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【FOCUS IT.】ファッションから音楽へ。ユニバーサルミュージックがフミト ガンリュウを招聘し、本気でつくったファッションラインとは?

ファッションと音楽の蜜月な関係については、いつの時代も私たちの興味の的です。でも、ファッションブランドがアーティストとコラボする話はよくあっても、その逆はあまり多くは聞きません。ライブの物販で買えるオフィシャルTシャツもいいけど、ファッションアイテムとしてもっと気軽に着られるものがあったらいいのに。

そんな想いを叶えてくれるのが、世界最大級の音楽企業グループであるユニバーサル ミュージックです。同社が「より多くの人にアーティストの音楽を、そしてクリエイティビティを届けたい」という想いから、音楽アーティストのクリエイティブをファッションに昇華させたアパレルライン「ユーミュージック(U/MUSIC)」をローンチしました。

ファーストコレクションのテーマは“ロック”。ザ・フー、デヴィッド・ボウイ、パブリック・イメージ・リミテッド、ガンズ・アンド・ローゼズなど錚々たるアーティストたち約10組のアートワークをフィーチャーし、パターンは〈フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)〉のデザイナーである丸龍文人氏が担当。そんな本気度満点な要注目プロジェクトの仕掛け人たちへ話を聞いてきました。

Photo_Jin Yamamoto
Text_Sota Nagashima
Edit_Naoya Tsuneshige


PROFILE

山崎勇次

「International Gallery BEAMS」の元バイヤー・ディレクター。スマッシングパンプキンズのジェームス・イハとのコラボレーションブランド〈ヴェイパライズ(VAPORIZE)〉の設立などに寄与した。2021年にフリーランスとして独立し、ユニバーサルミュージックに参画。

PROFILE

堀内伸彦

主に海外アーティストのマーチャンダイジングを展開するBRAVADO事業部のマネジメントを務める。並行して、国内アーティストのリテール事業、や昨年(2023年10月)にオープンしたユニバーサルミュージックグループ初のリテールストア、UNIVERSAL MUSIC STORE HARAJUKUもリードする。

ー まずはこの「ユーミュージック」というプロジェクトをスタートさせた経緯から教えていただけますか?

堀内:海外アーティストのライセンス、つまり著作権や肖像権等々を使用したマーチャンダイジングを展開しているブラバドという事業部がありまして。10年以上そのライセンスを扱った展開をやってきていたのですが、どうしても商品の構成や作り方などはライセンシー様次第になってしまう。

そこを我々が自分たちで商品を企画し、ブランドとして出していくことで、自分たちが伝えるべきメッセージを、出すべきタイミングと出すべきアーティストの商品でプロデュースしていくことができる、というのが主な理由になります。

ー クライアントワークの制約から離れ、自社でもっと自由に商品を作れるようにしたかったということですね。

山崎:そうですね。それと、ファッションと音楽が繋がっているというのはよく言われる話ですが、元からファッション業界にいる私目線で言うと、繋がりきれてないところも多くあったんです。

アンダーグラウンドな表現としてだけでなく、オフィシャルな形式でもできることがもっとあるということを、2021年よりユニバーサル ミュージックとご一緒させてもらうようになってから学ばせてもらっていますね。

ー 改めて「ユーミュージック」のコンセプトやセールスポイントを教えていただけますか?

堀内:一番のセールスポイントは、やはり我々が契約を行っているアーティストのライツを使用したアイテムをプロデュースし、ユニバーサルミュージックからしか出せない商品を生み出せるところ。そして、ファッションを通じて世に出していくことで、アーティストについて広く知ってもらう機会を増やし、ファッションから音楽へという流れも作っていきたいと考えています。

また、ツアーやライブ会場などで売っているアーティストグッズは、その日にその場所で身に付けて楽しんだり、参加したという記念品などとしての需要が高いですが、それが非日常を楽しむためのものであるとしたら、「ユーミュージック」は、より日常的なファッションアイテムとして楽しめるもの、という立ち位置を想定しています。

ー ファーストコレクションはTシャツの展開になっていますが、日常的なファッションアイテムにするためにこだわった点を教えてください。

堀内:例えばボディのシルエットなど細かい点にもこだわっていて、今回は〈フミト ガンリュウ〉の丸龍さんにお願いし、パターンを引いていただいています。山崎さんにも参画していただいているので、しっかりとファッションの知見を散りばめた、音楽のマーチャンダイジングの進化系だと考えています。

ー 丸龍さんへは、山崎さんからの指名でお願いされた形でしょうか?

