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FEATURE|グッドネイバーズジャンボリー2016。夏のおわりの記憶。


そろわない音たちの塊。しょうぶ学園の音楽に圧倒される。

実はひとつ楽しみにしていることがあった。春先に鹿児島へ行った時、坂口さんに連れて行ってもらった「しょうぶ学園」(※5)。知的障がいを持つ方々の圧倒的な創作パワーにすっかり取り憑かれてしまっていた。そんな折、しょうぶ学園の日々を追ったドキュメンタリー映画「幸福は日々の中に。」の存在を知る。

そんなしょうぶ学園のバンド「orabu&otto」がジャンボリーに出演しているのだ。7年前、自身の故郷である鹿児島で何かしたいと奔走していた坂口さんの、まだ曖昧だったイメージを確固たるものにしたのが「orabu&otto」の存在だったという。そしてこの7年間、唯一レギュラーとして出演しているバンド。野外ステージの前が徐々にお客さんで埋まり熱気を帯びてくる。しょうぶ学園の施設長でありバンドの指揮者である福森伸さんが僕らに話しかけ、声出しの練習。何が起こるのか。そうして「orabu&otto」のライブが始まった。

そこから先はもう夢中だった。鳥肌が止まらず、涙がこみ上げそうになりながら一秒たりともステージから目が離せず、気がつけば大声をあげて踊っていた。

ドラムやジャンベ、ガムランのビート、アコーディオンにピアニカ、木琴が繰り返すフレーズのループ。顔をペイントしたorabu隊の叫び。譜面はない。音やリズムのズレがこの無限ループにさらに奥行きを与えている。僕らが生きてる世界の制約という名のリミットや常識ってナンダ? こんなにも自由に人間は音を鳴らせるもんなのか? 遠い遠い遠い昔の、自分たちの祖先がそうしていたかのように、体の中の原始的ななにかがグラグラと揺さぶられて止まらなかった。鹿児島にこんなすごい人たちがいたのだ。すごい人たちがいたのだ。

フレンドシップが実現させたUAの歌声。ジャンボリーのフィナーレ。

あたりはすっかり夜に包まれ、UAがステージに立つ。坂口さんとのフレンドシップが、彼女を森の奥に呼び寄せた。これで今年のライブは最後なのだそうだ。ジャンボリーのシンボル、大きなクスの木を見つめながらUAはうたう。ゆれながら歌う。

ライブの最後、坂口さんもトランペットでステージに立ちUAとセッション。鳴り止まない拍手の中、グッドイネイバーズジャンボリーはフィナーレを迎えた。

「グッドネイバーズ」の意味。フェスでなく「ジャンボリー」であること。

「メシが作れるヒトはメシをつくる、絵が描けるヒトは看板の絵を描いたり教えたりする。その中に音楽ができるヒトがいたりする。 “みんなの得意を1品持ち寄る”ようなフラットな祭り。それがコミュニティのお祭りだし、それを目指してるんだよね」。7年前、坂口さんは10ケ月もの間、東京と鹿児島を往復しながらさまざまな人に会いに行き、こう話して回ったのだという。

ゴハンも、クラフトも、デザインも、文学も、映画も、音楽も。ここはすべてがイーブンだった。それぞれができることを持ち寄って、ヒトがヒトを介して笑顔が生まれる場所だった。それは出る側も、お客さん側も。大人も子供も。まぎれもなく、「グッドネイバーズ(よき隣人たち)」が全国から集まる場所だった。イーブンだからこそ、“お目当て”が存在しない、そこで起こる“コト”すべてがお目当てになる、「ジャンボリー(お祭り)」だった。

JOIN US AGAIN! 来年もまた、森の学校で会いましょう。

会場の出口に掲げられたメッセージを目で追いながら、僕らは森の学校を後にした。

「ジャンボリーは行かないの?」

東京で、今度は僕らが聞く番だ。もし「行ったことないなあ」って返事が返ってきたら、少しだけ得意げにこう言うんだ。

「ジャンボリーはさ、とにかく行ってみなくっちゃ」

(※1)
さかぐち・しゅういちろう / 1971年生まれ。鹿児島県鹿児島市出身、東京在住。BAGN inc,代表。1993年、無国籍楽団 ダブルフェイマスを結成し、トランペッターとして活動。2010年より故郷である鹿児島で「グッドネイバーズジャンボリー」を主宰。ランドスケーププロダクツ内にディレクションカンパニー「BAGN inc.」を共同設立し、幅広いジャンルのイベントプロデュースを多数手がける。

(※2)
おかもと・ひとし / 1954年、北海道生まれ。マガジンハウスにて『ブルータス』『リラックス』『クウネル』などの雑誌編集に携わったのち、2009年にランドスケーププロダクツ入社。「BE A GOODNEIGHBOR」プロジェクトなど、同社のカタチのないもの担当。著書に『今日の買い物』(プリグラパブリッシング)、『ぼくの鹿児島案内』『ぼくの香川案内』(ともにランドスケーププロダクツ)、『果てしのない本の話』(本の雑誌社)などがある。現在、『暮しの手帖』にて「今日の買い物」、『&Premium』で「果てしのない本の話」を連載中。2016年10月15日には、坂口修一郎との編著書『ぼくらの岡山案内』を発売予定。

(※3)
なかはら・しんいちろう / 1971年、鹿児島県生まれ。ランドスケーププロダクツ代表。オリジナル家具等を扱う「Playmountain」、カフェ「TasYard」、コーヒースタンド「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSK」、ギャラリースペース「CURATOR’SCUBE」、ヴェトナム麺食堂「Pho 321 Noodle bar」を展開。また住宅/店舗のデザイン業務、イベントプロデュース/ブランドディレクションを手がける。

(※4)
かわなべ・ひろし / 1967年鹿児島県生まれ。TOKYO No.1 SOUL SETの屋台骨を支えるトラックメイカーであるとともに、日本のクラブ黎明期からDJとして数多くの伝説的パーティのフロアを沸かせてきた。藤原ヒロシ、石野卓球らとも別ユニットとして活動。他多数のアーティストのプロデュース、TV、映画音楽、CM楽曲なども手掛ける。

(※5)
しょうぶ学園 / 鹿児島市吉野町にある知的障がい者支援者施設。木工・陶芸・染め織り・和紙・縫いなどの工芸、芸術活動や音楽パフォーマンスなどの創作、表現活動を行う。敷地内にはパン工房やレストラン、そば屋などのフードスペースを地域に解放し、利用する人の個性や適性に応じた制作スタイルを支援。しょうぶ学園のスタンスを学ぶべく、世界中から多くの視察が訪れる。しょうぶ学園の活動を追ったドキュメンタリー映画「幸福は日々の中に。」は大きな反響を呼び、全国上映中。http://silentvoice.jp/whilewekissthesky/ 坂口さんとしょうぶ学園のバンド「otto&orabu」との出会いは、まだ不確かだったグッドネイバーズジャンボリーの構想を一気にドライブさせた。1回目の開催から唯一出演し続けるバンド。

INFORMATION
ユナイテッドアローズが運営するメディア「ヒトとモノとウツワ」でも、「グッドネイバーズジャンボリー」の模様を紹介しています。フイナムと合わせてこちらもどうぞ。
http://taisetsu.united-arrows.co.jp/2309/

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