普段着として穿くことを考えると、ディッキーズが最適。
ー同じM-45とはいえ、話を聞くだけでも色んな個体があることが分かりますね。

優樹: 第二次世界大戦中につくられたものなので、いろいろレギュレーションが緩かったんだと思います。それだけ物資不足だったということですね。ポケットも片玉縁や両玉縁のものがあったり、生地もポプリンや厚手のツイルでつくられたものがあったりと、本当に千差万別なんです。
今野: 赤嶺くんからこれだけの資料をお借りできたので、まずはシルエットを重視して、ディテールをどう残すかということを考えました。たとえばポケットは手間がかかる両玉縁にしたり、裾やウエストのアジャストタブを残したり。あとはベルトループも太くして、タフに仕上げるなど。赤嶺くん、玲子さんとキャッチボールをしながら決めていきました。

今野: 見えない部分になるんですが、ポケットのスレキには、ぼくたちがモディファイしたパンツであることを表すプリントをのせました。もともと〈ネクサスセブン〉でも、こういうスレキの部分にはオリーブのヘリンボーンを使っていて、アイコン的になっているんです。今回は大戦期のアイテムということで、そのテーマにもうまくハマりましたね。
ー縫製面でもいろいろと個体差があったんですか?
今野: ロックミシンで縫われたものがあれば、巻き縫いや折り伏せ縫いでつくられたものもありました。今回は巻き縫いで縫製してます。縮率も計算して、パッカリングが出るようにしていますね。それによって表情が生まれるし、それがあるとないとでは全然違うと思うんです。
ー〈ディッキーズ〉のTCツイルで仕立てることによって、ヴィンテージとはまた違ったムードを楽しめるパンツになってますね。

今野: また違う良さがありますよね。普段着としてガンガン穿くことを考えると、これが最適なのかなと。生地のスワッチを見せてもらって、今回は厚手のTCツイルをセレクトしたんです。
優樹: 新品のアイテムでも数回穿いて洗濯しただけでクタクタになって、毛玉になったり、色がすぐに抜けたりするアイテムってあるじゃないですか。そういうプロダクトには絶対にしたくなかった。とにかくタフに仕上げたかったので、今回の生地はバッチリだと思います。
ーカラバリの選定でこだわったことはありますか?

優樹: スタンダードな色ですよね。
玲子: 膨大なカラーバリエーションの中から選んだのですが、原色より合わせやすい色味がいいと思って。
優樹: まさに〈ディッキーズ〉というカラーリングで、いいですね。
ー〈ディッキーズ〉のタグもいつものカラフルなものではなく、ミリタリーカラーになってますよね。

今野: “サブデュード”というミリタリーパッチでも用いられる仕様があるんですけど、今回はそれを意識しました。ファティーグシャツとかでも、色を馴染ませたワッペンとかがついてますよね。「抑えられている」という意味があって、今回ダメ元で〈ディッキーズ〉のネームをサブデュード化させてもらえないか聞いてみたところ、OKをいただくことができました。