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FEATURE|グッドネイバーズジャンボリー2016。夏のおわりの記憶。

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GOOD NEIGHBORS JAMBOREE 2016

グッドネイバーズジャンボリー2016。夏のおわりの記憶。

鹿児島県南九州市。鹿児島市内から車を走らせること1時間と少し。深い深い森の中、限界集落の地に突如あらわれる「かわなべ森の学校」。昭和8年に建てられたこの廃校で「グッドネイバーズジャンボリー」というお祭りが開かれている。事前の情報はあえて摂取せず、とにかく僕らは鹿児島へ向かった。夏のおわり、よき隣人たちと過ごした1日と少しの記録。

  • Photo_Naoya Matsumoto
  • Text_Ado Ishino(E)

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きっかけはいつだってふとしたこと。
旅のはじまり。鹿児島へ。

「ジャンボリー行かないの?」

数年前から、夏の時期になると合言葉のように交わされるフレーズ。「行ったことないなあ」。存在は知っていたが自分にとって縁遠いものだと思っていたのが正直なはなし。いわゆる“フェス”と言われるものにどうにもカラダが向いてこなかったから。

ただ「グッドネイバーズジャンボリー」においては「今年はあの人が出るよ!」とか「今回行かないともう聴けないんじゃないか」みたいな“どこぞの誰が出るから行こう”みたいな話をする人は誰もいなくて、“行ったか行ってないか”の話にしかならないし、「ジャンボリー」という音の響きに軽い引っかかりを覚える程度ではあった。

今年の春先、ひょんなことで鹿児島にあたらしい友人ができた。

「ジャンボリーは来ないの?」

行動が起きるきっかけなんてそんなふとしたことで訪れるものだ。旅先にいるあたらしい友人の顔を思い浮かべてみたら、なんだか鹿児島が近くなったような気がした。再訪する楽しみってのも旅する楽しさのひとつだろう。

曇り空で少し肌寒かった東京の羽田空港から鹿児島空港へ。フライトはざっくり1時間半。鹿児島は、しっかりと夏の熱気に包まれていた。そこからシャトルバスで1時間、鹿児島中央駅へ。宿に荷物を預け、レンタカーを借りて「グッドネイバーズジャンボリー」に向かうことにした。本番は8月20日。僕らが到着したのは前日の19日。今日は「前夜祭」があるのだそうだ。

鹿児島市内から車を走らせ、指宿スカイラインに乗る。スカイランという名の通り、山の上を走る高速道路だ。曲がりくねる幅広の道を空の方へ。いくつかの山を越えたら今度は下り道。料金所を通過すると広大な畑とまっすぐな道がつづく。窓を開け放ち、懐かしい匂いに包まれながら森の中へ。夏の蒼、力づよい木々に囲まれた山道をぐねぐねと走っているとそれは突然あらわれる。「かわなべ森の学校」、グッドネイバーズジャンボリーの会場だ。こんなところに学校が? こんなところで? 僕らの想像を軽やかに超えた、深い深い森の中にそこはあった。

森の学校はまるでリビングルームのよう。

少し離れた駐車場に車を停め、山道を歩いて学校の敷地に足を踏み入れる。深い森は暗くて寂しい。鬱蒼と茂った森を抜けて目の前に広がる緑の大地を見たらうれしくて思わず笑ってしまった。砂漠を歩く旅人がオアシスを見つけたらこんな気持ちなのかな、大げさか。

校庭の真ん中には大きな大きなクスの木があり、ツリーハウスが建てられていた。すでにいろんな人たちが木の下に集まり話をしている。東京や福岡、知っている顔もちらほら。みんな森を抜けてここに来たんだよな。旅の同志に会ったような、なんとも不思議な気持ちになる。ゆっくりとした安心の空気がそこには流れていて、まるで森のリビングルームのようだと思った。

陽も傾き始めたころ、主宰者の坂口修一郎(※1)さんと岡本仁(※2)さんがマイクを持ち、前夜祭の挨拶。ジャンボリーの前夜祭は、おいしいゴハンをみんなで食べながら明日からの本番を迎えようという会なのだと知る。腕をふるってくれるのはなんとバークレーに店を構えるあの「シェパニーズ」の元料理長ジェローム・ワーグ。アメリカで一番予約が取れないレストランのトップシェフがこんな森の中にいる衝撃。さらに東京目黒にある名店「Beard」の原川慎一郎さんとコラボレーションするという二重のおどろき。

料理の説明をしてくれるジェローム(右)と原川さん(左)

古い校舎の前に、大きな穴が掘ってあった。今回のメインは豚を丸ごと一頭つかったスペシャルディナー。鹿児島のシンボル、桜島からインスパイアされたジェロームが考えたオリジナル料理。香草やスパイスとともに豚を地中に埋め、熱した溶岩(桜島まで取りに行ったらしい!)を置き、土をかぶせて24時間。仕込み隊長、中原慎一郎(※3)さんとジェロームがドキドキしながら穴を掘り返す。

ヤシの葉っぱの包みを開き、溶岩に24時間じっくり熱せられた肉が姿をあらわした。大きな歓声と拍手があがる。肉をほぐしているのを眺めれば、それがどれだけ最高の焼き加減なのかがわかる。野菜がふんだんに盛られたお皿が並べられ、サーブ開始。さあ、ディナーの始まりだ。

料理の味を詳しく述べられるほどの筆力がないのが悔しいのだが、「アウトドア&肉」という安易な味の想像は完全に覆され、ここは以前から予約してやっとたどり着いたレストランで食事をしているような、ふくよかできめ細やかで品があって、とにかくものすごく美味しかった。

ディナーを楽しんでいるうちに、あたりの山はすっかり闇に包まれ、森の学校に光が灯る。

夜の前夜祭。音楽の時間。

森の学校のシンボル、クスの木の前に立った坂口さんが話し出す。「さあ、音楽の時間ですよ」。鹿児島のミュージシャンと結成したBBQバンドが演奏開始。最高のディナーをいただいた後のみんなはすっかりご機嫌。体もゆれる。

BBQバンドであったまった空気をさらに震わせる音楽が始まった。なんとツリーハウスに設けられたDJブースに立っているのは川辺ヒロシさん(※4)。

レジェンドDJの音楽を森の中で聴けるなんたる至福。心地よい名曲たちに乗せられたビートが鳴りひびく贅沢な時間。

体をゆらす人、芝生に座る人。思い思いの森の時間を過ごす。そうして前夜祭は終了した。じゃあ、また明日。

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