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普遍性を増すSTABILIZER GNZ --デニム作りの原点と現在--

2012.02.23

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「デニムが持つ"扱いづらさ"みたいな部分に、愛着があるんです」。
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―矢實さんがこの本藍染めデニムを作ろうと思うきっかけは何だったのですか?

矢實:自分が培ってきたアメカジからインスパイアされたなかで、日本の素材を使ってジーンズを作ってみようというところですね。ヴィンテージみたいなものからインスパイアされるというよりも、日本製の、それもあえて藍染めで。こういう日本の技術を使ってジーンズを作ったりすると、どこもそうなんですけど、漢字で「藍染め」って書いたりするんですよ。和を意識しすぎるというか。でも、そういうのは抜きにして。

―具体的にそのアイデアを形にしていったのはいつ頃でしたか?

矢實:生地自体を最初に見たのは2年ほど前ですね。去年の秋冬シーズンからウエスト10サイズ、レングス4サイズという本気のジーンズ作りへ移行したのですが、そのタイミングでは絶対に作りたいと思っていました。熟練の職人さんが織っているような生地なので、数もたくさん作れないし、値段も値段なんで、ポンポン売ってくようなものではないかと。だから、本当に納得できるようなものができるタイミングで始めたかったんです。

―非常に独特な藍ですよね。

矢實:徳島の本藍染めの藍というのが、通常よく使われるインドなんかの藍染めに比べると色が黒く出るんですよ。本来、藍染めっていうのは少し緑っぽくなるんですけど、これは黒ずんだインディゴになる。そこが作りたかった理由でもあります。

坂田:面白いよね。

矢實:あとは、最近、世の中的には加工のジーンズが多くなってきていて、洗って縮むとか、洗ってジーンズがねじれるとか、今だとなかなか受け入られにくくなってると思うんですよ。そういった"扱いづらさ"みたいな部分に、僕はすごく愛着があって、過去の人たちが行ってきたモノづくりの側面を引き継いでいきたいなと思ったんですよ。だから、このデニムは洗ってすごく縮むし、すごくねじれますよ。

坂田:そうだよね、結局は今言ってくれたような、買ったときから変化していくプロセスこそが楽しかったりするんだよね。洋服に限らず、買ったときが最高じゃない商品ってあるじゃないですか。色落ちにこだわって自分でこすったり、30回くらい履いてから洗うのがいいとか、全然洗わない方がいいとか、洗剤使った方がいいとか......。

矢實:風呂に履いて入ったりとか...(笑)。

坂田:もっと昔の人なんて土に埋めた方がいいとか言ってたからね(笑)。一番最初にジーンズが流行ったのって、そのプロセスも含めてだと思うんですよ。矢實君は僕より少し下の世代だけど、そういうのを上手く下の世代に還元できる作り手ですよね。

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―"古着離れ"なんて言葉が生まれるくらい、今の若い世代が洋服を買うときに古着屋に行くという選択肢が当たり前じゃなくなってきています。

坂田:今のすべてが悪いとは言わないけど、やっぱり買い物がインスタント過ぎるとは思うんですよね。買ったときからすべて出来上がっている。でも、それは時代の流れで捉えれば仕方ないことだけど、それとは違うスタンスって大事だと思うんです。趣味性がすごく高いお店だから、あまりインスタント性の強いものをうちに置く意味はないですから。

矢實:そうですよね、僕は単純にこのお店に通っていたし、古着屋さんに置かれているものと自分のプロダクトが並ぶ姿というのは想像できますね。このジーンズを作るときからずっと持っているイメージなんですけど、古着屋さんに置いてあるアイテムって、例えば革ジャンのブランドが革ジャンを作り、ニットのブランドがニットを作る、みたいな専業の強さがあると思うんです。いわゆる〈シアーズローバック〉のようなストアブランドはトータルで作ってるんでまた話は別ですが、基本的には、ひとつのアイテムを突き詰めているブランドが古着には多いと思うんです。

坂田:確かにそうだね。

矢實:僕もひとつのものを突き詰めるという手段で作っているので、モノとしてのあり方はそれで一緒かなという風には思います。だから、このお店で取り扱ってもらうのは嬉しいですよね。

―今の洋服や状況というのは抜きにして、単純に自分が今まで培ってきたことが落とし込まれたプロダクトだということですね。

矢實:そうですね。僕もトータルで洋服を作っているブランドさんからの仕事を受けて、型紙を引いたりなんてことはずっとしてきているんで、あまりそういったことにアンチだとか、そういう気持ちはなくて。ただ、自分がやるのであれば、それはまた別の話で。さっき坂田さんが言っていた趣味性みたいな部分っていうのは、そういうところかもしれないですね。

―最後にお聞きしたいのですが、お2人の好きなジーンズの条件やこだわりを教えてください。

矢實:僕はあまり趣味が変わらないので、基本は"毎日履ける"。これに尽きますね。結局、ジーンズしか履かないんで(笑)。

坂田:僕は古着屋ですが、ジーンズを骨董品みたいな感じで扱うのは好きじゃないんです。古けりゃ偉いわけでもないし、珍しかったら良いというのも面白くない。同じジーンズでも、ベルトが無くてもいいくらいパツパツで履きたいときもあれば、ワンサイズ大きめで履きたいときもある。レングスだって、ワンクッション入れるくらいで履きたいときもあれば、ロールアップで履きたいときもあります。だから、その都度その都度、ベストのジーンズというのは変わりますね。仕事柄、ジーンズはやっぱりファッションですからね(笑)。

坂田真彦:

アーカイブ&スタイル代表。1970年、和歌山生まれ。2001年よりフリーランスのデザイナーとして活動開始。2004年、デザインスタジオ「アーカイブ&スタイル」を設立、2006年には同名のヴィンテージショップをオープン。複数の人気ブランドのクリエイティブ・ディレクターなどを務めている。

矢實朋:

1978年生まれ。〈スタビライザー ジーンズ〉のデザイナーにして、多くのブランドのパターンを手掛ける職人。繊細にして大胆なクリエイションは業界内でも評価高し。軍モノ博士。

stabilizer_sub_06.jpg アーカイブ&スタイル

住所:東京都南青山5-3-10 南青山SOビル(From-1st)G階B-2
電話:03-5464-2423
時間:平日12:00〜20:00(土日は11:00〜、日のみ19:00まで)

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