最近はどのように過ごしていますか？

N.K ちょうど数日前にアルバムの納品が終わったばかりで、今はメンバーと「今後、どういう風にライヴを作っていこうか」という話をしています。今はまだ、いつからライヴがスタートできるか分からない状況ではありますが、もしかしたら予定されているライヴがすべて開催できる可能性もあるかもしれない。なので、早め早めに準備して、その上で余裕ができるならクオリティを高める作業をしていこうという感じですね。

ラジオでは5月上旬までちょうど制作期間だったこともあり、あまり影響はないとも話されていましたね。

N.K そうですね。制作スタイルや活動拠点が東京である点などは変わらず、今まで通りかなって。

WONKの制作スタイルは以前から分業制とのことですが、実際どんな感じで作品を作っているんですか？

N.K 僕以外の3人がデモを作ってきて、それを「ここにこの音を入れようか」とか「どのようなアレンジにしようか」っていうアイデアを持ち寄って、4人で相談しつつ、そこにメロディをつけて僕が歌詞を乗っけて、最終的なMIX＆マスタリングをベースの井上（幹）がやってというのが、基本的な一連の流れになります。

「分業制というスタイルだからこそ生まれるものもある」とも話されていました。

N.K そうですね。自分たちが予測できないところでの発見はやっぱりあります。“毎回、想像を超えるような（ものができあがってくる）可能性がこの4人だから常にある”という共通認識をメンバー全員が持っているとはいえ、自分一人でできる可能性の枠を超えたところで、常に（音楽が）できあがってくるので、そういう意味では「おぉ、こうなったか!!」っていう驚きは毎回ありますね。

なるほど。ラジオでは海外のアーティストとコラボしたいと話されていましたが、これに関しては音楽制作だけではなく様々な表現方法がありそうですよね。

N.K そうですね、もうメチャメチャ考えていますよ。音楽だけではなく、海外の映像作家だったり、クリエイターの方々とはあらゆる形でコラボしたいと思っています。それは音楽だけに留まらず、映像作品を作るでも服を作るでもいいだろうし、それこそそれが料理でも全然構わないですしね。僕らは音楽一本で生きていこうと思っている人間ではないので、何か“新しい、僕らの思う格好いいもの”を作ることができるならば、それがどんな形でもやりたいなと思っています。

海外でいえば、ジミ・ヘンドリックスは、常にバックステージにジョニーウォーカーを準備させていたりと、ジョニーウォーカーと音楽は切っても切り離せないもの。長塚さんはウィスキーに合う曲というのはどんな曲だと思いますか？

N.K ゆったりと聴けるようなテンポの曲を選ぶことが僕は多いですかね。また、ピート香やスモーキー感に合うまろやかな音色が、味わいにも合うのかなって。よく、ドラマやアニメなどの物語のなかで、登場人物がバーの止まり木でウィスキーのグラスをひとり静かに傾けている場面ってあるじゃないですか。ああいうシーンではジャズがBGMに流れていたりするけど、僕はあながち間違ってないと思うんですよ。ウッドベースやピアノのサウンドや、昔のレコードにあるようなカリカリした音が醸し出す深みが、ウィスキーの荒々しい部分や世界観にもリンクするというか。それでいえばクラシックなんかもそうですね。

プライベートではジョニーウォーカーのブラックラベルを愛飲されているそうですが、飲み方はストレートが多いんですか？

N.K いえ、ブラックラベルでも贅沢にハイボールにしちゃったりしますよ。でもたまにはキンキンに冷やしたチェイサーを準備して、口の中を冷やしながらストレートで飲みますけどね。

料理人としての顔を持つ長塚さんですが、料理と音楽の共通性についてもよくお話しされていますよね。

N.K 料理を1品作ることって、曲を1曲作ることとすごく似ていると思っていて。ミュージシャンはサンプリングするなり、楽器を奏でるなりして集めた、あらゆる音を使って1つの楽曲という完成品を目指す。一方で料理人も、あらゆる食材や調味料を使って一皿の完成品を目指す。例えばコースを組むっていうのも、まず”今回はこういうテーマ”と決めたら、それを伝えるためには、これだけの内容と品数が必要になるので、じゃあ前菜ではこういう品を作ろう。で、これを食べてもらったらお口直しを出して、メインディッシュがあって、最後にデザートがあってという感じで。歌詞を書いて曲を作って、それを集めて曲順を考えてアルバムの世界観を作っていくということと、すごくリンクすると思っています。

そうして完成したのが、6月17日（水）に配信リリースされる4thフルアルバム『EYES』ですね。

N.K そうですね。今作はコンセプトアルバムなので、最初から最後まで“この曲ではこれを伝えたい”というのがそれぞれの楽曲ごとに場所で決まっていて、それがある上でみんなで肉付けしていったんですが、それもコースを組むのと同じプロセスだなって。今回改めて感じました。

なにせ新曲10曲を含む全22曲ですから、腹がはち切れるくらい満足感のあるコースに仕上がっているんじゃないかなと。

N.K あははは（笑）。いやぁ……なんで、こんな曲数になったんですかね？　僕ら自身も完成した時に「アレッ!?」って思いましたし、危うく1枚のCDに収まる世界最長のアルバムになるところでした（笑）。

とにかく聴いてもらいたいものを詰め込んだみたいな（笑）。

N.K スペインに「エル・ブジ」というあらゆる雑誌で世界No.1レストランと呼ばれていた店がかつてあって、その閉店レセプションパーティーには多くの著名人が招待されていたそうなんですが、その来場者数と同人数のシェフが料理を提供し、しかも料理の品数も40数品出たらしいんですよね。その気持ちがなんか分かるなぁって、今回思いました（笑）。とにかく満腹になってもらえるんじゃないかなって。

乞うご期待！ジョニーウォーカーのボトルにも前を向いて歩いている人が描いてありますが、来月に30歳を迎えるにあたって“自分の可能性を広げていく”ために、これからやっていきたいことがあれば教えてください。

N.K 誕生日の翌日に配信がスタートするので、プレゼント代わりに完全予約限定生産盤（アートブック＋CDアルバム）を買ってもらえると嬉しいですね（笑）。音楽に関しては、自分自身でできる表現の幅をもっと広げたいというのが１つあるので、歌のクオリティはもちろん、もっと楽器を扱えるようになりたいし、もっと作曲をできるようになりたいし、ソロ作品だって出したい。あとは音楽以外での自分自身の幅ですね。食の世界でも新たな味に挑戦していきたいし、最近歌詞を書いていることもあって、文章を書くということにも興味がありますし。そうやって僕が今、好きでやっていることをドンドン形にしていって外に広げていくっていうのを、30代の間にやっていきたいと思っています。