしたい方にオススメです。
―オフィシャルかどうかという点も気になります。
内側にMLBのタグもありますし、レジスターマーク(®️)も付いているので、多分そうだと思います。こういったスポーツチームのロゴデザインって、向こうではミリタリーモノだったり色々なアイテムに落とし込まれていて、探すと面白いんです。
―いわゆるワークキャップも同じ形状ですが、最近被っている人を見かけません。
たしかに最初は勇気がいるかもしれませんが、“キャップは似合う・似合わないではなく、被ったもん勝ち”だと思っているので、ぜひチャレンジしていただきたいなと。自転車に乗る際にサイクリングキャップ的なテンションで被るのもアリですし。
―秋冬シーズンにはやや軽めのアイテムに思えますが、そういった取り入れ方ならシーズン問わずいけそう。
スポーツウェアでもシャカシャカ系って秋冬のスタイルに取り入れづらい部分があるんですが、コレだったら足元はスニーカーではなくローファーを合わせるなんてスタイリングも良さそう。それこそ〈エメ レオン ドレ(Aimé Leon Dore)〉なんかがこの辺をサンプリングしていて、ルックもすごく洒落ていますよね。被り方次第で、洒落た感じにもイナタイ感じのどちらにも持っていけるので、被り方も含めてチェックしていただけると良いのかなと。
石橋誠也 & YOSUKE / Young オーナー、Young スタッフ
ライフスタイルに彩りを添える洋服を取扱う、世田谷区世田谷発のユーズド&ヴィンテージショップ。アメリカのカウンターカルチャーが背景にあるブランドを収集し、デイリーアイテムからデッドストックまで、現地から買い付けた一際目を引く雰囲気の良いアメリカ古着をメインに取り扱う。
インスタグラム:@young_setagaya
公式サイト:youngsetagaya.com