Vol.02 PAT METHENY / WATERCOLORS(1977)
こんにちは、弓削匠です。
第2回目にご紹介するのは、「沈黙の次に美しい音」をコンセプトとする音楽レーベル「ECM」に所属する、パット・メセニー(PAT METHENY)の2ndアルバム「ウォーターカラーズ(WATERCOLORS)」です。
「ECM」はマンフレート・アイヒャー(Manfred Eicher)総帥のもと、1969年11月にドイツ・ミュンヘンで創設されたジャズを主としたレーベルです。音楽はもちろんのこと、アートワークが際立って素晴らしく、従来のジャズアルバムには無い斬新なデザインでも注目されたレーベルでもあります。
看板デザイナーはというと、ブルンクハルトとバーバラのヴォユルシュ夫妻(B&B Wojirsch)とディーター・レーム(Dieter Rehm)がやはり有名ですね。
ただ、メセニーの2ndアルバムでは、ラヨス・ケレステス(Lajos Keresztes)とディーター・ボーンホルスト(Dieter Bonhorst)という2人による作品になっています(このコンビは1977年リリースのECM作品に多数クレジットされています)。
話は戻り、なぜ「ECM」が時代を席巻していたのかというと、総帥であるアイヒャーが必ず最終チェックをして、世に送り出されていたから。「ECM」の全ては、彼の知性と感性の所産であり、音もビジュアルも、アイヒャーの美学により統一され、どこまでも美しいのであります。
メセニーとの出会いは1987年、当時テレビ朝日で放送していた「ベストヒットUSA」。ちょうどメセニーを観た時は、1位、2位をメセニーの「Last Train Home」とU2の「With Or Without You」で競ってた記憶があります(今では考えられないんですけど…)。
いまだにその2曲を聴くと、一瞬のうちに子供の頃へタイムスリップしてしまうのが不思議でなりません。たぶん、音楽の特性も含め相当衝撃的だったんでしょうね。
そしてこの「Watercolors」は、僕とメセニーとの出会いから遡ること10年前、1977年にリリースされました。この年は、メセニーの現在に至るまでの右腕、ライル・メイズを獲得した年でもあります。
僕にとって「ECM」という存在は、音楽とビジュアルとイマジネーションの美しい関係性を真剣に考えるきっかけを与えてくれた、大切な音楽レーベルです。
音楽だけでなく、さまざまな文化において、圧倒的な美でもってクリエイションされた作品が溢れることを祈って、この第2回目を締めたいと思います。それではまた、来月お会いしましょう。
PROFILE
1974年、東京都生まれ。1996年、桑沢デザイン研究所を中退後、劇団や芸能人のために衣装を手掛ける傍ら、シャツのオーダーメードブランドを立ち上げる。2000AWよりファッションブランド〈ユージュ(Yuge)〉をスタート。土岐麻子のアルバム『乱反射ガール』や一十三十一のアルバム『CITY DIVE』のアートディレクションを手がけるなど、アートディレクターとしての一面も持つ。2018年6月、代々木上原に〈アダルト オリエンテッド レコーズ〉をオープンし、“現代のAOR”を発信中。