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小西康陽×坂本慎太郎 対談"音楽のはなし"--前編

2013.01.09

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小西康陽と坂本慎太郎。ミュージシャンとして20年以上のキャリアを誇る二人は、2011年、奇しくも時を同じくして、互いに自身初となるソロ作品をリリースし、忘れ難き震災が起きたこの年のシーンに強烈な痕跡を残した。そして2013年、この対談で意外にも二人は初めて互いの音楽について語ることになる。距離を縮めるようにゆっくりと、しかし着実に進む会話の中から、彼らに漂う「今」のムードを読み取る。

後編はこちらから。

Photo_Shota Matsumoto
Edit_Yohei Kawada
Thanks to ひげたか

小西康陽 Yasuharu Konishi:
1959年生まれ。札幌出身。1985年に「ピチカート・ファイヴ」のメンバーとしてデビュー。2001年の同バンド解散後も、作詞や作曲、編曲、DJ、リミキサーとして幅広く活躍。2011年5月にはピチカート・ワン名義で自身初のソロ・アルバム『11のとても悲しい歌』を発表。昨年10月、八代亜紀の本格ジャズアルバム『夜のアルバム』をプロデュースし話題を集めた。

坂本慎太郎 Shintaro Sakamoto:
1967年生まれ。大阪出身。1989年にバンド「ゆらゆら帝国」を結成。「日本語のオリジナル・ロック」を追求し、独自のサウンドでシーンに圧倒的な影響を与えた。同バンド解散から1年後の2011年、レーベル「zelone records」を立ち上げ、自身初のソロ・アルバム『幻とのつきあい方』を発表。2013年1月11日(金)にNewシングル『まともがわからない』をリリース。

僕はギター少年だったので、レコードよりもギターだった。(坂本)

ーお二人がお会いするのは初めてでしょうか?

小西康陽(以下、小西):先日、高円寺のU.F.O. CLUBで僕がDJしていた時、一瞬「アレッ、坂本さんだ」と思って、遠くにお見かけしたんですけど、もう一度振り返った時にはもう姿はなくて。

坂本慎太郎(以下、坂本):でも、けっこう長い時間あの場にはいましたよ。小西さんに代わる前からずっといたんで、DJは全部聴いてたんですけど。

小西:恐縮です。

坂本:友達がやってる店でして。小西さんがDJをやるというのをお店で見かけて、ちょっと顔を出しただけなんですけどね。

小西:初めてお会いしたのは、以前、僕がフジテレビで音楽番組の司会をやっていた時に、ゆらゆら帝国がゲストで出演した日でしょうか?

坂本:小西さんが司会で、演奏の後に短いトークみたいなのがありましたね。話したのはその時だけですし、もう10年以上も前になるんじゃないですか。

小西:あの日、スタジオに入って当日の出演アーティストがゆらゆら帝国だと聞くまで、じつはまったく知らなかったんです。

坂本:ああ、そうですか。

小西:どうやらものすごく話題になっているバンドだという噂を聞いて、あの日初めて観たんです。

ーその時の印象を覚えてますか?

小西:サイケ、でした。僕は自分で聴く音楽を大きく2つに分けてるんですよ。自分でも作れるかもしれないっていう音楽と、自分には無理だっていう音楽。ゆらゆら帝国や坂本さんの音楽は、完全に後者ですぐ降参してしまいます。

坂本:多分、当時はバンドを結成して10年くらいの頃だったと思うんですけど、本当に小西さんとは接点のないところで活動してたと思うんで。憶えてるのは、僕はそのテレビ番組に出た時に、小西さんに「ネオGS(※編集注:80年代中期に起こった音楽ムーヴメント。代表的なバンドにザ・ファントム・ギフトやヒッピー・ヒッピー・シェイクスなど)の人たちと関係あるんですか?」って聞かれた気がするんですよ。

小西:多分そういうものを感じたんでしょう、最初に。たしか、ワウワウ・ヒッピーズというバンドを連想した記憶があります。

坂本:明大前にモダーンミュージックというレコード屋さんがあって、当時はあそこの店の周辺の人たちと一緒にやったりしてましたね。レコード好きの中でも、とんでもないサイケとかジャーマンロックとかを掘り下げている人たちが属しているシーンみたいなのがありまして、そういう、いわゆる雑誌やメディアには取り上げられないところにいました。

小西:モダーンミュージックは僕も行ってましたよ。

坂本:え、本当ですか?

小西:ええ。自分のバンドをやる直前だったかな。

坂本:この歳になって、長くやってるミュージシャンの人と話してたりすると、20歳くらいの時にモダーンミュージックに通ってたって言う人がけっこういたりするんですよ。それが全然違うジャンルの人だったりするから面白いですね。

小西:ただ、僕の欲しいレコードのほとんどは激安コーナーの中にありましたけど。

坂本:当時はサイケとかプログレを取り扱っている店があまりなかったんで、少し変わった音楽というか、アヴァンギャルドな方向に興味を持つと必ず行くっていうような店でしたよね。

小西:今でも、電子音楽とか現代音楽のレコードで欲しいのがあるととりあえず電話しますね。でも大抵は「ない」って言われます。

坂本:最近は行かれました?

小西:いや、もう全然。お店には行ってないです。

坂本:僕も最近は、めっきり。レコード屋さん、他にどこ行ってました?

小西:色々ですね。僕は逆に、自分で音楽をやっていて言うのもアレなのですが、楽器屋さんにはまったく行かないんですよ。というか、楽器にまったく執着がない。自分で楽器屋さんに行ったのって、今持っているベースを買いに行った1回きり。それも見た目で選んで、試し弾きせずに買いましたね。ライヴの時以外弾かないから、弦すら自分で変えたことがない。僕はまったく楽器に興味がないんですよ。

坂本:高校の時も大学の時も、昔からやたらレコード買いまくってる人がなんであんなに買えるのかずっと分からなかったんですけど、最近、それって楽器をやってるかやってないかの違いだってことに気づいたんですよ。大学の頃って、僕は楽器のローンを組んでたり、スタジオ代とかでお金掛かってて。だからみんな、その分を全部レコードにつぎ込んでたんだなあ、と思って。

小西:はいはい。

坂本:僕はどっちかというとギター少年だったので、レコードよりもギターだったんですよね。だから枚数で言うと、そんなに買ってないんですよ。

ー小西さんが楽器に執着されない理由って何ですか?

小西:うーん、上手くならないんですよ。それがなんか嫌で。僕は今、ピアノもベースもギターも、ちょっとずつは弾けるけど、今弾ける技術ってほとんど中学生の時に覚えたものだから、実際はほとんど上達してない。

坂本:え、楽譜は読めるんですか?

小西:楽譜はこの仕事に就いてから読み書きできるようになりました。読み書き、と言いましたが、正確には書く方だけです。

坂本:勉強したんですか?

小西:若い頃の話ですが、例えばホーンセクションの人にお願いするっていう場合に、見よう見まねで必死に譜面に書いて持っていくと「これお前、間違ってるよ」って怒られるんですよ。そうしてるうちに覚えていった感じです。

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