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松井智則PR01. エグゼクティブディレクターオリジナルであり、時代感があるブランドをたくさんPRさせてもらっています。www.pr01.com

松井智則
PR01. エグゼクティブディレクター

オリジナルであり、時代感があるブランドをたくさんPRさせてもらっています。
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2010.01.30

はい。

「たけし」がPR01.のブログで綴る小説も

現在25話目に突入しました。

そのうち本屋で発売されると思いますが

19話~25話目までを今日はまとめてみました。

1話目から見てくれる方はこちらから。

では「僕とサーシャの物語」

どうぞ。

19話目 


ありがとう


うつむいた

僕に見えるのは

2人のシルエット

日本の俳句が独特なように、この数日間だけで

当たり前のように話す君は、本当に不思議な印象を僕に与えてくれる。


どこから話して良いかわからないから、どうしてもしどろもどろに

なってしまう。

多分、サーシャから見ても、話しづらいって事はわかっているから

彼女も優しい顔で待ってくれている。

なんとなく周りを見渡すが、他の客も、それぞれ盛り上がっているから

僕らのほうは見ていない。

とにかく、素直に話すことに決めてみた。


「誰にだってあると思うんだけどね。ちょっとだけ、精神的にまいってたんだ。

恥ずかしい話、何も信用していなかってことになると思う。

もっと恥ずかしいこと話してしまうと、自分のことも信用してなかったんだね。」


サーシャが僕の手の上に自分の手を置いてからそっと


「今までの会話でもそんなことわかるわよ。

自分の何が特別かって分からなかった人が、自分に自信とか信用出来る

要素があるって思うわけないじゃない。。。。

よくわかってるから、なぜ、朝みたいなことになったか教えて。」


少しサーシャの対応にはびっくりした。

本当によく僕の話を聞いてくれていたということ、そして

優しく話を聞いてくれていただけの時と変わって、真実を急かすことも。。。


「ごめん。。。そうだよね。言い訳するつもりじゃなかったんだけど」


と話をつなげようとする際にも少し怒った雰囲気が見て取れる。

「いや、実は一度割り切ってみたんだ。

全部のことを。

君が渋谷にいることを僕の力が教えてくれて僕は素直に渋谷に行ったんだ。

そこで僕は栗田と君が仲良さそうにスターバックスでお茶しているのを見て

馬鹿みたいにやきもちを焼いたんだ。

気がついたらパリにいたよ。」


「え?パリ?」


「馬鹿みたいでしょ?急に目の前が真っ暗になってパリに飛んだんだよ。

自分でもびっくりだよ。

この力が理性を失うとそこまでのことが出来るんだってわかったから。

そして、前回出張で行った場所に着いた僕は、とりあえずPR01.のパリ支部の

TAKASHIさんに会いに行ったんだ。

で、もうぶっちゃけて相談したんだよね。

そしたら、TAKASHIさんが僕と同じ力を持ったボヘミアンさんという人を

紹介してくれた。」


「パリにもいるんだね。たけしと同じ力を持った人」


「そうなんだ。

彼は、その力のせいで、自分の家族や友人、全てを失って

距離を持って生きていた。

山奥で1人でだよ!信じられる?

僕は力を授かって特別になったと思っていたのに、彼はその力のせいで

人間不信になっていたんだよね。

だから僕は自分とボヘミアンさんを最初照らし合わせたんだ。

日本に帰ってきて、何事もなかったかのように出勤しようとした。

その時は、なぜだか考えるのも馬鹿らしくなった。

でも電車に乗った時に、ふと、君からもらったメールを見て

君の愛を信じることに決めた。

その時に目の前にいた人達が僕を笑ったんだ。

思えば、独り言のようにしゃべっていたんだよね。

もう、気がついたら目の前は血だらけだったんだ。」


最後のほうは、遠慮するのもやめて僕は話をした。

サーシャはどう受け止めてよいかわからない表情で

うつむいていたが、口をゆっくりひらくと


「たけしは元々自信がないっていってるから

自分で弱いのを認めているんだよね。

なのに、笑われると頭に来て、その力で

悪いことをしてしまう。

なんでだろうね? 弱いのを認めているなら

笑われたって、人を殺さないでしょ?

