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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.103 “そろそろ復刻されるかもしれない” ハイエンドラインの90’sビーン。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

新たにショップが全て入れ替わり、13シーズン目も折り返し。第103回目は、古着激戦区・高円寺で幅広い層から支持を集める「Mr.Chubby」のYUTAさんの2巡目! 今回は、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


YUTA / Mr.Chubby オーナー
Vol.103_エル・エル・ビーン オールコンディションのフーデッドインサレーションジャケット&マウンテンパーカ

ーでは、今回紹介いただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?

前回もお話ししたようにぼく自身がアウトドアものが好きということで、今回はファンも多い〈エル・エル・ビーン(L.L.Bean)〉の中でも、周囲とは被りづらい“オールコンディション(ALL CONDITIONS)”ラインに注目してみようかなと。これまで全然注視していなかったんですが、一部では既に注目されるようになってきているので、ここから一気に知名度を高めていく予感がしています。

ー〈エル・エル・ビーン〉だと、過去に「シエスタ(SIESTA)」の青木さんが“アウトドアーズ(OUTDOORS)”のアイテムを取り挙げていましたが、こちらがどういったラインなんですか?

名前からも一目瞭然ですが、〈ナイキ(NIKE)〉でいうところの“ACG”的なラインで年代的には90年代。当時のビーンの中でも、より機能性に特化したハイエンドラインに分類されていたようですが、残念ながら4~5年程度の期間で終了してしまったみたいですね。ゴアテックスやプリマロフトといった当時最新の機能素材を採用していたため通常ラインに比べると値段も高かったでしょうし、それが理由であまり流通しなかったのかなと。

ーたしか〈エディー・バウアー(Eddie Bauer)〉にもそんなラインありましたよね。

1996年から数年間だけ展開されていたハイパフォーマンスラインの“イービーテック(EBTEK)”ですよね。ノリ的には近いと思います。ただ正直、あまり格好よくないモデルも多く、その中でもクオリティ、デザインともに良いと思えるモデルを今回は用意しました。まずはこちらのフーデッドインサーレーションジャケット。要は中綿入りのフーデッドジャケットです(笑)。

エル・エル・ビーン オールコンディションのフーデッドインサーレションジャケット 参考商品(ミスターチャビー)

ーなんとも良い雰囲気じゃないですか。

これの元ネタ的モデルが80年代に通常ラインからリリースされていて、こちらのフーデッドジャケット以外にもベストとプルオーバーを展開。カラーはグリーンとブルーが用意されていました。細部のデザインもまったく一緒なので、そこからインスパイアされたモデルではないのかなと。

ースライダーがグルリと回転して表裏で使えるようですが、こちらはリバーシブル仕様でしょうか?

ポケットの仕様やフードのストラップ、内側にプリマロフトのタグが付いていることから察するに、リバーシブルではないものの、アウターとしてもライナーとしても着用可能なアイテムだった可能性はあります。

ーで、2着目はマウンテンパーカ。非常にクールな面(ツラ)をしておりますが、これも同年代ですか?

多分そうだと思われます。ネームタグを見ると80年代のそれなんですが、デザインは80年代と90年代のニオイが両方するというのも興味深い1着です。あ、ちなみにゴアテックスも搭載済みです。

エル・エル・ビーン オールコンディションのマウンテンパーカ 参考商品(ミスターチャビー)

ーたしかにこの感じで90年代後半のモデルだと、ジップの引き手にラバーパーツを使っていてもおかしくはないけれど、決してそんことはなかったり。

その一方で、ハンドポケットのフラップに付いたタブや前立てのウィンドシールド、メッシュの内ポケットにシームテープ、袖口のベルトに配されたラウンド型の面ファスナーはしっかり90年代ムード。本格的なハイテクに向かっていく過渡期だったからでしょうが、このミックス感が面白くないですか?

ー全体の雰囲気は、なんとなく〈パタゴニア(Patagonia)〉の名作「スーパーアルパイン」にも似ています。

ですね。ただし、こちらのシェル素材はナイロン100%のリップストップ。正直生地の風合いに関してはパタよりもこちらの方が上かも(笑)。以前、同じデザインで別色を販売したこともありますが、やっぱり黒が個人的には1番好きっスね。ちゃんと他のブランドを研究した上で、自分らのオリジナリティを追求したモノづくりをしていたんだなっていうのが随所から垣間見えます。

ー“オールコンディション”は要チェックですね。

街で着るというよりはアウトドア寄りでしっかり機能性に特化して作られているのに、デザインにはオシャレさも感じられる。それが現行ではなく古着で見つかる、しかもオールドではなくニュー・ヴィンテージ的な90年代モノで。というのがポイントです。

ーまさに“イマの気分”ってやつですね。

最近、自社のアーカイブを復刻する“ジャパン エディション(JAPAN EDITION)”から名作がアップデートされてリリースされていますが、そろそろこの辺もフックアップされそうな予感がしていて。個人的にはハイエンドなのにニッチという立ち位置が好きだったので「あまり注目されずにいてほしい」という気持ちもありますが、次なる一手として掘ってもらえれば、ビーンの新たな魅力や楽しみ方が見つかるのでは?

YUTA / Mr.Chubby オーナー
相方のKAZUMAとともに2021年、古着激戦区として知られる高円寺に「Mr.Chubby」をオープン。アメリカ、ヨーロッパを中心に買い付けられるアイテムは、ヴィンテージやレギュラーといった“いわゆる古着”のほか、ドメスティックブランドやメゾンブランドなど新旧問わず、自分らのアンテナが捉えた良品揃い。オリジナルのウェアラインも展開し、第5弾アイテムのバッグも好評。
インスタグラム:@mr.chubby.clothing

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