ブラックカルチャーに魅了され、その情熱を〈ラムロフ(Lamrof)〉というブランド、そしてアフリカンジュエリーレーベル「AFLOGICAL JEWELRYS」へ惜しみなく注ぎ込むファッションデザイナー・シャーリーこと坂本大輔氏。
さらに近年では、以前より運営していたアメリカのミッドセンチュリー期のアイテムを中心にした雑貨レーベル「EARTHY ANTIQUES」もアフリカ雑貨をメインに方向転換させるなど、さまざまな角度から自身が愛するブラックカルチャーを表現しています。
“アフロ〇〇”とは、アフリカ由来の、という言葉。そういう意味では坂本氏は、日本人でありながらアフリカにルーツを持つ“アフロジャパニーズ”というわけです。
この連載では、坂本氏が実際にアフリカを中心とする世界各国を放浪するなかで見てきたヒト・モノ・コトを彼のフィルターを通してご紹介。彼の目に映るブラックカルチャーとは、そしてそれをどのようにプロダクトに落とし込んでいるのか、ありのままの坂本氏と彼が魅了されたブラックカルチャーのリアルを、実際の写真と坂本氏の生の声でお届けします。
Photo_Sha-Le(Daisuke Sakamoto)
Edit_Naoya Tsuneshige
PROFILE
2022年よりファッションブランド〈ラムロフ〉をスタート。ジャズやソウルやレゲエなどのブラックミュージックを好み、アフリカ系アメリカンをはじめとするブラックカルチャーの歴史と文化に敬意を払ったコレクションを展開する。2024年からはアフリカンジュエリーレーベル「AFLOGICAL JEWELRYS」、アンティーク雑貨レーベル「EARTHY ANTIQUES」も始動。どっぷりとブラックカルチャーに傾倒し、それをより多くのひとに届けるために日々奮闘中。根っからのサッカー好きでもある。
Sha-Le Instagram:@8_shale_8
Lamrof Instagram:@lamrof_official
Aflogical Jewelrys Instagram:@aflogical_jewelrys
EARTHY ANTIQUES Instagram:@earthy_antiques
第二の故郷、セネガル。
スイスとベルギーでのトランジットを含む37時間の大移動を経て、セネガルのダカール国際空港に到着した坂本氏。1年ぶりだというセネガルについて、そもそもセネガルに訪れたきっかけについて聞いてみました。
「ぼくにとってセネガルは第二の故郷のような感覚。実は、日本から約14,000km離れたこのアフリカの土地にホストファミリーが居るんです。元を辿ると、日本在住のセネガル人のファッションモデル・シメールと、日本で5年前くらいから意気投合して仲良くしていたのがきっかけですね」
坂本氏と、日本在住のセネガル人モデル・シメール。
「アフリカに行きたいというぼくの為にシメールが奥さんを紹介してくれて、現地に住む奥さんファミリーに迎え入れてもらったんです。そして彼らが僕に”バンバ”というセネガルの名前を付けてくれて、本当の家族のように接してくれたのが始まりです。日本でもあだ名が”シャーリー”なのでややこしいんですけどね(笑)」
そんな家族との再会で胸が躍っていたという坂本氏。今回はシメールといっしょではなく、1人でのセネガル。再会のシーンをこんなふうに振り返ってくれました。
「空港までブラザー達が迎えに来てくれて、ホストファミリーと感動の再会。皆が心底喜んでくれているのを感じて、この時点でもう来た意味があるなって思えました。
さっそく安定のセネガルスタイルのディナーを用意してくれて、再会の喜びと懐かしい味に浸る最高の時間。もちろん言葉が全部わかるわけではないけれど、このファミリーとは心で繋がれている気がする…。そんな幸せな気持ちのまま、初日はゆっくり眠りにつきました」
クレイジージャパニーズ。
2日目からは旅の目的のひとつでもあるバイイングへ。ジュエリー、アンティークマスク、アンティークアフリカン雑貨…、4日連続で朝から晩までマーケットに入り浸りだったようです。
