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内と外が語るブランクというキャラクター。 Vol.1 ディレクター 大谷拓三

内と外が語るブランクというキャラクター。 Vol.1 ディレクター 大谷拓三

2017年・春夏シーズンにデビューを飾ったばかりの東京発のニューカマー〈ブランク(BLANCK)〉。バッグブランドでありながら、アパレルアイテムも同時に提案するという従来にはない新たなスタンスを打ち出し、早くもブレイクが期待される注目株だ。約20年にわたってファッションシーンの中心に身を置き、名だたるメーカーで辣腕を振るってきたディレクターへのインタビューから、その実態と魅力を探る。

  • Photo_Shunsuke Shiga
  • Text_Naoyuki Ikura
  • Edit_Shinri Kobayashi
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大谷拓三 / ディレクター

1977年生まれ。文化服装学院を卒業し、数社のアパレルメーカーでキャリアを重ねた後、宮下貴裕が率いた人気絶頂期の〈ナンバーナイン〉でアトリエ統括マネージャーを務める。ブランドの第1次解散に伴い、2010年よりカリフォルニア発のスペシャリティストア「ロンハーマン」のメンズデザイナーに就任。'16年、自身のデザインオフィスを設立し、〈ブランク〉の立ち上げに参画。また現在は名門アメリカンブランドのディレクターとしても活躍中。

世の中の空白(ブランク)を黒く(ブラック)塗るアイテム。

ー今年スタートしたばかりの新ブランドですが、まずはコンセプトから教えてください。

大谷:ファッションアイテムとしてはもちろん、旅の相棒であったり、ビジネスギアやプロの仕事道具を持ち運ぶなど、バッグは日々の暮らしに必要不可欠かつ最も身近なツールのひとつです。そんなツールとしてのバッグ本来の魅力や存在価値を追求すべく、余分な要素を削ぎ落とし、必要となるよい部分だけを凝縮させることで、“バッグの原型” といえるアイコニックなプロダクトを炙り出すことが〈ブランク〉の使命です。

ブランド名は、空白を指す「BLANK」に「BLACK」を掛け合わせた造語なのですが、これだけモノが溢れ返る飽和状態の世の中に、それでも足りていない、まだ誰も立ち入っていないブランクがあります。その空白を黒く塗り潰し、埋めるようなプロダクトを目指しています。

ーこれまで大谷さんは、洋服の「アパレルメーカー」でキャリアを積まれてきました。ファッションアイテムという点では近しい関係ですが、バッグにはバッグ作りの専門的な知識やノウハウが求められるのでは?

大谷:自分が過去に在籍してきたブランドでも、バッグは手掛けていました。しかし、やはりメインは服で、その周囲を固める小物の一部というスタンスでした。ただ〈ブランク〉の母体には、カリフォルニアの〈ディスパッチ〉や〈デイタム〉の日本総代理店を務め、またオリジナルブランドも人気の創業120年を超す歴史あるバッグメーカーが付いています。アパレルの世界を歩んできた自分の経験値や感覚と、成熟したバッグのプロゆえのスキル、双方が異なる分野で培ってきた武器を融合させ、生み出されるのが〈ブランク〉の特徴です。

ーもともとバッグやレザーグッズから発祥した海外のトップメゾンは別として、〈ブランク〉はバッグブランドでありながら洋服もラインナップしている珍しい存在だと思います。その点は、ご自身がアパレルデザイナーということが大きいのでしょうか?

大谷:そうですね。主に〈ブランク〉では、通常あまりバッグに使われることがない洋服のファブリックを用いています。理由はバッグをバッグとして捉えていないというか、洋服と同じ感覚でデザインしているから。だから一緒に提案しているアパレルも、バッグと同じ共生地で仕立てています。

強いてカテゴライズするならばバッグブランドに該当するのかもしれませんが、バックブランドと捉えるか、アパレルブランドと捉えるかは、取り扱いのショップやお客様それぞれにお任せしたい。僕個人としてはどちらでもいいし、むしろ、どちらでもないとも思っています。なぜならば “何を作るか” より “どの素材をどう使うか” に重きを置いてクリエイションしているからです。

モノや素材本来の魅力を活かしたモノ作り。

ーまず第一に素材があり、それが結果的にバッグやアパレルというカタチになっているということですね。マテリアルに一番こだわる理由は何ですか?