本当は・・・」


サーシャが最後のセリフを言おうとした瞬間

頭に直接サーシャの言いたいことが入ってきた。

僕が読み取った感覚ではなくて、サーシャが

サーシャの力で僕にテレパシーを使っている?!


(本当は、弱いとか、特別じゃないなんて、たけしは

思ってないの。

プライドが高くて、自分の思い通りにいかないから

イライラしているだけなの。

そういう意味じゃ、あなたは弱いかも知れない。

ただ欲望にね。

でも、自分の心がわからないから、そういうフリをしているの。)


ストレートに頭に話かけられるのは、やられた人間しか

わからない感覚で、心にすんなり届く。

僕はサーシャに同じくテレパシーでかえす。


(それもわかって、弱いって思ったんだよ!

嘘じゃない。

僕は自分の感情を抑えられないから、特別でもなく

自分が弱いって思ったんだよ!)


(そうね、それは素直な意見かも知れないわね。

でも絶対に確信的に、電車の中であなたは目の前の人達を

殺したはずよ。)


僕は彼女が能力を使えることを知った。

だから、僕が嘘をついていることを見抜いている。。。。


(ごめん。 そうなんだ。。。。。。)


(だよね。。。。。。。。。。。。)


時間が止まった。

サーシャの目が真っすぐ見えない。

ただ、目の前のグラスが重なった棚や

時計の秒針を追いながら心を整理したくても

何も考えられないときにサーシャが口を開いた。


「分かってね。私はあなたに本当の自分に気がついて

ほしかっただけなの。

あなたは、力のおかげで私に出会えてつきあえたって

思ってるかも知れないけど、私は自分にも同じ力が

もうたけしもわかっているようにあるの。

そういうことよ。

けっして力があることが特別だということで

あなたとつきあってるんじゃないの。

私はあなたをただ、ただ、好きになっただけ。

今日も電車の中でメールしたように、嘘をつかないで欲しいの。

私にね。

そして一番は自分に。

欲望に素直になってなんてまったく思ってないわよ。

自分で理由をつけて、後から後から、身動きとれないようにしてるのは

たけし、あなた自身よ。」


一生懸命さと、せつなさが混ざった声で話すサーシャは

今までの中で一番綺麗で、そしてその内容が本当に本当に

誰からも言われたことがない新しい発見で、僕は少し泣いた。


「サーシャ。。。。。。君が何を言いたいかわかった。

ごめんね。

全部、言い訳ばかりしてたね。

そうなんだ。

いつだって「心が弱い」とか「力のせい」とか理由をつけて

確信的にやってることを嘘ついてた。。

違うね。

僕が全部選んだことなのにね。

そして話ながらも、君に嫌われないように嘘ついてる。

そして自信がないって言ってたクセに、この力が作用して

君が信じたりするって思ってた。

今はじめて気がついたよ。

君が言う「嘘」の意味が。

いつだって君は君のその力でそれを知っていたんだね。

ごめんね。」


本当に素直に誤った。

テレビで見た、生まれたての動物の子供や、人間の子供

が無意識に生き物を殺してしまった映像がなぜか頭に浮かんだ。

僕は白くない?

生きてきた上で身に付けた防衛策が

僕をこうさせたのか?

自分が落ちていきそうな予感がした。

でもサーシャはそっと言うんだ。

悔しいくらい。


「違うよ。ただ、自分のことを

愛して欲しいってだけ、それだけ言えばいいのに。

本当に馬鹿だね。」


僕はどうやら、世界最高に馬鹿で、今日ほど

その馬鹿に御礼を言いたくなることは今後ないだろうと

君に微笑んだ。。。。

続く

たけし


20話目 

この目が


見たいものだけを見るだけの目なら

絶対に世の中に対して不満もなく

欲望なんて思いつかず

君のことだけを見て、僕は「おやすみ」って つぶやくんだ。


これは夢かな?

リアルかな?

それとも安っぽい小説かな?

僕が持った力は、僕が気づいてないだけで、実は皆持っているのかな?

人生複雑じゃないのかな?

もしかしたら、昔見た外国のドラマみたいに

この力で世界を救えるのかな?

君は僕の全てを、この僕と同じ力で知っているのかな?

僕だけが、世界の真実に気が付いていないのかな?

そして僕は、自分を弱いと思うことで、誰よりも自我をつらぬいていたのかな?


