日替わりでアウターを楽しむヴィンテージの達人。
No.2 加藤麻有
PROFILE
数々の店舗でのショップスタッフを経て、現在は「ビームス ボーイ（BEAMS BOY）」バイヤー、〈ビームス ジャパン ウィメンズ（BEAMS JAPAN WOMENS）〉オリジナルのディレクターを務める。ヴィンテージをミックスした、自身のキャラクターがにじみ出るような着こなしが人気。
Instagram：@mayukato
大切なのは、何を着るかよりもどう自分らしく着こなすか。
ーヴィンテージをうまく取り入れた着こなしが印象的な加藤さんですが、アウターを購入する際の決め手を教えてください。
加藤： アウターは20着ほど持っていますが、どれも一目惚れに近い形で購入しました。特に “古着は出会い” だと思っているので、これだ！ と思ったら買うようにしていますね。買い物に行くときは、特定のアイテムを探しにいくときとパッと見て買うパターンのどちらもあります。何かを探しにいくとそれしか見えなくなってしまうので、なるべく偶然の出会いを楽しみに買い物をするようにしています。
オンラインショッピングは便利だし効率的ですが、わたしは “ひとから買う” ということを大事にしています。アイテムに出会えた嬉しい気持ちとか「ここが好き！」っていう気持ちをスタッフさんと共有しながら買うのが好きなんですよね。今でも古着屋を巡っています。
ー販売員経験がある加藤さんならではのお買い物感かもしれないですね。好きなヴィンテージショップは？
加藤： 名古屋にある「ウィッチ（Witch）」と「ミツル（MITSURU）」、高円寺の「suntrap（サントラップ）」が大好きです。服だけでなくて雑貨やアクセサリーまでくまなくチェックします。名古屋の古着屋は東京よりちょっと安いのもあって買いやすいのもいいんですよね。古着だと同じものがあったとしても、個体でいうと世界にひとつだからやっぱり買っちゃいますよね。
最近はコスチューム系が気になっています。ひととちょっと違うとか、取り入れるだけでパンチが出るとか、自分のデニムスタイルに合うものとか…。クラフト感のあるものを見つけるとその唯一無二なムードに惹かれて楽しくなってしまいます。
〈ウールリッチ〉のローブコート
ーこちらの〈ウールリッチ（WOOLRICH）〉のコートはレアな逸品ですね。
加藤： 見頃や袖に入った横縞が特徴のハドソン・ベイ・コートのローブタイプです。これは70年代ぐらいのもので、だれかが趣味でブランケットを切ってつくったハンドメイドのセットをもとに〈ウールリッチ〉が商品化したものだと思いますが、着ているとよく褒められます。ガウンタイプでボタンがなく、フードが三角形になっていていて後ろ姿も可愛いんです。ショート丈やダブルブレストタイプなど、さまざまなタイプを古着屋でたまに見かけますがこのガウンテープでフリンジが付いたタイプは希少なので大事に着ています。
いわゆるオーバーコートなのでポケットが貫通していて、間違えてスマホを入れて落下させるというミスが頻発しています（笑）
ー今日着てらっしゃるフリルブラウスとの相性も良さそうですね。
加藤： 昔は全身ミリタリーアイテムを組み合わせたりといわゆる男合わせでしたけど、最近はちょっと首元が開いているアイテムが好きになってきましたね。少しだけ女っぽさを差すのが今の気分です。
ーお次はなんでしょう？
〈ビームス ジャパン〉のレザーブルゾン
加藤： 〈ビームス ジャパン〉のレザーブルゾンは、女性でもいいバランスで着られるものをつくりたくて企画しました。レザーアイテムって無骨な印象になりすぎてしまって着こなすのが難しいなと感じている女性はわたしだけではないと思うので。
元になった私物の古着のジャケット。
加藤： 形はこちらの私物の古着のジャケットをイメージソースにボタンレスでバサっと羽織れるオーバーサイズに設定。あえてワンサイズにしてユニセックスで着てもらえるようにつくりました。男性がジャストサイズで着てもいいし、女性が裾をたなびく感じで大きめに着るのも可愛いかなと。
企画をする際、サイズに関してはいつも悩みます。大切にしているのはどう着てもらいたいか。お客さまの手に渡った後はそれぞれのサイズ感で着ていただくのが一番いいのですが、つくり手としては “こう着てほしい” というムードが常に頭の中にあります。
ー次は〈パタゴニア（Patagonia）〉ですね。アウトドアアウターも着るんですね？
