HIP NEWS #04
2020.8.13 UP
Text_Shinri Kobayashi
Edit_Shun Koda
ファッションには華やかなイメージが付きまといますが、決してそれだけではありません。服そのものだけでなく、着るひとと周りの関係性、文化や歴史的背景、社会的地位などさまざまな周辺環境を内包しています。服や着ること、ファッションについて考えることは、服を着る生き物である、私たち人間の営みについて考えることに他なりません。
Vetements(デムナ・ヴァザリア) ショー・ヴィデオ 2017年秋冬 Courtesy of Vetements
ファッションをテーマにした展覧会「ドレス・コード? —着る人たちのゲーム」が「東京オペラシティ アートギャラリー」で開催中です。
本展では、京都服飾文化研究財団(KCI)が収蔵する衣装コレクションを中心に、ファッションとアートのほか、映画やマンガなどに描かれた衣装も視野に入れながら、300点を超える作品で構成しています。そして、現代社会における新たなドレスコード、私たちの装いの実践(ゲーム)を、13のキーワードで見つめ直します。
都築響一 《ニッポンの洋服》より《鶴と亀》 写真提供:小林兄弟 2013–2019年 ©鶴と亀
その13のキーワードが、哲学的かつ社会学的で、ファッションをしっかりと考察したいひとには何かしら響くのではないでしょうか。
00. 裸で外を歩いてはいけない?
01. 高貴なふるまいをしなければならない?
02. 組織のルールを守らなければならない?
03. 働かざる者、着るべからず?
04. 生き残りをかけて闘わなければならない?
05. 見極める眼を持たねばならない?
06. 教養は身につけなければならない?
07. 服は意志をもって選ばなければならない?
08. 他人の眼を気にしなければならない?
09. 大人の言うことを聞いてはいけない?
10. 誰もがファッショナブルである?
11. ファッションは終わりのないゲームである?
12. 与えよ、さらば与えられん?
では、本展の見どころを大きく5つにわけて紹介します。
Anrealage(森永邦彦) 2011年秋冬 ©ANREALAGE CO., LTD
一つ目は、ファッションを通じてひとや社会の関係性を問いかけます。服装が持つ、広義の意味での“ドレス・コード”をめぐって繰り広げられる、私たちの装いの実践、着るひととそれを視るひととの関係性、さらには衣服を通じた私たちと社会とのつながりについて問い直します。
Rogers Peet Company スーツ 1900年代 京都服飾文化研究財団所蔵 撮影:畠山崇
二つ目は、ファッションのさまざまな実例を紹介しています。たとえば、男性のスーツや制服から、 シャネル・スーツなどの普遍性を備えたスタイルやアイテム、数々の人気ブランドが手掛ける最新のスタイルまで、、ファッションに見られるさまざまな装いの実例を紹介します。
ハンス・エイケルブーム 《フォト・ノート 1992–2019》 1992–2019年 ©Hans Eijkelboom
三つ目は、着ることの(不)自由さを伝える現代美術作品を多数展示しています。たとえば、ハンス・エイケルブームによる大量のストリートスナップは、ファッションにおける他者へ/からの眼差しを、石内都が撮る古着の写真は着用者の人格や記憶を、それぞれ浮き彫りにします。その他数多くの作品を通じて、着ることを深く掘り下げていきます。
マームとジプシー 《ひびの、A to Z》2019年 ©Mum&Gypsy photo by Sayuki Inoue
四つ目は、演劇や映画、マンガを通して、キャラクターと服装のかかわりを考察しています。文学や演劇、映画、マンガなどでは、服が登場人物の性格や行動、感情を表す要素となるなど、物語を進める重要な役割を担うのは周知の通りです。そしてそれは、フィクション(虚構)の世界にとどまらず、ヴァーチャル(仮想世界)が日常化した現代においても、リアリティを強く感じさせます。
五つ目は、東京展のみの展開についてです。本展は、2019年8月の京都国立近代美術館、12月の熊本市現代美術館を経ての東京開催です。東京展では〈ノワール ケイ ニノミヤ〉(2020年春夏)や〈コム デ ギャルソン〉(2016-17年秋冬)の衣装作品が初出品。また、青山悟、ハンス・エイケルブームの作品やマームとジプシーのインスタレーションも、東京展独自の展示方法で採ります。
日々身につけている服というもの、着るという行為について今一度さまざまな角度から観察し、考えてみること。かっこいいとかっこよくない、おしゃれやダサいといった二元論に収約されないファッションの醍醐味を改めて味わえる展覧会は、8月末日までの開催です。
会期: 〜 8月30日(日)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
時間:11:00〜19:00(最終入場は18:30まで)事前予約制
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
入場料:一般1,200円/大・高生800円/ 中学生以下無料
*同時開催「project N 79 糸川ゆりえ」の入場料を含みます。
*障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。
*割引の併用および入場料の払い戻しはできません。
お問合せ: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
「オペラシティ」ウェブサイト
特設サイト
Text_Shinri Kobayashi
Edit_Shun Koda