答えを知りたいと思っていた子供の好奇心はどこに消えてしまったのだろう。。。

僕は君が僕を包みこもうとする愛をこの耳で聞いて

何を思えばいいか的も絞れず、無言で右手に持ったお酒を

左手に持ち替えて

この右手で君を抱きしめようとした。

人間は、多くを望むけど、もしかしたら、腕が2本しかないように

そんなに沢山のことは手に入らないのかもしれない。

右手にいるサーシャは何気に理解しているんだろう。

最近よく街で流れている音楽を口ずさみながら

おいしそうにお酒を飲んでいる。

今は、僕に何も話す気がないようだ。

その、チームカラー吐息とかいう、流行の音楽を聞いていて

ふっと思う。


(そういえば、上司のジョンさんが、バンドでこの曲をカバーしてたな。。。

曲名なんだっけ?)


ジャズが流れる店内で、僕がちょっと思ったことにでも


「右手だよ。この曲のタイトルは」


サーシャが口を開いたと思ったら、運命なのか偶然なのか

さっきまで考えていた、この僕の両腕が持つ意味を

君は簡単に答えてしまう。

何か話したいけど、もう、何も話す必要なんてなくて

サーシャに触る右手、右腕から、もう家に帰って

君とゆっくり眠りたいって思った。


「ねぇサーシャ。。。家に帰らない?」


僕が黙っていた時間なんて3分くらいだと思うけど

たぶん君は気が付いているんだろう。

僕の心に。。。。


「そうね、帰ろうか。」


君はそうやって、僕が今まで話していたことや

メールしていた時だって、僕より強いその力で

僕が言いたいこと、全て分かっていたんだろうね。

もう、話すだけ、余計な時間を使うような気がして

僕はお会計を済ませると、サーシャが口を開いて


「少し酔っちゃたから、いたずらしたい気持ちになったわ。」


それだけ言った瞬間に、空間がゆがんだのを感じて

気が付いたら僕とサーシャは学芸大学の僕の部屋の中にいた。


「ね、たぶんあそこの店長さん、超びっくりしたでしょうね」


誰よりもかわいい、いたずらっぽい笑顔で君が言うから

僕だけじゃなくて、自分も飛ばせる位の力にびっくりするより先に


「ねぇ、愛してるよサーシャ。」

すっと、口から出た台詞に


「今のは嘘じゃないね。100点だよ」


僕は泣きたいのか、抱きしめたいのか、なんだかどうでもよくなって

そして、いつもの言い訳じゃない、そのどうでもよさが心地良くて

全部実行してから、今日は君に「おやすみ」っていうことに決めた。

続く

たけし



21話目 

どこまでいっても


「過去がついてくる」

僕はうまく君を愛せているだろうか?


昔いったロンドンでは懐かしい友達に出会い

優しく包んでくれたことに気が付いて

子供の頃、母に愛された記憶がよみがえる

だけど永遠に続いた事がない、この僕が抱えるトラウマ。

動揺していたのも忘れて

君の100点発言に自信と興奮を覚えて

すぐに僕は誰よりも欲望に正直な狼になった。

仕事では意気地なしの僕のクララは

つい先日に出かけたパリのエッフェル塔より立派で

サーシャはただひたすら鳴き続けた。

力が共鳴しているのかな?

相性がいいのかな?

最近問いかけ続けてばかりいる日常に、答えがなかったけど

今、この瞬間ばかりは素直に受け止めていいんだろう。

今目の前にいる君が僕の腕の中で素直だから。

そして、このときの為にあったかのように

何度クララが力果てても、僕はクララを立たせることが出来る。


「たけし!!もういいよ、もういいよ・・・。」


(どんなに必死に頼まれたって、クララが眠ることはないよサーシャ。。。)


君の力を、この目で見た僕は

本当に君がクララをどうにかしたければ

なんとでもなるってこと僕は知ってる。

だから、今日は君のこと「天邪鬼」って呼ぼう。


僕が少し爪を立てれば、君のその真っ白な肌に僕の跡が残り

君に気づかないように、その跡は「たけし」になってるんだよ。

もし、今日のこの時間が未来を作り、その未来が君から生まれたら

その名前はなんにしよう?

