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オノ セイゲン空間デザイナー/ミュージシャン録音エンジニアとして、82年の「坂本龍一/戦場のメリークリスマス」にはじまり、多数のアー ティストのプロジェクトに参加。87年に川久保玲から「洋服が奇麗に見えるような音楽を」という依頼により作曲、制作した『COMME des GARCONS / SEIGEN ONO』ほか多数のアルバムを発表。Photo by Lieko Shiga

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オノ セイゲン
空間デザイナー/ミュージシャン

録音エンジニアとして、82年の「坂本龍一/戦場のメリークリスマス」にはじまり、多数のアー ティストのプロジェクトに参加。87年に川久保玲から「洋服が奇麗に見えるような音楽を」という依頼により作曲、制作した『COMME des GARCONS / SEIGEN ONO』ほか多数のアルバムを発表。

Photo by Lieko Shiga

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N.Y.C.のインターンシップ事情(その2)

2011.07.15

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 ニューヨークではメジャースタジオは、昼夜交代のシフトがとられている。ティーボーイは時給US$5のアルバイトから始まる。深夜でもロビーでセッションが終了するまで電話番をしながら待機している。深夜にハンバーガーを買いに走らされたりする。ここからセカンド・アシスタントのポジションを狙うわけだが、いつまでたってもポジションが空かない場合は、ずっと時給US$5のアルバイト状態が続く。一流スタジオだから、いい仕事がみられるか?というと全うではない。スタジオを覗けるチャンスは、買い出しにいったハンバーガーを届ける瞬間だけ。コントロールルームのドアをあけるタイミングと、部屋に一歩入った瞬間、ここで「さりげない笑顔」が重要なのだ。ここで(さっと客の気配を感じることのできる)ウェイター経験者はちょっと有利になる。「Anything else?」クライアントが帰った後の掃除、ロビーで待機していることが仕事(=業界への適性を試されている)なので、実際の作業を見てレコーディングに関するテクニックを勉強するチャンスは次のポジションに昇格するまではない。 

 音楽スタジオは、慢性的に人手不足。アシスタントは足りない。インターンであっても、何か頼まれてから動くのでは遅い。そこで今、何が進行しているのかを察知する。使える社会人としての感覚は、学校では学べない。クライアントは性格のよい若者にはいろいろ教授してくれる。スタジオでは、ポジションが空けばすぐに昇格。見込みがないとすぐ辞めさせられる。新しいインターンが入ってくると「こいつ今日から入った若いやつです。旦那さまどうぞよろしゅう頼みます」と紹介され、1年後には一人前のアシスタントである。やる気のある若者はこちらの方が成功する。

 注目すべき点は、NYCのアシスタントは、サービス精神が旺盛で一流の飲食業、接客業を連想させることだ。素早く、とにかくよく動く。無給インターンのくせに妙に明るい。ゴマすりをしているわけではなく(多少はあるが、嫌みがない)、なんでも一生懸命やる。空気、気配を読み、言葉に出さなくとも相手の要求を察知する。茶道でいうところの「おもてなしの心」「一期一会の精神」。コミュニケーションがとれている。何を習得、吸収するかは本人の心構え次第であり、サービス精神と積極性がないのは駄目だ。笑顔は欠かさぬこと。そして与えられた仕事のチャンスは、それを教えてくれた先輩よりも上手くできるようになろうという心がけ。
(続く)


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 私が1995年にスタートした日本で最初のインディペンデント(親会社やグループ企業のない)のマスタリングスタジオ「サイデラ・マスタリング」。開設時より、インターンシップ・プログラムがあり、現在までにのべ120人以上が経験した。そのマニュアルは、彼らにより引き継がれながら日々更新され続けている。