東京のヴィンテージバイヤーとは違う目線になる。
ー本間さんは〈セブンバイセブン〉というブランドに対して、どんな印象を抱いていますか?
本間: 知り合いのセレクトショップとか、地方へ行ったときもたまに見かけたんですけど、淳也らしい服だなって思いますね。ひととなりが出ているというか、大胆なことをしているんだけど、本人は照れてんだろうなって。そういう繊細さも感じるんです。
ー川上さんの古着に対する解釈も独特な印象があって。
本間: それは同感ですね。当時サンフランシスコでピックしていたアイテムも独特だったので。古着って、いますぐ着られるもの、名品と呼ばれるもの、あとはアートピースというかマテリアルとしておもしろいものの3種類あるじゃないですか。彼はそれを全部網羅していて、無意識的にそれを判断してピックしているから独特なんだと思います。




本間: あとはサンフランシスコって、いろんなカルチャーがあるんですよ。ヒッピーやゲイ、スケートボード、サーフィンやグラフィティ、サインペインティングや、もちろんビートもそうだし。ゲイとか黒人はみんな超おしゃれだから、そうしたひとたちの放出品って、本当に信じられないくらいノンセレクトでごった煮なんですよ。本当にるつぼ。その中でピックしていると、いろんな服を見られるし、勉強になりますよね。だから独特な文脈になるのも頷ける。日本のヴィンテージバイヤーとは違う目線になるし、かといってアメリカ人のそれでもないじゃないですか。
川上: さっき話してた「アズイズショップ」の影響がやっぱり大きいですね。誰かが古着のことを教えてくれるわけでもないし、とりあえず見るしかなくて。それがおもしろかったですね。教えられると、その文脈でしか見られなくなっちゃうじゃないですか。
ーどんな雰囲気だったんですか?
川上: 巨大な倉庫でしたよ。
本間: 超でっかいよね。ひとりでずっと女性の下着ばかりピックしているひとがいて。どうやらブラジャーから100ドル札が出てきたことがあって、それがずっと忘れられなくてピックしてたんだって。
川上: そういうことが起こるんですよね。路上生活者たちも来るようなところなので、入場するときと帰るときで格好が違うってことも日常茶飯事でした(笑)。
本間: 万引きとかもすごくて、治安もめっちゃ悪かった。謎のオークションとかもあったよね? なにが入っているか分からない箱がゾロゾロって出てきて、それを金網越しに見ながら競り合ってて。
川上: ありましたね(笑)。
本間: 一回買ったら、本当にとんでもないゴミだらけだった(笑)。
川上: 当たるときもあるみたいなんですよ。ものすごくお宝が入ってることもあるらしくて、博打ですよ。
ーどれくらいで落札されるんですか?
本間: 大体25ドルとかそれくらいだった気がします。
川上: そのあと結構値段が上がってて、100ドルを超えるときもありました。箱を開けてみたら〈エミリオ・プッチ〉のヴィンテージがパンパンに入ってることもあったりして。
本間: アメリカン・プチドリームだね(笑)。

ーそれが25年前くらいですか?
本間: そうですね。サンフランシスコがいまみたいにおしゃれじゃなかったとき。
川上: IT系の企業が入ってくるようになってから変わりましたね。ちょっと歩くだけで危険な箇所がいっぱいありましたから。それがおもしろかったんだけど。
本間: だけど、いまはもっとひどい場所もあるんでしょ?
川上: テンダーロインとか、ダウンタウンの辺りは壊滅状態って聞きますね。
ーでも、川上さんはどうしてサンフランシスコに居たんですか?
川上: たまたまですね。アメリカに行きたくて、どこでも良かったんですけど、紹介されたところがサンフランシスコだったんです。
本間: いま思い出したけど、淳也の家の前にクルマがいつも停まってて、ボンネットとかにおもちゃがびっしりくっつけてあったんですよ。そのデコレーションがめちゃくちゃヤバくて写真を撮ってたら、逞しい髭のイカついひとが「なにやってんだ?」出てきたんです。指に一文字ずつ“KING”ってタトゥー入れてて、それが息子の名前らしいんですよ。一緒に「ブガーイーター」っていう鼻くそほじって食べるみたいな名前のバンドやってるって言ってて、「キング出てこい!」って呼んで出てきたのがめっちゃ小さな子どもでさ(笑)。あの子、可愛かったなぁ。
ーいいエピソードですね(笑)。日本じゃ絶対に巡り会えない瞬間というか。
本間: 本当に面白かったですね。この前ラスベガスへ行って、デッドのライブを観に行ったんですよ。そのときにシェイクダウン・ストリートていう駐車場でファンがみんな物販してて。そこで一緒になって俺も物を売ってたんですけど、久しぶりにいい意味でアメリカのデタラメな感じに触れた気分になりました。みんな好きなことだけをやる、みたいな。
川上: すごい時代でしたよね、本当に。