大谷:世間を見渡すと、クラシックやスタンダードと言われるモノに、何かしらの機能性や飾りを付け加えたデザインが大半です。そこで先ほどのブランドのコンセプトにつながるのですが、〈ブランク〉ではオーバースペックともいえる過剰な機能や、装飾を極力省くことを念頭に置いています。世に溢れる“プラスのデザイン”に対し、〈ブランク〉は世の中の空白となっている “マイナスのデザイン” を心掛けています。

しかし、ただシンプルなだけでは無味無臭の退屈なプロダクトになってしまう。そういった意味でデザインはミニマルに抑え、マテリアルで魅せることを基本とし、また細かなパーツの選定にまで強く意識を注いでいます。食材がよければ最低限の調理や味付けでも美味しい料理ができるのと同じく、素に近い状態で提供し、本来の持ち味を楽しんでもらうためには、上質な素材が絶対に欠かせません。

こうしたマテリアルとの向き合い方は、かつて自分が在籍した〈ナインバーナイン〉の頃にルーツがあるのかもしれません。当時のデザイナーであった宮下貴裕さん(現:タカヒロミヤシタザソロイスト.)は、とにかく素材へのこだわりが凄まじく、ほぼすべての生地をオリジナルで製作し、納得できるまで何度も何度もサンプルを作り直す。またフィットに関しても非常に敏感で、わずか数ミリの違いにも気づいて修正する。そうした仕事を間近で見て、ともに取り組んできた影響は大きいですね。なので〈ブランク〉においてもバッグのサイズ感や洋服のフィットには細心の注意を払っています。

ーなかでもブランドを代表するマテリアルはありますか?

大谷:ずばり、デニムですね。自分のファッションの原体験は古着なのですが、なかでも夢中になったのがヴィンテージジーンズでした。以来、デニムは大好きなマテリアルです。長く付き合うほどに馴染み、色落ちやダメージが刻まれて味わい深く育っていく豊かな表情は、デニムならではの魅力です。

デビューコレクションとなった春夏は、色が落ちにくい方法で染色したリジッドデニムを採用しました。最近のマーケットでは、色落ちが施された柔らかい風合いの加工デニムは人気がある一方、リジッドデニムは売れない傾向にあります。ゆえに、それを使ったアイテムは世の中に少ないので、その空白を埋めるのと同時に、デニム本来の素の表情を末永く楽しめるよう、あえてトライしました。また品よくクリーンに、よりミニマルな雰囲気に見せたかったのも理由です。

大谷:さらに今季は、デニムのバッグ&アパレルと共通のデザインで、コーデュロイを使用したコレクションも発表しました。こちらも素晴らしい生地に仕上がっており、とても気に入っている自信作です。

これらのシリーズをはじめ、素材は日本製にこだわっています。やはり国産はデニムの綾目やコーデュロイのウネの立ち具合など明らかに表情がよいですし、柔らかいのにヘタれにくい。そうしたクオリティも重視しながら、なるべく多くの方々に手に取っていただけるよう、最大限にプライスも抑えています。

(左上から時計回り) DENIM TAILORED JK ¥34,000、BD SHIRT ¥17,000、WORKERS DAYPACK 2 ¥22,000、5PK PANTS ¥14,000(ALL+TAX)

ーラインナップを拝見すると、週末使いはもちろん、ビジネスカジュアルに対応できそうなバッグも揃っています。またアパレルでもGジャンや5ポケットパンツのほか、セットアップで着られるテーラードタイプのジャケット&スラックス型のトラウザーズ、ボタンダウンシャツといった少しドレッシーなモデルも提案されていますね。

大谷:バッグとのマッチングを考え、カジュアルなデザインだけでなく、大人っぽいエレガントなアイテムも提案したかった。特にデニムのセットアップは、街で見掛けることの少ない空白のアイテムですし、純粋に僕自身が着たかったのも理由。休日に着てもビジネスで着てもいい、中間的なポジションに立つフレキシブルな存在でありたいですし、ユーザーそれぞれの捉え方で自分流に〈ブランク〉を楽しんでいただければうれしいですね。

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