今年、Awesome City Clubが5周年を迎えました。いろいろと準備をされていたそうですね。

PORIN 「Welcome To Awesome City」というカルチャーフェスを開催する予定でした。私たちは渋谷が拠点なので、渋谷の街とリンクするようなイベントを、クリエイターやアパレル、飲食の仲間たちと一緒にやりたかったけど、コロナの影響でできなくなっちゃいました。今年は多分、リアルなイベントを開催できないと思うので、ミニマムにして、画面越しのイベントができたらいいなと思っています。

集客したライブもできない状況ですよね。

PORIN はい。出演が決まっている夏フェスがいくつかありましたが、それもなくなっちゃいました。だけど、ネガティブなことだけじゃなくて、ライブやフェスって、自分のモヤモヤしている感情や内向的な部分をアウトプットできて、私が一番輝ける場所なんだと改めて気づかされたいいタイミングでもありました。

これまで、各地に足を運んでいますが、一番思い出に残っている地域はありますか？

PORIN あえて言うなら、札幌。ライブではお客さんが温かったし、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」もいいライブができました。雨のパレードとツーマンライブをしたこともあって、その打ち上げが楽しかったのも印象に残っています。

やっぱり打ち上げは、ライブの醍醐味でもありますよね。

PORIN メンバーはみんな、お酒が好きだし、対バンしたバンドと仲良くなれるので、毎回楽しみです。ご当地のお酒や食事も楽しみ。お酒は人と話しながら飲むのが好きなんです。

ライブができなくなって、YouTube配信をされていますが、それもAwesome City Clubにとって新しい挑戦ですよね。

PORIN 新感覚です。それが最近楽しくなってきました。YouTubeでの配信ライブは、映像作品として捉えていて、どれだけ新しい発想で、お客さんを楽しませられるか考えています。

そして、5周年を記念したセカンドアルバム『Grow apart』がリリースされました。

PORIN 去年はメンバーが脱退したり、レーベルを移籍したり、環境が大きく変化した波乱の1年でした。いろいろ悩んだり、メンバーと話し合いを繰り返したりする中で生じたすれ違いを作品にしたのが、このアルバム。まずはタイトルを決めて、それに沿って曲作りをしていきました。

Awesome City Clubの新たな側面を感じられる楽曲ばかりですね。

PORIN 私たちは、時代に合わせて変化してきたので、等身大の今の自分たちらしさを作品に落とし込みました。全曲ドラムが打ち込みになっていたり、ボーカル録りしかしていない曲もあったり、新しい挑戦をしています。これまでのアルバムとサウンド面がガラッと変わっていますし、環境の変化の影響で、歌詞の内容も変わっていて。コンセプチャルなアルバムに見えるかもしれないけど、人間臭さをリリックで散りばめているので、おもしろいアルバムに仕上がりました。Awesome City Clubの新境地に達したかなと思っています。

ちなみに、PORINさんが最近聴いている音楽は？

PORIN お家にいる時間が増えたこともあって、心に沁みるようなフォーキーな音楽をよく聴いています。

Instagramでは、ギターを弾き語る姿も配信していましたね。

PORIN アコギって、アンプも電源もいらないから、無敵だと思っていて。お家でも手軽に歌えるから、よく弾いていました。

ギターを使って、ソロで活動してみたい気持ちは？

PORIN ありますよ。私、ギターがすごく好きで、19歳の頃は毎日路上で弾き語りをしていたから、ギター1本で歌うのが私の軸になっています。Awesome City ClubのPORIN像とは違うかもしれないけど、そういう一面は今後も、SNSとかで出していきたいと思っています。

SNSと言えば、最近TikTokにハマっているそうですね。

PORIN TikTokって演出が派手だし、投稿はどれも元気いっぱいだから、今まで手を出していなかったんですよ。でも、やってみたら、軽やかなものを求めている今のマインドとマッチしました。考え込んじゃうこともあるけど、それを一瞬で払拭してくれるような感じ。一度バズって、地雷女に認定されたこともあるけど（笑）。関わったらマズイ女に見えたらしいです（笑）。でも、それはそれでおもしろいなと思いました。InstagramやTwitterは、私のことを知ってくれている人がコメントしてくれますが、TikTokは私のことを知らない人もコメントをくれるから、私は世間的にこう見られているんだって知れました。カッコつけない自分を発信したいという気持ちもあります。目標は、フォロワー1万人！

InstagramやTwitterと、どのように使い分けているんですか？

PORIN Instagramはファッション的できれいなものを載せていて、Twitterは思ったことを真剣な言葉で伝えたい。TikTokはカジュアルなものなので、私の自然体で、知られざる部分を見せられたらいいですね。人間は、一概には言えない、いろんな表情を持っているので、SNSを使っていろんな私を見せられたらいいなと思っています。

Instagramでは、音楽以外に、自身がディレクションしているブランド〈ヤーデン（yarden）〉の投稿が目を惹きます。

PORIN “yard”と“garden”を組み合わせたブランド名なんです。昨年ブランドを立ち上げる際、自分の強みを考えてルーツを辿った結果、花木がありました。私の親は庭園会社を営んでいて、実家にもお庭があるんですけど、そのお庭は同じ表情を見せなかったり、光が注いだりしているのを見て育ち、その変化し続ける美しさをお洋服に落とし込めたらいいなと思ったのがきっかけです。お花がモチーフになっているデザインが多いです。

刹那の美しさを洋服で表現しているんですね。

PORIN コンセプトは常に頭に置いているけど、ファッションは時代を反映するものだと思うので、どれだけ柔軟にデザインできるかを考えています。コラボもしているけど、根を深く張っていれば、枝先が揺れても、幹は折れない。

ファッションにも強いこだわりを感じます。例えば、ブルーのヘアカラーとか。

PORIN ブルーにしてから1年くらい経って、やっと定着してきました。ずっと似合う色を探していて、ようやく見つけ出しました。奇抜なカラーかもしれないけど、自分としては奇抜じゃなくて。同じ色味をずっとキープできないから、徐々に色が落ちていっちゃうんですよ。でも、その変化がすごく好きなんです。それも刹那的で美しいと思っています。

以前は、ピンクの印象が強いです。

PORIN ピンクのヘアカラーだった頃は、ファッションアイコンとしての私を確立したかったのが、理由のひとつ。ファッションが好きだし、そういうお仕事もいただいていたので、それをピンク色の髪で追求していました。今は、もっとアーティストとして確立したいからブルーにした感覚があります。

ヘアカラーは気分を変える大事なスイッチになっているんですね。それでは恒例の質問です。ジョニーウォーカーのボトルにも前を向いて歩いている人が描かれていて、それは人と支え合いながら常に前進するという意味を持ったコンセプト“KeepWalking”が表現されています。PORINさんは、“自分の可能性を広げていく”ためにやっていきたいことはありますか？

PORIN 柔軟性を持って、いろんなことに挑戦していくことを大事にしていて、常に前進していきたいと考えています。そのために、人と話すことがいい刺激になっています。だから、母親とほぼ毎日テレビ電話をしているんですよ。私、ひとり暮らしなので、ステイホーム中は、ずっとひとりでいるのがシンドかったので、毎日話すようになりました。両親にはなんでも話すので、大切な時間です。相談もたくさんしていて、母親と父親の意見を聞いています。コロナがあったから、絶対的なものが曖昧になっちゃって、私の中の無駄なものが淘汰されていきました。その中で残った確固たるものが、私の場合は両親。親を一番信頼していて、安心できます。