想像が創造される力を持つ事、力を持った僕たちは誰よりも知っている。

だって、頭で考えたことが現実になってしまうのだから。。。。

こんなときの僕はきっと器用なんだろうね。

必死で腰を振りながらも、僕の頭は宇宙に飛んでいく。


「ねぇ、サーシャ、、、いたずらっ子ぽくて悪いけど

僕が考えていることわかる?」


マガジンハウスの週刊誌みたいな声を出していたサーシャが


「こ、この瞬間、たぶん、私たちと同じ、、同じように繋がってる人が

いるるの、、、あなたがパリで出会った人みたいな・・・・!!!」


なんだかものすごくいとおしくなって僕は自分が動くのをやめようとしたけど


「やめないで!!!」


サーシャが続ける。。。。


「たぶん、、、必要とされてるの、私たちのような人種が、、世界にいる意味があって

何かのきっかけで、、何かが起こると思うの。。。。。。。。。。」


集中するのを感じて、僕は返事をするのをやめた。

急に何か感じなくちゃいけないって思ったから、ずっと見ていようと決めた

君の顔を焼き付けたあと目を閉じた。

丸い、丸い、丸い、丸い、丸い、丸い、丸い地球が頭に浮かんでくる。

距離があるのは知ってる。

でも、色んな大陸に、大きな力を感じた。

嘘じゃない。

たぶん、サーシャが感じているように、この瞬間に

何か特別な意味があるかのように、世界に、いや、地球に、そして

散らばる力を持つ人々にシンクロしていくを感じたんだ。


(何かしないといけない?僕はしたいのかな?)


ふっと思った。

窓に強い風があたるのを感じて、


(今日は寒かったな)


思いは世界に広がり、そして、自分だけの感情に走って

目の前の現実につながり、気が付けば

手に触れている君のことで終了した。


「あぁ、君の言うとおりだったね。何も認めないで

自分ばかりを見ていたし、難しく考えすぎていたよ」


最後の、君のやせ我慢は


「ね。。。。言ったとおりでしょ。。。。」


サーシャが、きっと僕よりとても若いのに

なんで真実を射抜くような目で、いつもまわりを見渡しているか

僕は33歳にしてやっとわかったんだ。

そして、僕の大切な「天邪鬼」は、やっとサーシャに戻っていったんだ。


続く

たけし


22話目 

ドラマティックに戻って


僕は曼荼羅

君は黄緑

明日は紫

なんで色で分けるんだろう?


サーシャがサーシャに戻って、僕ら2人は自宅の天井を見上げて

少しだけ話をしないひと時を楽しんだ。

話をしないひと時は今までの流れからすれば楽しくても

色々と悲しい

もう、今日という一日が終わっていて、明日が来ることも

色々と悲しい

君が何を考えているか、前向きになって空想してみることも

色々と悲しい

2人が混ざれない事実や、混ざれないから良いんだという事実も

色々と悲しい

少し僕の背中が冷たいことは事実喜ばしくても

色々と悲しい


なんで自信がないか自分でもわからなくなるけど

一生こうなのかも知れないって気がついているから

決して君には嘘をつかない。


「ねぇ、たけし、、、、私寝るね。。。。明日早いの。。。」

「うん。わかった、おやすみサーシャ」

僕らは手をつないで眠った。

色々あったけど、色々楽しいし、悲しかった。

ボヘミアンさんが言っていた過去が、今後僕に訪れるかも知れないが

頭に浮かんだけれど、疲れた頭は僕を眠りに誘った。

サーシャと抱き合ったことで感じた、力を持った人達が世界に散らばっている

感覚が作用したのか、僕は不思議な夢か現実かわからないものを見ることになる。

僕は誰がみても、そう思うであろう高級なホテルのロビーにいた。

何がなんだか分からず自分の服を見ると、さっきまでは何も着ていなかったのに

ちゃんと普段と同じ格好をしている。


(ここはどこだろう?)


目の前のレセプションらしき場所に短髪で金色の髪をした男が見えるが

英語が話せない僕は、目でいろんな場所を追う。

何か書いた看板が見えるが、英語なのかどうなのかわからない。


(英語っぽいけど。。。なんだろう?)


