2020.8.21 UP
Photo_Shinsaku Yasujima
Text_Shinri Kobayashi
Edit_Shun Koda
海人さんの最近のトピックスといえば、東京と真鶴の二拠点生活かと思います。いまは行き来されてらっしゃるんですか?
山本 そうですね、真鶴と東京に半々くらいでいますね。真鶴は東京から車で一時間半ぐらい、電車だったら1時間かからないぐらいなんですよ。
どうして真鶴だったのでしょうか?
山本 ここ1年くらいで環境の変化があって。それで家具付きの住まいを探して、人に紹介してもらって真鶴に住むようになりました。真鶴では、デビット伊東さんと一緒に仕事してて、移住者を増やすような取り組みとかやってますね。
いきなり面白いですね(笑)。
山本 真鶴は人口が8,500人ぐらい。そのうち25才以下は、250人ぐらいしか住んでいないという、日本の縮図みたいなところで。その町おこしをデビット(伊東)さんとやってます。
ほかには、どんなお仕事をされていますか?
山本 いろいろですね。玩具メーカーからのお話でアニメとファッションをつなげるようなモノをつくる仕事だったり、いま手伝ってる歌舞伎町のお店が今度新しいお店をつくるからその内装を手がけたりとか。あとは、京都に新しくできたエースホテルで地域の人が集まれるようなイベントを何かやってくれと頼まれていて、NHKの「のど自慢」のエースホテル版みたいのを提案してみたりとか(笑)。
アパレルの〈サノバチーズ〉やサンドイッチ店「BUY ME STAND」や蕎麦バー「Sober」などいろいろと手がけられていますが、アイデアがぽんぽん湧いてくるから、周りに話して実現していくといった感覚でしょうか?
山本 そうですね。手伝ってほしい人に話して、巻き込んで行くスタイルですね。あとは自分だけお金持っていてもしょうがなくて、働いている子たちもしっかりと稼げて生活できないと意味がないと思うんで。
海人さんは、アイデアが出せるだけでなく、ちゃんと収支を見れる、いわばそろばんを叩ける能力をお持ちだと思います。トレーラーハウスも、110万で借りられるから、毎月ローンでいくら返して...というような。どうしてそろばんが叩けるんですか?
山本 それは、サラリーマンをやっていたことが活きていると思います。当時の仕事は、会社から電話番号と名刺を渡されて、月200万のアガリをつくること。極端なことを言えば、1億円使って200万円のアガリを生むでもいい。結局は、絵を描いてお金を生むっていう企画屋の仕事なんで、それで収支を計算するのが当たり前になってるんですよね。収支を見れないと損しちゃいますから。
会社員時代に、営業も企画も経理もやるということがいいご経験になったんですね。
山本 はい。言ったことは実現できると言うか、人生でいろいろなスポンサーさんとは出会ってきているんで本気でやればなんとかカタチにはできるんだと思います。飲み屋とかでずっと数年前と変わらない話をしている友達とか見ると、いつまで同じ話してんだろうとか思いますからね。あとは、いまは完治しているんですが、少し前に脳腫瘍になって手術したんです。そうやって余命宣告みたいなことをされてしまったから、時間がもったいないなと。車とか家あってもいらないなとか、死生観というか、いろいろと考え方も少し変わったかもしれないです。
真鶴での雄大な景色も影響があるのかもしれませんね。
山本 真鶴はめっちゃ気に入ってますね。朝日から日没まで、本当に綺麗に見えます。あと、真鶴で旅館を使って、強い企業同士がシェアできるようなシェアオフィスを作ろうとしてて。しかも、オーナーさんの元手があまりかからない方法で、場所を作るというコンセプトでやれたらいいなと。自分もそこに泊まれるようになったら最高だなと。だってシーツが毎日変えられて、朝飯が出てくる部屋があるって夢がありませんか? そういう場所づくりを手伝いながら自分の部屋も作れたらいいな、なんて思いますね。
アパレルと飲食店はすでにやられているから、「衣食住」の「衣食」はすでにお持ちですもんね。
山本 はい。そうなったらもうお金はいらないくらいですね(笑)。
それにしても、東京だけでなく、真鶴でもいろいろと手がけられてますが、いわゆる“失敗”みたいなものはあるんですか?
山本 めっちゃいっぱいありますよ。〈サノバチーズ〉とか「BUY ME STAND」とか飲食店がうまくいっているくらいで、あとは大きなホームランはないんじゃないですか。10回ぐらいやれば、なんとかなると思うんですよ。まあ、あとは忙しすぎてプライベートで失敗するというのもありますし、全部が全部うまくいくなんてことはないんじゃないかなと。
ウィスキーも飲まれるとお聞きしましたが、真鶴ではどんな風に飲んでいますか?
山本 東京では外で飲むことが多いので、自宅にはお酒がなかったんですけど、真鶴だと家にお酒が置いてあって一人で飲むこともありますね。公共の温泉とかが300円とかなんで、温泉行って、車の窓全開で風を浴びて家まで帰って、ウィスキーをロックで飲んだりとか。あとは、釣りしたあとに飲んだりもします。生活に密接な状態で飲んでいるって感じですかね。こっちは、仕事がなくてもあせったりする人もいないので、東京とは違う時間の流れの中でゆっくりやってますね。
いいですね、そういう生活に憧れます。それでは恒例の質問です。ジョニーウォーカーのボトルにも前を向いて歩いている人が描かれていて、それは人と支え合いながら常に前進するという意味を持ったコンセプト“KeepWalking”が表現されています。海人さんは、“自分の可能性を広げていく”ためにやっていきたいことはありますか?
山本 ふとした拍子に暗い気持ちになってしまう時代だと思うんですけど、毎日笑えるように生きてますね。極力ネガティブなことや愚痴を言っている人にはあまり近づかないでおこうと心がけています。
そのポジティブマインドは以前からお持ちなんですか?
山本 そうかもしれないですね。いやなことがあったとしても時間が経てば、楽しいネタとして人に話せるじゃないですか。それならネガティブなこともポジティブに捉えられる。あまり深く考えすぎず、歩き続けることが大切なんじゃないかなって思っています。
Photo_Shinsaku Yasujima
Text_Shinri Kobayashi
Edit_Shun Koda