山崎:はい。元々私がバイヤーをやっていたこともあり、セールスの方などを知っていたという繋がりからお願いをさせていただきました。逆に聞いてみたいのですが、〈フミト ガンリュウ〉のボディに、音楽アーティストのグラフィックがデザインされた服と聞いて、どう感じますか?

ー すごく気になりました。感度の高い若者から、服好きの少し年配の方にも刺さりそうだなというイメージがあります。

山崎:まさにその通りの狙いです(笑)。〈ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン〉でパタンナーとしての経歴も持つ、プロ中のプロである丸龍さんなので、いま言っていただいたような方々にもアプローチできるといいなと考えています。

堀内:丸龍さんにはさまざまな角度からアイディアを出していただいて、そのなかからこれが一番ベーシックに成り得るのではないか、というものを突き詰めました。

ー 実際に制作はどういったやり取りで進められたのでしょうか?

山崎:ボディのアイディアは丸龍さんに大きな部分をお任せし、グラフィックの選定や位置、大きさなどは全てこちらで考えています。制作時に丸龍さんからは、音楽軸での世界観として“セディショナリーズ”というキーワードもよく出てきました。

堀内:あとは、縫い目がインサイドアウトになっていたりします。インサイドアウトの仕様は、ヒップホップのカルチャーから生まれたと言われているので、音楽的な意味も込めて取り入れています。

山崎:そういったデザインの歴史も若者に知ってもらいたい、という丸龍さんの思いが込められているんです。

ー Tシャツのボディ自体に音楽的なカルチャーも詰まっているのは流石ですね。グラフィックには錚々たる有名アーティストたちのアートワークが使用されていますが、いわゆる代表作というよりも、あまり知られていない渋いグラフィックを採用している印象がありました。その辺りも狙いの一つでしょうか?

堀内:そうですね。一般的に取り上げられるものだけでなく、我々ならではのアプローチを意図しているので、目新しく見えたりとか、アーティストのまた違う側面を感じていただけたりするのではないかと期待しています。

山崎:例えば、このデフ・レパードの犬のアートワークとか、純粋にファッションとして可愛くないですか? バンドTシャツって、どうしても好きなアーティストのものだけを買いがちですけど、ジャケット買いのように、そのアーティストを知らなくてもグラフィックが可愛いからという理由で気軽に購入してもいいと思っているんです。

そこから興味を持ち楽曲を聴いてみてもらえたりしたら、我々のやっていることは正解なのかなと思います。

堀内:音楽会社での目線にこだわりすぎると、マーケットに求められるものと違うものになってしまう恐れもあると思うのですが、そういったところを山崎さんのファッション的なフィルターにかけて選定していったので、バランスがよくなったんじゃないかと思っています。

山崎:少し話は逸れますが、ファッションショーの会場に行くと、コレクションのテーマに合うものやデザイナーが好きな音楽が流れていますよね。そういったショーのレポートに音楽のことは書かれてないことが多いんですよ。その場所の空気感を作るのもクリエイションなのに、何で書かないのだろうと。

そういうところも含め、音楽とファッションが繋がっているとよく言われますが、もっとできることがあるだろうという思いが自分の活動の軸にもなっていますね。

ー 今回のコレクションでフィーチャーしたアーティストの中には、若い方だとあまり馴染みのないアーティストもいるかと思いますが、そういった方々にこそ手に取ってもらえると良いですね。

堀内:そうですね。若年層の洋楽離れというのは音楽業界の中でも深刻ですし、我々が解決していかないといけない命題だと思っています。そういったことに一石を投じるためにも、ファッションを通じて、アーティストのクリエイティブや音楽に触れていただく機会を増やしていくというのは、音楽業界としても意味深いものになるのではないかと思っています。

今後の展開としては、Tシャツ以外のアパレル、ジャンルもポップスやヒップホップなどと多岐に渡り展開していく予定なので、期待をしていていただきたいです。

INFORMATION

Universal Music

Universal Music Group N.V. 公式サイト
ユニバーサル ミュージック合同会社 公式サイト
BRAVADO JAPAN 公式サイト

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