少しだけ会話出来るような気もして、レセプションの男に話かける。

力が作用しているのか、簡単に返事が返ってきた。

もしくは、その返事は力で受け止めたのかもしれないが。。。


「何を言ってる?ここはマドリードのホテルだよ?」


ここで僕は夢だろうと思う。


「そうですよね。なんとなくね。。。お酒を飲みすぎて。。。」


レセプションの男はしかめっつらをして、僕を見つめていたが

どうでもよくなったのか、自分のPCにむかった。


(さすがに不思議なことになれたけど、めんどくさいな。。。)


正直な意見だった。

夢を見る睡眠は浅い眠りだとテレビで見たのを思い出す。

こんな夢を見るくらいなら、疲れが取れる睡眠をしたいものだ。

力を持っていても、結局、自分が予測出来たり、制御が出来る

術を身につけなければ、苦労が増える近頃を思い起こせば

あまりありがたいものとも思えない。

とにかく、夢を見ているなら見ているで、楽しんでやろうと僕は考えた。

ホテルから飛び出すと、その目の前は小さな広場で、夕方頃なのか

良く分からないが、色んな屋台が出ていて人にあふれていた。

無類のビール好きの僕は、さっそくひとつの屋台に向かって歩く。

そして、力を使ってビールをひとつもらうと、どこが楽しそうか

まわりを見渡して歩いてゆく。

まだ余韻が残る体にうっとりしながら鼻歌をうたっている僕が

めずらしいのか、日本人がめずらしいのか分からないけど、

皆笑顔でこっちを見ていた。

さみしくなりそうな路地はさけて、沢山の人が向かっている方向に

僕もついていく。


(こういうのもいいな。。。何も考えずに行動すればいいし、規制もない)


大きな広場で、人も500人くらいが集まって騒いでいる広場で

とりあえず腰を落ち着けた。

若者から、老人までが集まる広場で肩ひじついてぼーっとする。

眺めているうちに集まった中に薄い煙が見える。


(なんだろう?)


じっと見ていると、数人の頭の上にうっすら浮かんでいる。

なぜか興味が湧いて近くでみてみようと立ち上がり群衆に入り込む。

色んな人とぶつかりながら夢なのにリアルにぶつかった感触が

あるのを楽しみ、煙に一直線に向かう。

頭に煙が浮かぶ青年にたどり着いた時、青年が僕の顔のほうを向いた。

それまで彼の方向にむかうまでは、隣の女の子と話していたはずなのに。


(ちょっと強引に彼にむかって一直線に歩きすぎたかな?)


不思議に思っていたら彼が急に


「日本から来たんだね。さっき君らしい力を感じたよ。

今まで感じたことがない波長だったから、新しい仲間だって思ったよ。

僕はジョニーって言うんだ。

多分、世界にいる104人目だったはずだけど。。。

まあ、とにかく会えてうれしいよ。」


彼の唐突な話に面喰って黙っていた僕に


「そうか、、、さっきいきなり覚醒したから、現状が良くわからないよね。

君は日本人だよね?

簡単に説明すると、力を持った人間が、同じ人種の人間と触れ合うと

こういった現象が起きるんだよ。

僕らは「覚醒」って呼んでるけど、力を持った人間同志だけが出す波長で

存在があらわになるんだ。

そして、世界中の力を持って、覚醒した人間のところに精神だけが

飛んでいくみたいなんだよね。

ちなみに僕の前にあらわれたのが、君で50人目かな?」


本当に簡単に話してくれたから、僕がおかれた状況はすぐに

把握出来たけど、サーシャとむすばれて、それで感じた

地球との一体感が、僕をランダムにスペインに飛ばして

そして偶然会った彼のセリフに、ただただ僕は夢心地に


「そうなんだ、、、俺の名前はたけしです。。。」


としか答えることが出来なかった。

続く
たけし


23話目 

今日だって


取り留めのない気持ちで


押してしまえば、後戻りできないボタン

思い切って押してみたら

後は結果を待つだけ

何も起こらないことだってあるはずだ


こんなに驚かせないで

と、さっきまでは思ったが、なんだか自分が力を持ったという事の

意味とか理由に少しづつ近づいているような気がしてきた僕。

青年の台詞でまた我にかえるのだが。。。


「やっぱりびっくりするよね。

起きてから気には気が付くはずだよ。

夢だったのかな? いや、夢じゃなかったってね。」


「面白い話かたするね。

やっぱり君も同じような経験をしたってことだよね?」


「たけし君だっけ? 僕はレオ。 よろしくね。」


「レオ君。。。よろしく」


周りの騒がしさも、だんだんわからなくなって、レオと名乗る青年だけに

僕は集中する。

スペインの夜はいつもこうなのか?

