ベーシックな事をやり続けてきただけ。エンターテインメントを追求。

ーディストリクトに来ると感じるのが、スタッフ全員が生き生きと店頭に立っているという印象です。

篠田:売り場にいる人間はみんな店が大好きだっていうことは1つ言えますね。永遠の素人感というか、洋服やファッションを楽しんでくれてますよ。
吉原:僕がディストリクトに来て以来、雰囲気作りは気にかけてするようにしたよね。良いことは継続させて、それ以外の事はやめるように舵を取ったり。連動には苦心した覚えがあるなぁ。他の既存店ではできてなかったブログ、ウィンドウ、店作りという3つの要素をリンクできたのは大きな成果だったと思うよ。
篠田:色々な理由や要因で継続しにくいベーシックな事をやり続けてきただけです。全部を自前でやってるからこそできたということも大きいですね。

ーあとは何も考えてないように見えて、緻密に練られた仕掛けがあるように思えるんです。店内の導線上に、うまいこと琴線に触れるアイテムを陳列したり、ラックに意図的に少なく並べてみたり。

吉原:基本的に売り場作りはシンプルがいいんだよね。だからパンツはパンツ、シャツはシャツみたいなアイテム斬りはやめたの。お客さん目線で考えるとブランド斬りの方が見やすいに決まってるし。それもぎっしりと可能なだけ並べるんじゃなくて、ゆとりを持たせて見せる工夫をしないとね。
篠田:これ以上ラックに掛けると売れなくなるっていう本数があるんですよ。スリーブしか見えなくなるような見せ方は美しくないですしね。
吉原:だから全部のサイズを店頭で並べる必要はないワケ。アイテムとして美しく見せることができればいいんだし、実際にバックルームには別サイズもストックしてあるから。
篠田:ショッピングに来て、売り場でお客様がエネルギーを使うのは良くないと思うんです。どこか脱力感を持って見てもらえればいいんです。
森山:ハンガーも店のものだけでなく、各ブランドのものを用いるようにしたのもディストリクトは初めてだったと思います。
吉原:そうそう。UAハンガーのカラーがマッチしない気がしちゃったんだよね。これだとタグを見たりしてモノを細かく観察しなくても、どこの服だかすぐ分かるしさ。

ーデザイナーさんが店によく足を運んでいる印象もありますが、あれは自主的なものなんですか?

篠田:それは信頼関係から生まれたものじゃないですかね。やはりオーダーしたアイテムが完売したりすると「あの店は結果を残してくれる」という思いが生じるじゃないですか。それに加えて「他では売れないのに何でだろう?」ということも考えてもらえたりしますからね。
吉原:俺がPRをずっとやってきた立場だから、顔が広いっていうのも大きいよね。商品説明会をしてくれたりすると作り手の思いみたいなものをダイレクトにヒアリングできるから、売る側もより深く知ることができるのが大きい。疑問点もすぐに聞けるし、ディテールに投影された部分にまで踏み込んで話せるようになるから。
篠田:やはりモチベーションが違ってきますよ。自分たちで生み出しているという自負も生まれるから接客にも説得力がでてきます。
森山:JAS(ジャスM.B)さんとは卓球まで一緒にやりに行きましたもんね。
篠田:こういう話をすると他店から羨ましがられるケースがあるんですよ。「いいですね、ディストリクトは。デザイナーさんが来てくれて」なんて言われますが、そうじゃないんです。自分たちができることを日々やってきた結果なんです。本当に小さなことを積み重ねてきましたからね。結果としてそういう状況になっただけなので、今できることを他の店の人もやればいいだけです。
吉原:面白がってもらえるかが大事。デザイナーさんもイベントとして楽しんでくれてるしね。
篠田:常に面白がってもらいたいと思ってやってることですから。エンターテインメントですよ。

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森山さんはフイナムでのマニアックなブログも大人気です。