売り場発のムーブメントを起こし続けたい。

ー今までの話をお聞きしていると、そこまで過去に固執していないというか、どうでもいいように思われているような印象があるんですけど実際はどうでしょう?

吉原:後ろを振り返ってる暇ないからね。そんなに興味ないかも。
篠田:こういった機会がないと回顧したりしないですね。久々にこの店の昔を思い出した感じがしましたよ。日頃から前だけを見ているから昔の話とかは飲んだりしてもしないですね。
吉原:「あの頃はさぁ」とかより「今度コレやりたいんだよ!」っていう話ばかり。
森山:突拍子もないような思いつきでも話ができる雰囲気なので、次は何をしようっていうのは常に考えていると思います。気付いて振り返ってみれば10年なんて、あっという間でした。
吉原:この先どうなるかなんて分からないんだもん。今までと同じように、やれる事とやりたい事をやっていくだけだよね。なんでここの店長やってるかって言ったら好きなことができるからだし。
篠田:今までよりも、これからが大事ですから。昔を知りたければブログのアーカイブを見てください。それより今のディストリクトに興味を持ってもらいたいです。

ースタッフのチームワークがとても強固なイメージもあるんですが、自然と完成したものなんですか?

吉原:人には得手不得手があるでしょう。苦手な部分を改善することよりも、ストロングポイントを強化するほうが大事。少なくともそういう人材教育をしているかな。人って頭ごなしにダメ出しすると萎縮してやれなくなるんだよ。コーチングが大切で、怒るのではなく気付かせるようにはしてますよ。
篠田:置いておけば勝手に売れる商材なんか扱いたくないですから。接客を通して売ることが大事だと考えてます。
吉原:チームで動いてるからね。アイコンタクトなどの細かい連携は無意識にやってると思うなぁ。こういう箇所の精度を高めることでヒット商品って生まれるものだしね。
森山:売り場にはヒントがいっぱいあるように感じます。そういったキーワードを抽出する意識は自然に身についちゃいましたよ。やらされている感は皆無で、みんな自主的にやってるのが自然な状態なんです。
篠田:売り場は最前線ですからね。全員がアンテナを持った端末のようなもので、そこから生まれたムーブメントも少なくないですよ。
吉原:服を上手に着こなすプロが揃ってるから。そこにウソがないんだよ。ハンパ丈だって「コイツら、店の中だけでしか着てないだろう」とは思われていないだろうしね。面白がって売り場から生まれたものだから、お客さんにまっすぐ届くんだと思う。
篠田:例えば、スタッフ間で同じアイテムを着てきて被ってしまう日とかもあるんです。それを「寒い」と思わずに面白がってしまう土壌がディストリクトにはありますね。
吉原:そこを楽しめちゃうのは一歩先を行っている部分なんじゃないかな。ブレザーとかは下手すりゃ全員で被ったりしちゃうから。
森山:またその被りっぷりをブログにアップしちゃったりすると、今度はお客さんが面白がってブレザーを着てご来店していただいたりするんです。ファニーな要素は本当に大事だと思いますね。
吉原:やっぱり"知的なミーハー"でい続けることって大事。新しいモノは気になるし、それを取り入れることも続けなきゃダメだよ。なにかさ、若い頃に服は一通り見てきたし、今は一歩引いてる自分が格好良いみたいな人っているじゃない? ファッションなんかそんなに興味ないみたいなスタンスが良いと思ってる感じ。それの方がダサいわっていうね。
篠田:あとは全身を1つのブランドでコーディネートするのは御法度みたいな不文律も依然としてあるじゃないですか。そんなことはないんですよ。〈トム・フォード〉なんてバラして着られないですからね。

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虎の巻とも言われるディストリクトのファイル。闘龍極意書のように貴重なデータが詰まっています。