この世界においての設定が賑わしいものなのか

お祭りみたいな広場の喧騒。


「どうも最近、不思議なことが多くて何から聞こうか迷ってるんだ。

君はいつ、君の言う覚醒をしたの?」


「ははは。僕も力を持ち始めた時そうだったよ。

18歳の頃、力を授かって最初は悪いことばかりに使っていたんだ。

2年くらい遊んで空しくなったんだよね。

お金を持っていても、嫌いな人間に何かしても

僕の心の中は何も変わりはしなかった。

そしたら僕は力を持った意味を探し始めた。

なんて言ったらいいんだろう?  

自己満足や、誰かを傷つける以外のことをしてみようと

ふっと思った。

そして僕はこの力で、まずは体が弱い友達に力を貸してみた。

歩けなかった友達にずっとくっついて、力でサポートする暮らしを

半年ほど続けた。

そんな時だったかな? 友達が急に

「心から君にありがとうって思うよ。」

って言い出した。 本当に何も考えずに、その友達の為に

なるように力を使っていた僕は、感謝されたことも嬉しくて

その友達、いや、女の子が好きになった。

そして僕らは結ばれたんだ。。。。

で、その夜、今の君と同じように僕は夢を見たんだ。

君が日本からスペインに来たように僕はブラジルへ行っていた。

そこで、NOBUという別の力を持った人に出会って

世界に力を持っている人が沢山いることを聞いたんだ。」


楽しそうに話すレオを見ながら、この世界、いや地球に

何か僕らが存在する理由があるのを本当に肌で感じた。

なぜ、覚醒したら夢の中で他に力を持った人に出会うんだろう?


「たけし君、そこなんだよね。

僕も同じ事を思ったんだ。 なぜ、夢で力を持った人が出会うのか?

ブラジルでNOBUに出会って、彼にも同じ質問をした。

彼は答えたよ。

「レオ、君と同じような力を持った人が沢山いるんだ。

そして、人間が一人一人性格が違うように、いろんな種類の力を

持っている人がいるんだよ。

君と同じように僕もこういった経験をしたときにある力を持った

人間に同じ質問を聞いた。

彼には未来を見る力があるらしく、彼が言うには

「どんなにインターネットやそれに付随する何かが発達しても

僕ら以上の伝達能力は現れない。

近い未来、この力を持った人間にだけ何かが届くはずだ。

だから、そのときをじっと待てばよい」

って、彼は言うんだ。

意味が分からなかったけど、なんとなく、こんな風に夢で紡がれること事体が

普通に暮らしてたときから思えばすごいことだから

自然にそう思えたよ。」


「なぜか分からないけど、そのブラジルの人が言った感覚はすごくわかるんだ。

たぶん未来を見る力は僕にはないと思うけど、そのブラジルの人の話を聞いただけで

そんな気持ちがより強くなったよ。」


レオ君は少しだけ黙ったと思ったら口を開いて


「どこだっけな?

香港かどっかに旅行したときに聞いたことがある。

そこでもたまたま力を持った人に出会ったんだけど、その人が言うには

想像力や、力を持った人が近くにいることで、どんどん新しい力を

手に入れる人間がいるらしいってこと。

普通はテレパシーや、念動力、先見、せいぜい2個くらいしか使えないはずなのに

感情の起伏や、きっかけとなる何かで20個以上の力が使える人がいるんだって。

もしかしたらたけし君はそれかもね!!!

だとしたら、その香港の人が言ってたけど、すごい少ないらしいから

たけし君は力を持った人の中でもより特別なのかもね!」


興奮するレオ君を見て、最近、テレポートや念動力や、いろんな力が

どんどん使えるようになっている自分がいることに気づいた。

「たくさん力を持てば持つほどいいってわけじゃないでしょ?」


なんとなく聞いた質問に


「ブラジルのNOBUも、香港の人も言っていたけど、力を持っていない

人間が、何かしらの才能をたくさん持っていれば何かで成功したり

社会的地位を持つように、力を持っている人間の中でも、よりたくさんの力を

持っている人間が何かを起こすみたいだよ。

たけし君がそうなのかは知らないけど、僕みたいに人の心が求めていることが

わかって、人の傷とかを治すだけの力を持っている人よりは何かをする人なのかもね。」


自分の持つ力を話すレオ君を見て


(確かに今の僕だったら何一つ困ることや出来ないことはないのかも)