加藤： ミリタリー、ワーク、アウトドア、トラッド…ジャンル問わずなんでも着ます。唯一ダウンジャケットはわたしのワードローブには合わせづらいのか昔から苦手で着ないのですが。
アウトドアメーカーの中では〈パタゴニア〉が一番好きかもしれません。もともとは夫がすごく好きなので、わたしも英才教育されました（笑）。生産年が限られている希少なアイテムとかタグの歴史とかなかなか詳しいですよ。
〈パタゴニア〉のガイドジャケット
ー〈パタゴニア〉のどこに惹かれますか？
加藤： カラーリングですね。〈パタゴニア〉を着るなら、黒とかネイビーよりも派手なカラーにチャレンジしたくなるみたいな。他にもいろいろなカラーのフリースブルゾンを持っています。これは90年代のものなので比較的新しめですが、よく考えたらその年代でもヴィンテージに当たるんですよね。それにキッズアイテムにはリフレクターが付いていたりと、よく見るとディテールがおもしろいんです。
古かったり珍しいものだから買うわけではないですが、わたしの場合は小柄でキッズサイズが着れるので、結果的にレアなアイテムを持っているかもしれません。
〈ナヤ レア〉のウールチェックコート
ー次の1着は〈ナヤ レア（Naya Rea）〉のコート。加藤さんのワードローブの中でも特にキャッチーなアウターですね。
加藤： これは〈フェルメリスト ビームス（Vermeerist BEAMS）〉のディレクターの犬塚から「絶対あなたに似合う」と言われて買ったものです。自分が素敵だなと思っているひとに服を薦められることって意外とないので、その言葉に後押しされましたね。
もともと〈フェルメリスト ビームス〉は、ロンドンの文脈を感じさせる要素も内包しつつ、特定のスタイルに限定されない視点でバイイングを行っていて、その流れを汲んだアイテムですね。ロンドンチックなブロックチェックのコートはわたしのワードローブの中でも珍しいアイテムです。
ーウエスト部分がギュッと絞られているので前を閉じたときのシルエットがすごく可愛いですね。このコートを使った加藤さん流の着こなしが気になります。
加藤： レースのシャツを襟元から覗かせてちょっとメンズライクなパンツを合わせたり、ボロボロのスウェットに古着のデニムパンツを合わせたりすると可愛いですね。コーディネートをするときは緩急をつけるようにしています。たぶん全部女性らしくしすぎると、“キャラじゃないかも” と思って恥ずかしいんだけなんですけど（笑）。あとは、どの角度から見ても可愛い、っていうのはアウターに限らず、服を選ぶ上での自分のテーマかもしれません。
ーお次は〈ユナイテッド カー（UNITED CAR）〉との別注D-1ムートンジャケット。カッコいいですね。
加藤： これは「東洋エンタープライズ」の〈バズリクソンズ（BUZZ RICKSON’S）〉というラインの姉妹ブランド〈ユナイテッド カー〉と〈ビームスボーイ〉でつくったアウターです。ミリタリーというとやはり “軍物” というイメージがありますが、現在の服の基本にもなっているアイテムなのでそのルーツを含めてすごく好きです。
ミリタリーでガチガチに固めた着こなしにも憧れるんですけど、本気になりすぎないように気を付けています（笑）。デザインもツルッとしたシープスキンでなくて表情が出るパッチワークにしたのがこだわりです。
元ネタが航空整備士用のアイテムだけあって、運動性を高めるために裾のジップアジャスターやプリーツなどを排除したミニマルなデザインもカッコいいですよね。そして、なんといっても着ていて気持ちいいのとあたたかいんです。真冬の寒いときはダウンよりも頼れるくらい。
〈ユナイテッド カー〉 ×〈ビームス ボーイ〉のパッチワークD-1ジャケット
ーいろいろな方向性の5着をご紹介いただきました。スタメンアウターを見ていても加藤さんが毎日ファッションを楽しんでいるのが伝わってきました。
加藤： もともと収集欲があるので好きなアイテムを集めてしまうんですよね。アウターも毎日ちがうものを着るし、それに合わせる服を考えるのもワクワクするし。その昔、先輩に「いろいろな服を着た方がいいよ」と言われていたおかげでジャンルレスに服を選ぶクセが付いています。「ビームス」のオリジナルも新進ブランドのアイテムも含めて意外といろいろ着るんですけど、一点古着を混ぜるだけで不思議と自分らしくまとまるのでやっぱり古着が自分らしくて好きだなと感じますね。
