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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.108 “一部界隈でのみ盛り上がっている” パタゴニアのマイナーアウター。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

新たにショップが全て入れ替わり、始まった14シーズン目! 1巡目のラストとなる第108回目は、2度目の登場となる「テンポ(tempo)」のブンヤさん! どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


ブンヤ / tempo オーナー
Vol.108_パタゴニアのキルティングジャケット&トランスウォーマージャケット

ーお久しぶりです! シーズン5以来、2回目のご登場! あれからヴィンテージ・古着を取り巻く世の中の事情も大きく変化しておりますが、「テンポ」的にはいかがでしょうか?

いわゆるトゥルー・ヴィンテージは当然ながら、以前紹介したような00年代の〈ステューシー(STUSSY)〉のように近年のアイテムでも、古着として十分成立するように人々の意識が変わったようには感じます。

ー若い世代の間で、「〜〜の〜〜がイイ」ではなく、もっと大きな括りで“古着=オシャレ”と言われるようになってから、その辺の感覚が大きく変わりましたよね。

ですね。でもその一方では、キャッチーなロゴものだったりといわゆるブランド名が立っている方が反応も良かったりして。

ー“飽きたり、値上がりしたら売る”を前提に買っているからという理由もあるようで…。

だとしたら、すごく寂しい話ですよね。何者でもないけど面白い服って、まだまだ沢山あるんですけどねぇ…というワケで今回は、前回の〈ステューシー(STUSSY)〉と同じ位、ぼくが好きなブランドである〈パタゴニア(Patagonia)〉のアイテムを紹介したいと思います。

ーそれこそ、古着好きならずとも誰もが知っているメジャーブランドという印象がありますが…?

その通りです。なので“まだ一部でしか盛り上がっていないパタゴニア”がテーマです。1着目はこのキルティングジャケット。名作「ナノパフジャケット」よりもクラシカルな匂いのする縦型キルティングが特徴。ただし年代もモデル名も不明なんですよね…。

パタゴニアのキルティングジャケット¥27,500(テンポ)

ーえ?

〈パタゴニア〉の場合、通常はタグを見れば年代もわかるんですが、これにはその記載もナシ。タグの雰囲気から2000年〜2010年の間のモデルであることは間違いないと思うんですが。

ー名前も分からないけれど、なんとなく面白いということですね。他にはどんな見どころが?

あとはネームタグが袖に付くっていうのもポイント。2004年頃に登場した通称「ニューシェルドシンチラ」でも、この位置にタグがあったので同年代なのではないかなと。以前、色違いでネイビーは見た覚えがあるので、ブートではなくちゃんとリリースされていたモデルであることは間違いないのですが…。

ーまぁ、名前も周知されていないようなモデルのブートなんか作らないですよね(笑)。何かしら元ネタもありそう。1960年代〜80年代の「シアーズ(SEARS)」とか、こんなのがあったような…。

もしくは、このキルティングのピッチ幅的にスキージャケットとかもあるかも。ディテールとして面白いのがジップ。回転ジップなんですよコレ。しかも内側のメッシュのジップポケットがあって、ちゃんとデザイン性も備わっていて。とはいえ縫製的にもリバーシブルとは考えづらく…でも実際にひっくり返してみると、これはこれでアリ(笑)。実に摩訶不思議な1着です。

このモデルのこと、よく知ってるよ! という方がいたら、ぜひご連絡ください!(笑)

ー(笑)。そして2着目ですが、こちらもモデル名は不明ですか?

いえ、こちらは「トランスウォーマージャケット」というモデルになります。同年代で、こういったワークジャケットライクなディテールのモデルが何型かリリースされていまして、「ダブルデューティージャケット」というモデルなんかは、〈カーハート(carhartt)〉の「デトロイトジャケット」に似ているということから、近年人気で価格も高騰しています。

パタゴニアのトランスウォーマージャケット¥44,000(テンポ)

ーそれと同じノリで、かつネクスト感があるモデルということですね。どんな特徴があるんですか?

表地はコットンのような風合いですがナイロン100%。裏地には細畝のコーディロイ生地が貼られていて、背面にはゲームポケットのようなバックポケットが。これは左右で分割されていて、なんとなくハンティングの匂いがします。

リリースされたのが2002年スプリングシーズン。多分この年のみのモデルで、若干デザインが異なるウィメンズタイプと袖ナシのベストタイプもあります。

ー〈パタゴニア〉もひと昔前まで、メジャーモデルのみが高騰化しているというイメージでしたが、最近は状況が変わってきているんでしょうか?

そうですね。やはり〈パタゴニア〉のアウター=シェルジャケットやフリースのイメージが圧倒的に強かったんですが、それ以外にも注目が集まるようには変わってきています。今回紹介する2つのアイテムでいえば、“ソレではない=周りと被らず個性が演出できる”というのがウケている1つの要因なのかな、と。どちらもまだ“一部”でしか盛り上がっていないので、いまの内にチェックしておくとイイんじゃないでしょうか。

ブンヤ / tempo オーナー
「原宿シカゴ(HARAJUKU CHICAGO)」下北沢店から古着屋としてのキャリアをスタート。その後、旅に出たり他の古着屋で働いたりと紆余曲折を経て2016年、明大前に自身の古着屋「テンポ(tempo)」をオープンし、2022年に下高井戸に移転。90年代〜2000年代のグッドレギュラーを、ちょうどよいプライスで手に入れたければココに行くべし。
インスタグラム:@tempo.2016

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