「セネガルのダカールに関しては、国の雰囲気も行きたいマーケットの場所も、前回に長期滞在したおかげで大体頭に入っています。そのときに現地で情報収集してローカルなマーケットをチェックしていたので、今回もひとまずそこから周ることに」
「想像通りかもしれませんが、アフリカでの値段交渉ってやっぱりとても難しいんです。無論、アフリカには値札なんて概念はないし、交渉あるのみという感じ。でも自分にはそのスタイルが合ってるんですよね。一口にアフリカといっても国によってもそのルールはさまざまなんですけど、自分で胸を張って言える程、この交渉に関してはプロフェッショナルだと思っています」
「お前は『クレイジージャパニーズだ、俺を殺す気か!』とジョークを言わせるくらい、懐に入って根勝ち出来る事も多いんですよ(笑)。とはいえ慣れていても本当に疲れる。スムーズに気持ち良く買い物出来ることなんてありません。アフリカの人達のエネルギーって尋常じゃないから、常に120%で向き合わないといけない。正直かなり疲れるんですけど、『ああ、帰って来たなぁ』とどこかバイイングを楽しめている自分もいますね」
そして、なかにはそんな坂本氏を覚えている現地のひともいるらしく、こんなエピソードも聞かせてくれました。
「1年前ドレッドヘアーだったぼくが坊主になったにも関わらず、マーケットのディーラー達に『バンバ! 覚えてるぞ! 元気だったか!』と声を掛けられまくりました。これは嬉しかったですね。ローカルすぎるマーケットというのもあって『日本人なんかお前が初めてだ』と言われる事もしばしば。とはいえ覚えてくれていて、再会を喜んでくれて、胸が躍りましたね」
前回セネガルを訪れた際の坂本氏。ドレッドヘアーから坊主へ、劇的な変化を遂げたにも関わらず、現地のひとたちに覚えられていたよう。
実際にセネガルのマーケットで買い付けたアフリカンジュエリーやアンティーク雑貨。
現地の人とのビジネスを通じ対話をする中で、その枠を超える人と人の良い関係を築ける事がたまにあるのも異国での買い付けの醍醐味。地球の裏側どこまで行っても同じ人間同士、分かり合える事はあるんだと実感した坂本氏。
「序盤から飛ばしすぎなくらい大満足の量と質の買い付けができました。今回のアフリカ旅はかなり長期滞在なので、まずはいい景気付けになりました。何度訪れても最高のアンティークやジュエリーに出会えるこのアフリカという場所での買い付けは、ぼくにとって言葉には代え難い刺激的な時間だと感じます」
何度も訪れてしまう理由。
滞在6日目。この日は買い付けは一旦休みにし、セネガルのとある村へ行った坂本氏。ホストファミリーのところで働いている女の子の故郷の村。そこに一緒に行こうと、言われるがまま早朝から車に乗ること数時間…。そこには見たこともないような大自然が広がっていたようです。
「ぼくが滞在しているセネガルの首都・ダカールとは何もかもが違う。日本人がテレビなどで見た事があるアフリカのイメージという表現が正しいのか、とにかく自然の中で放牧と農業で生計を立て、手作りの藁の家に大家族で住んでいるという暮らし。そこは日本の暮らしとは本当にかけ離れた世界線の村でした」
「ここでの数時間の滞在の中でこの村に住む家族の逞しさ、混じりっ気のない子供達の笑顔、広大な自然と美味しい空気、何もかもに面を食らった自分がいました。言葉にするのは勿体無い感覚で、自分の人生で此処に来れて良かったと心の底から思えた貴重な時間でした。帰り際、お父さんに『Don’t forget』と言われたんです。必ずまた来る事を約束し、この日は帰路につきました」
次回はセネガル編の後編。坂本氏はさらに辺境の地へ歩みを進め、〈ラムロフ〉の次シーズンのリサーチに向かったようです…。次回はどんな旅が待ち受けているのか、お楽しみに!
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