コントロールはしないけど、ちゃんと見る。
ーおふたりでアイデアを出し合うと思うんですけど、どんな感じで企画会議をしているんですか?
加賀美: 最初の打ち合わせで結構攻めたアイデアをゴローさんが出してくるの。そこに対して俺がどんどん焚きつけて、エスカレートしていくっていう(笑)。それを今度は削ぎ落として、上手に着地するって感じかな。ゴローさんとやるときは基本的に俺は受け身でいるんだよね。
中津川: 加賀美さんは心配になるくらいアイデアを通してくれますよね。聞き上手で、すごく盛り上げてくれるんですよ。そういう場のつくり方というか、意見を出しやすい環境をつくってくれるんです。
加賀美: 基本的には相手の意見を尊重したいからね。だからといって「アレもコレも」ってなっちゃうと困るけど、ゴローさんはそんな無茶なこと言ったりしないってわかってるからさ。
中津川: ぼくも加賀美さんだから信頼してアイデアを出せたというのはありますね。いつも「なんでも言って!」って仰ってくれて、それで結構いろんな意見を伝えられました。
加賀美: ゴローさんとの仕事はすごく楽なんだよね。もちろんいい意味で。こだわりが強いって思ってたんだけど、そのこだわりを〈セパバス〉に合わせてコラボしてくれるからさ。もう合気道みたいだったよ(笑)。
ーだけど、場合によっては余計なディレクションが入ってしまうときもあると思うんです。
加賀美: コラボはやりやすくしないと。途中でやりづらくなったら気持ち悪いし、絶対におもしろくならない。だから環境づくりって本当に大事だよね。
中津川: 「これはブランド的にちょっと…」っていうときもありますよね。
加賀美: あるある! キラーワードね(笑)。
ーそういう強い言葉で軌道修正されると、従わざるを得ないというか。
中津川: だけど、加賀美さんの場合は「こうしたらいいんじゃない?」っていうのを、さりげなく伝えてくれるんです。
加賀美: そんなことしてた?
中津川: 「新品」っていうシールを貼ろうとか、それをプリントにしてTシャツつくろうっていうのは、加賀美さんのアイデアですよ。結局、ぼくが着たいのものをつくりたいし、それ以前に加賀美さんも着れるものじゃなきゃいけないから、コラボ相手としてそれは意識してますね。
ー自分の色を全開にするというよりは、お互いの色を綺麗に混ぜるというか、相手の特色を理解した上でやると。
中津川: そうですね。一応、ぼくの中にしっかりとした加賀美さん像があるので。
加賀美: これは参ったな~ってコラボいままでにあった?
中津川: それは言えないですね(笑)。
ーコラボにしても、クライアントワークにしても、お互いの信頼の上でやるのがベストということですね。
加賀美: そうだね。信頼できるから、「やりたいようにやって」って言えるんだと思う。そういうときって既に完成形が見えているんだよね。それがどう転ぼうが、それでいいっていうか。それが真の意味でのコラボなんじゃないかな。
中津川: やっぱりそれが前提にあるといいですよね。
加賀美: 仮に当初のイメージと違ったとしても、それをおもしろがって許容できればベストだよね。コントロールはしないけど、ちゃんと見るっていうかさ。
中津川: ぼくも若いクリエイターたちと撮影をするときに、基本的にはお任せにするんです。ぼくがその場にいると相手も萎縮しちゃうと思うし、都度「こんな感じでいいですかね?」って確認してくると思うんですよ。それだとおもしろいものは生まれないから、よっぽどじゃないかぎりは基本的にOKってしてますね。
ー「なにも言わないけど、ちゃんと見る」って、簡単なことではないですよね。
中津川: ぼくとしても、一応監督する義務はあると思うんです。
ー相手も「なんでもアリではない」っていうのが、分かっていたらいいですよね。
加賀美: そうそう! なんでもアリって勘違いしちゃうひともいるからね。
中津川: そうですよね。だけど最低限の線引きは必要で、その中で何ができるか試すというか。
ー加賀美さんはいつも、ある枠組みの中でどう攻めるかっていうことを考えてますよね。
加賀美: もちろんそうだよ。「このルールはイヤだから、こっちのルールでやらせて」ってなると迷惑かかるでしょ。だけど俺は天邪鬼だから、その枠組みの中のギリギリのラインを攻めたいって思ってるんだよね。流行りものに牙を剥くじゃないけど、基本的には斜めに見てるから。
中津川: 加賀美さんのその感覚がすごいんですよね。すごく攻めているんだけど、実はちゃんといいところに着地しているというか。普段接していても、めちゃくちゃしっかりしたひとだなっていつも思うんです。
ーメールの返信もめちゃくちゃ早いですもんね。
加賀美: せっかちだからね(笑)。
中津川: 打ち合わせが終わると、必ず「今日はありがとうございました」ってメッセージが入ってますし。
加賀美: 「またよろしくね~」みたいな軽いひとになりたくないっていうかさ。年上でも年下でもちゃんとしたいじゃん。
ーある意味、社会人として当たり前のことをしているだけなんですかね。
加賀美: そうそう、そうなんだよ。そうやって挨拶したほうが、次に会ったときも同じ気持ちで接せれるでしょ。
中津川: すごく襟を正されますよね。だからコラボするときも社会性が出てくるというか。道から外れないんですよね。