とすぐに思ってしまう自分の心が

もう普通でない人生に変わりつつあることを

実感しながら明日をむかえる準備を覚えた。。。

続く

たけし


24話目  

正しくもない

一人佇んでいるような感覚

仕事がら周りにはたくさんの人がいて

この力で世界とつながり

また一人になる

将来について考えるが例え始めてではなくても


時を一方的に削る部屋に僕はいた。

レオと名乗った少年との出会いは、正直自分が強くなったかと

思わせるほど、冷静な気持ちを僕に与えてくれた。

右手は額の上、左手はサーシャの手を

そして額の上にある僕の右手を自分で天井にむけて伸ばして


(本当に、何がつかめるんだろう。。。)


夢の最後に感じた、力を持った上での未来を思い描けるほど

最近の僕からは想像できないところまでいこうとしていた。


「どうしたの?寝れないの?」


どうやらサーシャが目を覚ましたようだ。


「どうやら覚醒したみたいだよ」


真っ暗な部屋で僕の言葉が響く。


「あら?あなたはどこにいけたの?」


サーシャがもう覚醒を経験したことに驚きもしたが

彼女を知った上で、彼女がその胸に秘めている

過去を知らなくても良いと思った。


「僕はスペインに行ったんだ。

僕が出会ったのはレオ君っていう少年だったよ。

おかしなもんだね。

僕よりずっと世の中を知っていたよ。」

「あら? あなたより世界を知っている人なんて

たくさんいるわよ。よかったじゃない。

特別になることに不安を抱いていたんだから。。。。

あなたも特別な人がたくさんいることを知って

また、普通になれるわよ。」


茶化したように寝ぼけて話すサーシャの言葉が

普段ならイライラしそうなのに今日はとても心地良く感じた。


日常に不満を感じて

特別になりたいと思っていたら

手に余る力を手に入れた。

手に入れた途端に、それを不幸だと自分で感じたらすぐに

特別な人がたくさんいることを知って

また、日常の仕事で感じることと同じように

社会の歯車の一部になったように感じて

そしてまた普通に戻った気分になる。

そんな世界の中で、欲張りな僕は、また特別を求める。

ふっと、経緯を思い出していた僕は


「君とこうしていると

例えば僕が何かをしないといけないんだとしても

もっとシンプルに生きてみたくなるね。」


今窓の外を黒い鳥が飛んでいったら何かしらの矛盾が

僕の視覚に写るんだろうな。

君は意味のない思考をよんだのか

直感で感じたのか


「あら? それはキコリになるようなものなの?」


また少し眠れそうだと感じた僕は


「そうだね。キコリになるようなもんだよ。」


と答えたまま、ゆっくりと眠ることに決めた。


(不思議なことだ。。。

以前は、色んな人に混ざって、誰かを否定することに

やっきになっていたけど、本当の気持ちをごまかしていただけで

簡単にいうとかっこいいことしようと思ったのがオリジナルでなく

世間にある価値を僕が真似ていただけなんだな。。。)


急に泣きたくなった。

 左手   作詞・曲 ジョンさん 編曲 toiki


ここは何処だろう?

ぐるぐるまわる世界

なんとなくでいいから今日はおやすみ。。。

明日晴れたら

ずっと考えていた

僕がいいと思うこと全部やりたいなぁ


行ってみよう

この先あること全部

見えるならそれでいいや


意味のないこと内容の無いこと

全部話して


君が思いつく言葉が心地いいから

振り返らないでね 二人だから出来ること

見えるまで傍にいてよ

わかるなら今日も全部、この先もそう。。。


ねえ?

一生のうち掴めるものは

二人のほうが多いと思ったけど

僕はそんなことを君に話した

どうでもいいことみたいに

分かるでしょ?

自分にかえる世の中で今日も

あがいたりしながら暮らそうよ

この先も

二人だから出来ること

見えるまで傍にいてよ

見えるまで今を全部

この先で

ねぇ?

