INTERVIEW #08
Rei Shito
STREET STYLE PHOTOGRAPHER

シトウレイが語る、
ストリートスナップの本質。

2020.10.30 UP

Photo_Takahiro Idenoshita
Text_Shogo Takako Nagai
Edit_Shun Koda

ストリートスナップのフォトグラファー かつ、ジャーナリストでもあるシトウレイさんですが、独自のスタイルを確立されていますね。横位置の画角で撮られたスナップや、写真に添えられた主観性のあるテキスト…と、他にはない魅力の理由は、何でしょう?

Rei 服ではなく、人を撮っているからなのかもしれません。ずっとファッションを見続けているんですが、そこには人の本質が現れてくるのではないかな、と思っています。人そのものを捉えたいからこそ、街に溶けこんでいるありのままの姿を撮りたくて、結果横位置の写真も多い。ジャーナリズムとして内面を伝えたいから、素敵なところは言葉で表現したいと思っています。

どんな人に声をかけ、写真を撮るのでしょうか?

Rei 「おしゃれをしている人」ではなく「おしゃれな人」。そもそもファッションに間違いなんてないのですが、「おしゃれをしている人」は着ている服にアリかナシか迷いがあったり、その不安感から自信がなく見えたりもする。「おしゃれな人」はお気に入りを着ることを心底、楽しんでいるんです。いい意味の自信が表情や歩き方に現れていたり、不思議とウキウキオーラみたいなのが見えることもある(笑)。その点、ファッションって人の根底を表していると感じます。

2004年には、伝説的な雑誌、『TUNE』や『Fruits』で写真を撮り始められていましたね。写真をとるモチベーションは昔から変わりませんか?

Rei 一貫して変わりません。当時「レイちゃんの好きなものを撮ってきて」と言っていただいていたんです。だから、自分の感覚で装いだけを見ることに集中していました。そんな見方をしながらファッションの本質的な楽しみにどんどん目覚めていったかな。

雑誌社から独立されてから10年以上、ご自身のブログ「STYLE  from TOKYO」や様々な媒体で発信され続けてきましたね。

Rei 写真を撮り始めた当初、本当に向こう見ずでしたよ(笑)。勢いで声をかけて撮ったら名のある人だと後から知ることもしばしば。以前、表参道のルイ・ヴィトンの設営中に、バーバリーのちょっと破けたコートを着ていた紳士がいまして。「とってもチャーミングなおじさんがいる!」と何も考えずに突撃した後に著名なデザイナーさんだと知りました(笑)。確かにSPのような黒ずくめの人たちに囲まれていたのですが、周りが見えなくなってしまうんですよね。

常に一瞬を大切にされているからこそ、瞬発力があるんですね。アポイントをいれることは無いとか?

Rei お仕事の案件以外では絶対にアポ無しです。ストリートスナップはジャーナリズムだと思っているので、ヤラセや仕込みがあると別物になってしまう。ばったりあった人が素敵だったから撮る、というのがスナップの本質だと考えています。

ストリートの若者はもちろん、これまで国内外のファッションリーダー達も写真に収められていますね。

Rei それは結果論なんです。雑誌社にいた時から今日まで「名前で撮らない」というところはブレていません。つまり、有名人かどうか、人気のブランドかどうか、トレンドなのか…なんて関係ない。その人の内面が浮かび上がっているファッションにフォーカスしたいんです。

シトウさんが長くウォッチしている人が、偶然、活躍していくこともあるわけですね。

Rei そんな時はお互いに刺激を受けるし、純粋に楽しいですね。成長したり淀んでいる時期もあったりと様々ですが、お互いにキャッチアップしながら励まし合うこともある。撮り溜めた写真を、後から見返すと感慨深かったりします。

そして写真に添えられるテキストはいつも温もり感があって素敵ですね。言葉も併せて書くようになったのは、なぜでしょう? 

Rei 実は、もともとパーソナリティーについては書かないようにしていたんです。でも話をするほど写真だけでは伝わらないことが出てくる。例えばすごくクールな格好の子に何のタトゥーを入れているのか尋ねると「すごく苦労させてしまったけれど、お母さんが大好きだから、お母さんのタトゥーを入れた」なんて答えが返ってきたりする。派手に飛ばした服を着ている子が「これから、おばあちゃんの家に電球を取り替えてあげにいくの」と言ったりする。キューンとするじゃないですか。そんな写真だけじゃ伝わらないことは、文章で補って伝えたいと思いました。

なるほど。先日、シトウさんの集大成とでも言うべき著作『style on the street from tokyo beyond』が、ニューヨークの超名門ブックストアの「リッツォーリ」から発刊されたばかりですね。300ページほどの大ボリュームが圧巻です。

Rei 1.7キロありますから、もはや鈍器ですね(笑)。これでも『GINZA』の元編集長の中島敏子さんに監修していただきながら頑張って減らしたんです。内容は大きく3本柱。日本のストリートスナップと、着こなし指南のスタイルティップス、そしてインタビュー。〈サカイ〉のデザイナーの阿部千登勢さんや「The Sartorialist」のスコット・シューマン、小木“Poggy(ポギー)”基史さんと、ファッションの大先輩達のお話もまとめています。

著書に収録された写真からは、ジャンルレスにファッションを撮られてきたことも分かります。

Rei 東京にいたからこそ、多様性のある写真が撮れたと感じます。ニューヨークやパリしかり、他の街はジャンルをしっかりとセグメントしがち。東京は、ストリート、スーツ、古着、プレッピー、「ユナイテッドアローズ」の鴨志田さんのような紳士まで、様々に入り混じっているから楽しい。みんなが大好きです。

海外と日本、どちらのファッションが面白いですか?

Rei 和食と洋食がどちらも美味しいように、それぞれの良さがあります。日本は階級がありませんし戦後フラットになったことでミクスチャー文化が発展したと考察されていますよね。そういった意味で日本は型破りなファッションの面白さが強い。海外はオケージョンを大事にすることも多く、通勤着とドレスアップを分けていたりします。仕事おわりで一度帰宅し、シャワーを浴びて、服を着替えて出かけるという文化。日本は朝からややドレスアップをして会社に行き、夕方7時に口紅を塗り直して、靴だけ履き替えてお出かけしたりします。そんな生活様式の違いからファッションの違いも生まれてきます。

著書の表紙は、東京で撮った写真ですね。セレクトの理由は?

Rei 表紙は、改装前の昔のパルコの壁で撮った写真。期間限定で落書きがされていました。日本ってスクラップアンドビルドの国で、次に行った時には在りしものが無くなっていることが往々にしてある。私は意外とそれが嫌いじゃないんです。儚いからこそ記憶する価値があるし、街の風景へのノスタルジーって日本的だと思っていて。表紙選びには、そんな背景がありました。

最近の街のムードを、どう見ていますか?

Rei 若い子たちの価値観がとにかくフラット。偏見もなく、卑屈感もない。国籍や出自よりも、人や物をピュアに見ています。かっこいい服を選んだら、それがたまたまアジアのブランドだったり。そして着こなしもヘルシー。コンプレックスを隠すために服を着るのでは無くて、自分のいいところを活かすために服を着ているムードを感じますね。自分の魅せ方が上手な子が多くて、本当にお見事!

今、時代の節目でもありますが、ファッションに元気がないと思うことは?

Rei そんなことを言う人がいたら、どの口が言ってるんだ!と思ってしまう(笑)。今はウェブでの二次流通も盛ん。そこでの服の売り買いは、マーケットに数字として計上されないかもしれませんが、総数としては大きく回っているはずです。それに今、東京の男の子が元気なんです。「服が好きで、好きで、たまりません」っていう印象の子が多くて。バイト代を全部費やして、頑張って服を買っていたりするのも、とても可愛い。間違いなく、今には今の、ファッションの面白さがありますよ。

PROFILE
Rei Shito
日本を代表するストリート・スタイル・フォトグラファー、ジャーナリスト。毎シーズン、世界各国のコレクション取材を行い、独自の審美眼でつづられる言葉と写真が人気を博している。ファッションにおける感性の高さと分析力で講演や執筆、テレビやラジオ出演、商品プロデュースやコンサルタント等、ジャンルを超えて活動。ストリートスタイルの随一の目利きであり、「東京スタイル」の案内人。また彼女自身のセンスも、ストリートフォトグラファーの権威『The Sartorialist』の著書で特集を組まれる等、ファッション・インフルエンサーとしても活躍中。今年10月末には、10年間の軌跡を200ページ以上にまとめた初のスタイルブックを出版。

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