時間って過ぎるほど美しく

感じるのか、とても不思議なんだ

昨日、そんなことを君に話した

どうでもいいことみたいに

わかるでしょ?

君と過ごすうえで思う夢

最後はどこにたどりつけるだろう?

君と


いつもでも何かに酔っ払っていたあの頃のように。。。

おやすみなさい。


続く

たけし



25話目

戦い

いつか出会えるのでしょうか?

まだ見たことのない世界に  こんな自分の足元すらおぼつかない僕に

鏡の中のもう一人の僕に語りかけるけど

これ以上 不満のない人生にそれ以上を求めることが正しいかもわからない


正確にいえば2度目の眠りは

ジョンさんが歌う「左手」がその眠りに誘い

憂鬱さも少しだけ残りつつ、窓から差し込む太陽に心地よさも感じた。

現実逃避ではないけれど、サーシャと眠る前に話したことは

これから起きるであろう、僕らの人生を変えるような出来事を

感じた予感に対する僕らなりの解釈だったのかも知れない。


「おはよう。。。。」


昔の少女漫画みたいな仕草で目をこするサーシャ。。。


「おはよう。。。君も感じてる?」


そんな予感を君に話してみたら


「そうだね。 そろそろ行こうか?」


やっぱり気がついていた君は


「シャワーだけ浴びてくるね。。」


それだけ言ってお風呂にむかう。


その間に僕は顔を洗って、汚れてもいいような服に着替えた。

お風呂から出てきたサーシャも、すっかり出かけられる感じになると


「行こうか」


そういって僕と手をつないだ。

その瞬間、昨日経験した空間のゆがみと共に僕らは森の中にいた。

目の前にあるその風景は、つい最近来た懐かしさを感じる場所だった。

目の前の小屋に入ろうか、入らずにいるべきか悩む間もなく


「たけし君かい?」


と小屋の中から声が聞こえる。


「はい。。。。ボヘミアンさん、ですね」


そう、パリで出会ったボヘミアンさんの自宅だ。

サーシャと二人で部屋の中に入る。

ボヘミアンさんはこんな深夜なのに起きていた。


「君達が来た理由は話さなくていいよ。

さっき、たけし君の隣にいるサーシャさんが

教えてくれたからね。」


「そうなんです。知らなくて良いことに僕達は気がつきました。

もう、ボヘミアンさんも分かっているように僕達3人じゃないと

出来ないことをやりにいく為に、ここに来ました。」


「たけし?あなたは覚醒したからわかってるけど

ボヘミアンさんは、感覚では分かってもちゃんと理由をわかってないわよ。」


サーシャがいつだってフォローしてくれる。


「たけし君。。。君の最近の進化に僕はついていけてないよ。。

僕が自分の力を知った時は、世界に多分3人くらいしか力を持った人は

いなかったんだから。。

それもちゃんと出会ったことなんてなかったしね。

だから覚醒出来なかったんだ。

ただ、力が教えてくれる感覚だけを知っていたんだよ。

世界に力を持った人が増える感覚を知っても、覚醒する要素が足りなかった。

君達二人のような出会いが僕は経験出来なかったんだよ。

だから君達が僕のところに来たちゃんとした理由を教えて欲しいね。」


僕達がボヘミアンさんを迎えに来た理由。。。。


「僕は昨日の夜 覚醒しました。

そして、その夢の中で出会ったレオ君が話した言葉で

覚醒の中の本当の理由を知りました。

多分、それは僕達3人にしかできないことだったんです。

なぜなら、それを叶えるにはある能力が必要になるからです。

レオ君はテレパシーしか使えない人でした。

そして彼はそのテレパシーを使う能力者の中でも

一番能力が高い人だったんです。

そして彼は、僕に対してその力で伝えました。

この世界で、能力者がいる意味、そして能力者が

やるべきこと、そして役割分担。

そして、僕達3人だけが持つ能力が持つ意味です。

ここまで言えばわかりますよね。」


ボヘミアンさんは少しだけ寂しそうな顔をして


「あぁ。。。分かるよ。 その能力は

テレポーテーションだね?」


「その通りです。。。」


サーシャは隣でゆっくり頷きながら、これから

僕達がやらなくてはいけないことを想像して

少しだけ、本当に少しだけなんだけど

その目に涙を浮かべていた。。。。。


続く

たけし


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